【第一章】第十二部分
「どこに行くんでちゅの?」
「Dゾーンに行ってやる~!」
「あそこはダメぢゃん。あんなところに行ったら激ヤバぢゃん。怖すぎるぢゃん!」
木憂華の制止を聞かずに、分校の敷地の西側に駆け出した箱子。
すぐにDゾーンの看板が見えて、そこには『立ち入り禁止』と書いてある。
箱子は看板に体当たりして、ぶっ壊したまま、森の中に入っていった。
『ブーン!!!』
すぐそばに何が飛んでくる音が箱子の鼓膜を突いた。
「な、何これ!」
大量の虫がやってきた。それは蚊のようでもあり、ハエにも似ている。
「痛い!」
箱子の腕は噴水のように流血し赤く染まっている。
頭はハエのように大きな複眼が付いているが、口は蚊のように尖っている。しかし、大きさがまるで違う。全長15センチはあろうかという大物である。
「あたし、刺されちゃったんだよ。すごく痛いよ。早く手当てしてよ!って、誰もいないし。」
蚊ハエ虫はさらに花子に寄ってきて、手足に嚙みついている。
「うわああああああ!」
箱子は左右の腕を振り、全身を揺さぶって、蚊ハエ虫を追い払う。その都度、鮮血が飛び散り、辺りに鉄分のニオイが充満してきた。
『ドンドンドン!』
今度は地面から大きな足音が聞こえてきた。灰色で四つん這いになり、箱子の方にやってきている。
「あれは何?ゾウでも来たの?ゾウって言ったら、もしかして男の子の進化系動物だったりして?少し期待できるかも。」
体の大きさ、色はたしかにゾウに似ているが、真正面から見ると決定的に違う点がある。
ゾウの大きな特徴である鼻がデカい。耳が小さい。
いやそうではない。
鼻の幅が横に著しく広い。耳が細くて、スゴく長い。
つまり、鼻と耳が入れ替わったような顔なのである。ひたすらブキミである。