~プロローグ~
深い深い森の奥地。
わずかな光が差し込む、岩に囲まれた石牢。
そこには生い茂った草木と岩以外には何もない。辺境の地―
何で…
いつからいるんだっけ。
どれくらいたっただろうか。
うんと、うんと長い間ここにいる。
なぜ鎖に繋がれているのだろう。
…分からない。
でも一つだけ覚えてる。おれの…おれの名前は…
陽明―
―「おい、兄ちゃん。どこ行くんだい?そっちには何もないぞ。」
よぼよぼの老人が奇妙な顔をして尋ねる。
「あー。いいんですよ。何もないならそれでも。」
長い長い黒髪をポニーテールで結んでいる、爽やかな、そして胡散臭そうな青年が答える。
意を決したように老人が口にした。
「悪いことは言わねぇ。やめときなさい!あんたが向かってる森には、天界で大罪を犯して、8000年以上も幽閉されとる化け物がおるんじゃ。」
青年は全く意に介さず、足を進めながら答えた。
「何かいるんなら、いるで、それでもいいんですよ。ただ何となく、何となく行ってみたいだけなんで。ご忠告ありがとうございます。」
そう言い残し、青年は去って行った。
「何でことじゃ…」
カァーカァカァー
静かな森にカラスの鳴き声が鳴り響く。
これから語られる物語は、幽閉された化け物「陽明」と謎の青年との物語―
…ではなく、今から8000年前、天界で起きた大事件の物語。
この物語もこれから始まる戦いの序章にすぎない―