第1話
それは夏真っ盛りの、7月も終わる頃。お昼を過ぎたあたりに起きたことだった。
高校に入って最初のが夏休みに入ると、僕は友人たちと連日遊んでいのだが、今日は珍しく1人で図書館に向かっている。
何のことはない、読書感想文用の本を借りに行くだけだ。夏休みの課題は程々に進めているが、こういう面倒なのはさっさと終わらせるに限るということで、こんな猛暑の中を延々と歩いている。Tシャツも半パンも汗でグッショリ、さらに言えばパンツなんか余裕で絞れる位になっている。
でも何でこんなメチャクチャ暑い日をわざわざ選んだのかというと、理由は特にない。強いていうなら友人たちとの予定が物の見事に合わなかったから。
さらに言えば今日は平日、世間の大人たちは僕ら学生とは違い仕事がある。共働きの両親も無論仕事のため車で送ってくれる人もいない。年上の兄弟もいない、というか僕が長男なのだから我が家に車を運転できる人間は残っていない。
不快感を覚えながらも、仕方がないことなので黙々と歩いてきた。何で夏はこんなに暑いんだとか、帰ったら妹のアイスを食べてやるとか、可愛い彼女が欲しいだとか。
そんなくだらない事を考えていたら、図書館まで直ぐのとこについていた。この最期の信号を越えれば、直ぐに涼しい図書館に辿り着ける。
少しは休憩してもいいんじゃないか、と太陽に愚痴を言いつつ信号を待っていた。願いが通じたのか、今更にして少し曇ってきたタイミングで信号が青に変わった。
暑さでぼーっとしながらも渡り始めた時、向こう側から歩いて来る人が目に入った。白のワンピースに麦わら帽子、長い黒髪の綺麗な女の子だ。同い年か年上か、ともかく物凄い美人に思わず見惚れてしまい、すれ違い様に振り返り目で追った際、視界の端で恐ろしい事が起きていた。
車同士の衝突事故だ。そこから先は何故か酷く鮮明に見えている、女の子に向かって飛んでくるタイヤ、驚く女の子の顔。タイヤが飛んできた瞬間、直ぐ近くにいたその子に向けて飛び出し突き飛ばした。怪我をさせたかもと思った次の瞬間、僕は凄い衝撃とともに意識を失った。
意識を失う間際にはこう思ったよ。
「あ、これは死んだな」ってね。