第3話
知らない天井だ、というわけでもない。
さっきまで見ていた自分の病室だ。起き上がって大きく伸びをすると、身体中からパキパキと音が鳴るから大分寝たままだったのは間違いないとは思う。
「さっきのは夢?でも夢にしては妙にリアルだったような。」
そう呟いて、はたと思い出し右腕を見てみると、謎の銀色のブレスレットが付いていた。こんなもの自分で着けた覚えはないし貰った覚えもない。さっきのはやっぱり夢なんかじゃなかったんだ。でもそうだとすると、何で僕はいきなり目が覚めたんだろう。
「コレのおかげ?」
そんなバカな。銀色のブレスレット、とりわけ装飾もされていない、真っさらでツルツルした表面。厚みはそれほどあるわけじゃないし、何故だか着けてても違和感が全くないけども。こんな物のおかげで助かるってそんな漫画やアニメの話じゃないんだから。
事故にあったのは間違いないだろう。それは覚えている。
でもその後に見ていたあの映像が本物なのかどうかが分からない。というか意識がない状態の映像が観れるというのがそもそもおかしい気もするけども。
何だかなぁと思い、再び寝転んだところでガラガラという音が聞こえた。音がした方を見ると、妹が間抜けな顔をして立っていた。
「お、お兄ちゃん……?」
我が妹ながら、かなりの美少女の間抜け面ってのは貴重なものではないだろうか。事故の時に助けた美人にも勝るとも劣らないと言っても過言ではない美少女のだぞ。
「やっほー、おひさ?」
空気が死んだ気がする。いや、努めて明るく返した僕は悪くない。こんな時どんな声をかけろというのか。わかる人がいたら今すぐ時間を巻き戻して俺にレクチャーしてくれ。
「ほんとにお兄ちゃんだよね?夢じゃないよね?」
「2人同時に同じ夢見てるんじゃなければ現実じゃないかな?」
そう返したら妹が手に持っていた籠を投げ出して駆け寄ってきた。あ、フルーツの盛り合わせが!勿体ない!と場違いなことを思いながらも、抱きつきワンワン泣く妹を前にすれば仕方ないでしょ。予想外の反応だし、自分よりパニックになってる人を見ると冷静になるって本当なんだなとか考える余裕が出て来るからね。
それから5分ぐらいして、急に泣き止んだ妹様はどこかに走って行った。病院内では走らないようにしような?他の人たちに迷惑だし危ないんだから。
その後妹がお医者さんと看護師さんを連れてきてからはあっという間だ。脳波の検査、受け答えの検査、歩行能力の検査とかetc.etc.
2日に分けて様々な検査をしたけども結果は全て良好、その間に両親もやってきてこちらも年甲斐もなく大泣きされた。僕自身も生きて入られて嬉しいけど。こう、身内がコレだけの反応をしてくれてると逆に冷静になってしまう。いや、ほんと。だっていくら個室で広い病室とはいえ、父と母が抱きしめあって洋画みたいにクルクル回り出すんだよ?少し引いただけで済ませた僕を褒めて欲しいぐらいだ。
担当してくれてた先生によると、一命はとりとめたものの、術後数日で意識は戻ったものの、植物状態が続き回復の見込みは絶望的だったと言う話である。それが予兆も何もなく、いきなり回復したのだから奇跡が起こったと大騒ぎしたらしい。
そんなことを言われてますます右腕のこれが怪しくなってきた。それとなく家族や他の人にも聞いたけど、どうやらこのブレスレットは見えていないらしい。ますます怪しいけど、コレに助けられたであろうことは事実だし。儲けものぐらいでいいかな?
後にこのブレスレットが原因で、あんな事に巻き込まれることになるとは。この時の僕は知る由もなかった。