第5話
長い、ひたすらに長い。
カップラーメンが順番に作っても、10個は出来る時間も話す校長先生は凄いと思う。あんなに話す内容考えて来て流石だなと思う反面、僕含め大半の生徒は右から左だからやるせなさあるよね。
さて、始業式も終わったから後は教室で連絡を受けて解散かな?今日はちょっと帰ってから行きたいとこあるし。
先生が戻ってくるまで、仲のいい奴らと一緒に話して待っていると。先生はいくつかのプリントの山を持ってやってきた。
「今朝のホームルームでも伝えたが、今日から二学期だ。今からあるものを配るので、各自しっかりと目を通すように。」
そう言って配られたのは教科ごとに範囲の書かれた用紙、即ち僕ら学生の大嫌いなテスト範囲が書かれた物だ。
「明日から3日間、休み明けの実力テストを行う。夏休みに遊び呆けていた者達は諦めずに頑張るように。」
ええ、予想はしていたよ。勿論さ、中学校でもあるからね。でも始業式翌日からってそりゃないよ!
「それと遠藤康太、お前はこの後先生についてきなさい。ちょっとした面談がある。」
まじか、いやまじか。面談って絶対長いじゃん。
堅物の猿野先生なんだから長時間確定したよこれ。
「それから、ここ一週間前ぐらい不審者が出没すると言う情報がある。襲われて怪我をした人も出ていると言う事だ。警察も動いているようだが、なるべく1人にならないように気をつけて帰宅しなさい。」
その話でホームルームは終わりとなった。
友人達がテストのことで騒いでいるが、こっちはそれよりも呼び出しの内容が気になってしまう。そんな呼び出されるような事をした覚えはないしされた覚えもない。
ため息をつきたい気持ちを覚えながら先生についていく。
これは帰ってから出かけるどころじゃなくなったし、何より明日からのテストが気がかりすぎて憂鬱だ。
渡り廊下を超え、別棟の三階へとやってきた。
着いた部屋の名前は生徒指導室、確かにここなら面談もできるし、今日みたいな日は他の人が来ないから面談するにはもってこいってことね。
思ったよりも広い部屋に机が一つ、対面で座れるようにしたパイプ椅子があるぐらいの他に余分なものが特にない。
ザ・殺風景といえるぐらいに何も無い。
「座りたまえ」
先生に促されて席に着く、良い先生なんだけど怖いんだよなぁ。こう、無言の圧力っていうか滲み出るオーラって言うのか。
「単刀直入に聞く、そのブレスレットはどうした」
「……え?」
え?なんで?コレが見えてる?今まで僕以外に見えてる人がいなかったのに。
「そのブレスレットはどこで手に入れたのかと聞いているのだ、質問に答えなさい」
どこで手に入れた?気が付いたらいつの間にか右腕についてただけなのに、先生の口ぶりだとコレがどういうものか知っているってこと?素直に聞いたら答えてくれるのだろうか。
「さては、君はそれが何なのか全く知らないのか」
その問いかけに首を縦に振って答える、一ヶ月経つけど今だに外せないし自分以外に見えない触れない謎のブレスレットの事が何も聞かずにわかる人がいたら凄いでしょ。
「そうか、では無知な君に少しだけ教えてあげよう。」
このブレスレットの名前は「叡智の輪」と言うらしい。
所有者に力を授ける代わりに、ある事を強制するらしい。それは
「叡智の輪を所有しているもの同士の奪い合いだ。舞台は世界中どこででも、所有者同士が出会い意思を示した時、専用の空間が生み出される。」
いきなり何を言い出したんだろう、猿野先生は仕事のし過ぎで疲れているのだろうか。こんな変な話をする人じゃなかった筈だ。
「冗談なんかでこんな話はしない。なぜなら」
私も所有者だからだ。と、そう言って先生がスーツの袖を捲ると、そこには僕と同じブレスレットが存在していた。
「これをどこの誰が作り出し、何の目的で私たちに与えたのかはわからない。分かっているのは」
コレが願いを叶えてくれると言う事。
それがいつの事でどれだけの人数に対してのことかまでは分かっていない。だけど状況からして所有者全員というわけでも無いらしい。
「奪い合いを強制しているのがその証拠だ、私たちはその時が来るまでいつ終わるかもわからない戦いを繰り返さねばならない。」
その覚悟があるのか。と言外に聞いてくる先生に僕は答え事が出来なかった。現実的じゃない、そもそもいきなりそんな話を聞かされて覚悟ができる人なんていないだろ。
先生は袖を戻すと腕を組んでこちらを見つめたまま何も話さない。僕は答えられないまま、沈黙を続けるしかなかった。