お前…天使と言うより悪魔だろ…。
どうも皆さんこんにちは藤武です。
新しい話はちょっと頑張って長くしてみました。
感想、ご指摘なんでもお待ちしてます。
ミカエラの襲来から一週間。
相も変わらず、ミカエラは隆平の部屋に居座っていた。
昨日、部活から帰るとすぐに母に呼び出された。
そして説教が始まった。
どうやら、冷蔵庫にしまってあったお中元の蟹が綺麗にたいらげられていたようだ。
全く身に覚えがないが、一つ心当たりがあった。
一通り説教され、謝罪すると、自室に戻る。
そのには別途の上で寛ぐミカエラの姿があった。
「蟹?ああ、食った食った。」
隆平に問い詰められたミカエラは、なんの悪びれもなく自白したのだ。
反省の色さえ見受けられないミカエラに呆れ果て、
怒る気すらわいてこない。
それでも、とりあえず母にされた説教をそっくりそのままミカエラにした。
その時、ミカエラは確かに、わかったと頷いた。
それなのに…今、隆平は母から説教を受けている。
今日は食器が二、三枚割られていたらしい。
しかも片付けずにそのまま。
これはあれだよね?
もうキレていいよね?
あんな、くそみたいな天使、追い出していいよね?
ぶつぶつと呟きながら階段をかけ上がる。
ミカエラの居場所などわかっているのだ。
どうせ隆平のベッドの上に決まっている。
はじめてミカエラと出会ったとき、隆平をベッドからどかせて、ミカエラはベッドに転がり漫画を読み始めたのだ。
あのときは天使としてあるまじき行動に、呆気にとられ、なにも言えなかった。
しかし、今は違う。
勢いよく自室の扉を開ける。
やはりミカエラは扉の正面にあるベッドの上にいた。
隆平はミカエラに近寄り笑顔をつくる。
「皿…。」
滅多に笑顔を崩さないミカエラの顔が今日はギクリと強ばった。
ミカエラの口は主人の意に反して勝手に開くと、
動き出した。
「…ごめんなさい…。」
天使とは人間を導き、尊ばれる存在であるため、
天使が人間に謝罪するなどあってはならぬことで、
もしもこの事が天界の神にバレたら、堕天確定となる。
それでもミカエラの口は謝罪の言葉を吐いたのだ。
隆平の笑顔には、天使をも謝罪さえるなにかがあった。
それは恨みなのか、怒りなのかはわからない。
謝罪を拒めば堕天よりも恐れるべく事態が起こる。
その判断は正しかった。
それからのミカエラは大人しくなった…かのように思われた。
しかし数日後、更に由々しき事件が発生した。
それは父が出勤し、母は料理教室、隆平は部活へ出ていて、家がミカエラ一人になったときのこと。
思えば、家を出るときに確りと大人しくしているように言い聞かせるべきだったのだ。
最近のミカエラが大人しすぎて、完全に油断していた。
きっかけは一本の電話だった。
料理教室から帰った母は、買い物に出ようと、通帳を見て驚愕する。
それから受話器を取ると、隆平の学校に電話した。
ここまでの流れでわかるとは思う。
そう、詐欺だ。
愚かな天使ミカエラは、勝手に電話に出ただけでなく、
隆平を名乗る人物に言われたとおりに、
金を振り込んだのだそうだ。
母はさぞかし驚いたことだろう。
料理を作っている間にうん百万が忽然と姿を消したのだから。
だか、誰よりも驚いたのは隆平だ。
部活中に急に職員室に呼び出され、急いで帰ってこいと言われ、
そして、玄関を開けた瞬間に平手打ちを一発食らった。
何が何やらわからない。
隆平からすれば理不尽すぎる平手打ちだったのだ。
説教どころの話ではない。
急いで帰宅した父に怒鳴られる。
隆平が詐欺にあったと知ったのは、平手打ちを食らった三時間後だった。
隆平の脳内にミカエラという文字が浮かんだ。
まあ、ミカエラ以外は有り得ないだろう。
今回の騒動はことがことだけに警察に事情聴取までされる始末。
いままで比較的温厚だった隆平も、今回ばかりは温厚でいられなかった。
家に帰って自室に戻ると、覚悟を決めたようにミカエラが目を閉じて正座していた。
隆平はそんなミカエラの前に笑顔で立つと、なにも言わずに殴った。
隆平は吹き飛び、のびているミカエラに乗ると笑顔のまま聞いた。
「このまま死ぬ?それとも金、取り返す?」
ミカエラは恐怖を感じる。
天界の神に睨まれているような恐怖を。
逆らっては駄目だ。
堕天ではすまない、存在を消される。
「…行ってきます…。」
ミカエラはそう言うと、窓を開け上空へと飛翔していった。
振り返り隆平の部屋の窓を見ると、窓際で隆平は、笑顔でてを振っていた。
ミカエラは恐怖のあまり失神し落下した。
天界に戻り、金のありかを突き止める。
ミカエラは笑顔で舌打ちすると、その場所目指して急降下する。
あまりスピードを出すと、体に負担がかかるのだか、
そんな悠長なことは言ってられない。
一刻も早く金を取り返さなくては。
先程の隆平なら遠距離からでもミカエラを殺してしまえそうだ。
急降下中に体を実体化させる。
目的地、そこは詐欺グループのアジトだった。
詐欺グループのメンバーは突然目の前に降り立った天使に呆然と立ち尽くす。
「おい、金は?」
笑顔のミカエラに聞かれ、奥の部屋を指差す。
ミカエラはお礼を言うと、歩いていった。
部屋にはいると、数人の男を押し退けて机の上に並べられた金を鷲掴みにすると、鞄に入れる。
入るはずのない数の札束を小さな鞄に入れていく。
「なんだてめえ!」
突然部屋に入ってきて、金を鞄に入れていく男に、
声を荒げるメンバーだったが、気味の悪い笑顔と背中に携える翼を見て、怖じ気づいたように黙りこむ。
ミカエラの翼は黒く染まっていた。
笑顔には疑いようのない怒りと恨みがこもっている。
「…てめえらのせいで…死ぬとこだったんだぞ!!」
机上の金をいれ終えたミカエラは、叫ぶと飛翔し、天井に穴を開ける。
そして、建物に手を翳すとエネルギーを一点に集中させる。
白い光がミカエラの手に宿ると、それは次第に紫帯びていく。
それを建物に向けて放った。
光線を受けた建物は吹き飛び、詐欺グループも共に吹き飛ぶ。
ミカエラひ一つ舌打ちすると、隆平の部屋に戻っていった。
翌日、隆平め目はテレビに釘付け担っていた。
『昨晩、○○県○○町の建物が爆破される事件が発生しました。建物内には詐欺グループのメンバー数名が潜伏しており、いずれも死者は出ませんでしたが重傷です。』
呆気にとられる隆平。
ニュースリポーターはなおも続ける。
『また、騙し盗られた現金、およそ三千万円も行方がわからなくなり、警察は強盗殺人未遂の容疑で、捜索しています。』
隆平は脇にいるミカエラに問い掛ける。
「お前、残りの金は?」
ミカエラは、そっぽを向いていたが、やがて小さく口を開いた。
「…使った…。」
「…お前…天使と言うより悪魔だろ…。」
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