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From Edo to another world

注意︰この物語はフィクション(創作)です。実在の地名を使用している(日本など)等々ありますが、実在の地名、人物などとは無関係です。あくまで作者たかゆきの創作でございますのでご了承ください。なお実在の人物や場所を誹謗中傷する目的もありません。読者の方々も誹謗中傷などはご遠慮ください。

一人の侍が江戸の土道を駆ける。その後ろには岡っ引きらが続く。この侍は食い逃げをして追われているのだ。

侍は軽快に逃げ、岡っ引きらは汗まみれで追いかける。周りの人々は何事かと侍と岡っ引きの方に振り返る。


このはみ出し者の侍にとって、追われることは初めてではなかった。



この侍の名は文助(ふみすけ)、坂本文助である。剣の達人ながらも、盗みや食い逃げで生活をすることもある変わり者侍で名が通っていた。今日も彼は食い逃げをして追われていたのである。



天気は元気な日光が江戸の土を照りつけるといった感じ。逃げるにはあまりよろしくない。なぜなら、暑さですぐに疲れてしまうからだ。しかし今日の文助は一味違う。ある理由から暑さに負けない自信があった。



「うなぎを食った俺に追いつくものか。」


うなぎが精力をつけるのに最適なことは、無論今も江戸の世でも同じである。文助は太陽の照りになど負ける気がしなかった。



爪楊枝を咥えながら文助は余裕の表情で逃げ、次はどこで食そうかと考えにふけっていた。根っからの食好きである彼に、食を考えぬ日はあったのだろうか。彼は毎日最高の食事を求め生きていたと言っても大袈裟ではない。


(このまま走れば腹も空くだろう、次は甘味だな)


「坂本を引っ捕らえろー!」


岡っ引きらは依然として一生懸命、汗だくになりながら文助を追っていた。しかし文助はとにかく足が早い。剣の修行をサボらず行っているため体は引き締まっており、体力も彼らとは段違いである。


汗ダラダラの岡っ引きらは眼中にないと言わんばかりに、文助は軽い足取りで逃げ回っていた。


岡っ引きと文助の距離はどんどん開いていく。










逃げ回って数分した頃だ。



文助の視界にはもちろん、次逃げ込む道が見えていた。


(あそこを曲がれば完全に振り切れるな。あの先に甘味処もあったはずだ)


そこに逃げ込めばまけるだろうと、文助は曲がってその道に入ろうとした。





だが次の瞬間、その道に見たこともない異変が起きた。



「ん?なんだ?」


道にぽっかりと穴があいていたのだ。それも見る限り底なしである。文助は目を見開き、驚いたが走るのをやめることはしなかった。やめたら捕まってしまう。


(おぉ、まずいな)




土の道にぽっかりと開いた無機質な穴。それは不気味で摩訶不思議なものであったが、文助はすでにこの道に入ってしまった。引き返せば岡っ引きらに捕まるかもしれない。ただ彼には岡っ引きのお世話になる気など毛頭なかった。



「ここしか逃げる道はないぞ、、仕方ない、跳び越えるか。」



万事休すの文助はそのわけのわからない穴を跳び越すことに決めた。


少し走る速さを緩めた文助は、覚悟を決めた表情をすると、膝を曲げ、一気に穴を跳び越えようとした、、




だが、その思惑は外れた。



彼の足元にある、普段なら気にしない石。そんな石に、彼はつまずいた。


思わぬ障害に彼は焦る。



「ぬわっ!」



跳び越えるはずの彼の体は、立てたドミノや将棋の駒が倒れるように、穴へ倒れていった。





彼の視界を底なしの黒き黒、漆黒が包んでいく。


なすすべもなく文助は落ちていく。




(くそっ、なんだこれは!俺は死ぬのか!?)







底なしの暗黒に落ちていく彼の心は言うまでもなく、今までにない異色な不安を感じていた。そして彼は死をも見据えていた。



無機質な黒の異色さ、彼はそれを感じながら体を捻り上を見た。



岡っ引き達がドタドタとかけていくのが文助の視界に入る。不思議と彼らは穴に落ちない。まるで透明な床でもあるように、彼らの足は落ちなかった。


自分だけ奈落へ落ちていく様に、文助は叫ぶ。助けを呼ぶでもなく、怖がるでもなく、ただ叫ぶしかなかった。



「うおぁーーーー!!!!」

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