【第二章】第三部分
「ここから入れるよ。」
「こんな狭い入口から入れるのかな?これじゃあ、ネズミぐらいしか通れないよ。」
「でも、お兄ちゃんのゾウさんなら軽く入れるよ。」
「ほっといてくれ!」
「もし入れないと言うならばこれで入口を広げるよ。」
大ナタを小さな入口に突っ込もうとする箱子。
「そういう問題じゃなく、ただの作りものだ。本物の入口はどこにあるんだろう。いや、そもそも都市自体が砂に隠れて見えないぞ。」
「大丈夫だよ。都市はここにあると、大ナタが言ってるよ。」
「そんなバカな。大ナタはただの武器、道具だろ?」
「そんなことないよ。これは長い間あたしと生活、いや人生を共にしてきたんだから、何でもわかる生き物なんだよ。」
「木憂華、ナタってこの世界でも無機物だろ。生命が宿るなんていうことがあるわけないよな?」
「い、いきなりQに話しかけるんじゃないぢゃん。それに名前で呼ぶなんて、千年早いぢゃん!」
「あっ、ゴメン。じゃあ、名字で?」
「い、いや、べ、別に木憂華、でいいぢゃん、あんちゃん。ぽっ。」
ダルマのように真っ赤になった木憂華。
「ちゃんとお待ちなちゃい。ワタクチの立場はどうなるんでちゅの!」
「俺、何か悪いことしたのかな?それならあやまるけど。」
「そ、そういうことではありまちぇんわ。ワタクチにも吝奈という名前があるということを知らしめておきたいだけでちゅわ。」
「うん、わかったよ、吝奈。」
「お、お兄様がワタクチのことを名前で呼んでくれまちたわ。ぽっ。」
吝奈もダルマ二号にメタモルフォーゼした。
「ナタが生物なのかどうかは別にして、他に手立てがない以上、それを使ってみるかな。」
「お兄ちゃん、ありがとう。じゃあ、やってみるね。せぇーのっ!」
箱子は頭上に大ナタを持って行き開いた扉をめがけて、全体重を使って振り下ろした。
「やっぱり、ただの物理攻撃だよ。砂の城はそんまんま砂上の楼閣だよ!」
『ガキッ!』
城が壊れた!と思いきや、扉の下に四角い穴が開いて、そこに階段が見えた。




