宝箱
少年は
ずっと想っていられると
信じていたから
カギを掛けた
口先だけは嫌だから
少年はちゃんとオトナになろうとした
忘れなかった
そこにあること
眠れない夜
孤独な夜
もたれかかることもあった
少年は蓋が少しずつ重くなること
気づいていたけれど
箱からは出さなかった
家族が老いていくのを知って
本当に好きな人ができて
蓋はどんどん重くなったけど
覗いたら またカギを掛けた
光のように時は流れて
いまでは
歯を食いしばって
両手で持ち上げないと開かない
それでも
少年は手をかける
眠れない夜
孤独な夜
自分自身に見離されないように
宝箱を開ける