零
昭和20年。太平洋戦争で日本は米軍の力によって窮地に陥る。
そんな日本は、若い二十歳前後の若者を集めては戦争へ送り出し、「お国の為に死んでいけ」という、なんとも残酷な合言葉でその短い生涯を終える者は多くいた。
軍神である、神風特攻隊もその短い生涯を終えたものの一つでもある。
とある小さな学校。そこにはまともに授業を受けず、ただひたすら畑仕事や地域の小さな治療所で手当ての手伝いをする女学校があった。
生徒数合計10名。女子の殆どは学校へ行かず、皆家での仕事をするのに必死な者もいれば仕事をして生活を支えるのに精一杯な女の子もいた。
ここ、暁女学校の本田千代は5名の女子らと共に畑を耕し、残り5名は畑を耕す女子らの為に僅かしかないお米を節約しながら食事を作っていた。食事といても、塩もおかずもないただのお結びと水。そしてさつま芋のみ。それだけでも女子達の腹を満たすのにはギリギリであった。中にはさつま芋とお結びを家にいる弟達の為に持ち帰る者もいる。
「皆!もう耕すのは休憩して、おにぎり食べましょ!」
この日食事を担当していた中の一人、石井明美(17)は更に僅かしかないお結びを持って畑を耕している女子達に声をかけてお昼の時間を知らせる。いつもより時間は早かったが、暫くなにも食べていない女子達にとっては体力も激しく消耗し、早い休憩はまさに天国みたいなものだった。
「明美ちゃん、ありがとう」
「皆、休憩だって!」
女子達は鍬を置いて草原に座って味のないお結びとさつま芋を食べ始める。
「確か今日は何の種を植えるんだっけ?」
「いやだ、明美。今日植えるのはお米じゃないの!」
楽しく談話を楽しみながら言うと、彼女達の担当の森川が急いだ様子で駆け寄ってきた。
「全員昼食を中断して即教室へ戻りなさい!」
眼鏡をかけて慌てた様子の森川に、誰もが顔を不思議そうにしながらお互いの顔を見る。
「軍少尉殿が訪問なさった」
軍少尉殿?と、女子達はざわめきながらも昼食を中断して教室へ戻った。
この後軍少尉殿の突然の言葉と、その後の事なんて誰も予想なんてしなかった。
悲しくも、辛い…「戦争の辛さ」を初めて体感する事なんて……。