第41話 襲撃!第一の刺客!!
前半はギャグパート、後半はシリアスパートです。
そろそろちゃんとしたキャラクター紹介を作りましょうかね。毎回前書きに載せられる奴。
ホテルの隣に位置する体育館が、俺達の整列場所だった。これから四日間は毎朝ここに集合して点呼をとり、終わった班から朝食にありつけるのだ。今回は初日という事で、各クラスの合宿担当者並びに参加している生徒会役員が壇上に上がり、挨拶と今後の予定を説明した。無論、俺も上がったのだが、基本的な説明は殆ど楓が全て終わらせてしまったのでぶっちゃけ特に話す事はなかった。それはクローネやマリアも同じだったので別にそれほど気にしちゃいないけどな。
「はー……疲れた」
という訳で、次の行動である入浴時間まで特にやることもない俺は、自室で一人くつろいでいた。本来なら男故に最大定員数8人の部屋に押し込まれるはずなのだが、腐っても役員であるからか特権として部屋一つ分を自由に使っていいと言われている。同級生たちはこぞってずるいと言い出したが、そんなに気楽なものでもないと思う。
「とにかく、着替えだけでも準備しとくか」
バイト代で購入した中古品の木製トランクケースから、畳んでおいた衣服を取り出す。リネン類等のアメニティはホテル側が用意してくれたので問題ない。
「それにしても、このホテルもなかなかに不思議だよな」
学園校舎と同様に、比較的しっかりとしたコンクリート造ビルの本館。その東に隣接するのが温泉付き大浴場・プール・宴会場・レストラン等がまとめられた第一別館で、先程まで居た体育館もそちらの一部だ。対して本館の西側には低層階に工房・土産物屋・小規模な浴場、その上には客室が並ぶ第二別館が位置する。今回の合宿では人数の多い騎士科が本館を使用し、魔術師科は第二別館を使用する。食事や入浴時にはある程度時間をずらしつつ合同で第一別館の施設を利用する手はずとなっている。
俺が不思議に思うのは、このホテルの完成度である。やはり学園と同様に、この建物群だけが異質なんだ。周囲の建物は木造だったり土壁を使っていたりしているのだが、ここだけは現代的(この世界でそれを言うのも可笑しい気がするが)なコンクリート建造物だった。やはりこれも、ロスト・テクノロジーが関わってるのか……?
(ちょうど博物館にも行く予定だし、確認しよう)
考え事をしている内に、入浴時間になった。自分が居る本館505号室からは少々歩くものの、こうやって階段を使うのは実に健康的だ。文明の利器に頼り過ぎては人間の動物的能力を失うだけである。
あ、トランク持って昇った時?あれは流石にエレベーター使ったよ。しか見た目こそ昔ながらの物々しいそれだったが、乗り心地は元の世界のものよりも段違いに快適だった。どうやって動いているんだろうか。
一足早く男子更衣室で服を脱いでいると、他の男子達がやって来た。
「おぉ、これはこれは庶務のアイノ君じゃねぇか」
「……少々馴れ馴れしいな、誰かは知らんけど」
本気で誰か思い出せなかった。その男はガクッとズッコケるようなふりをした。おいおい、新喜劇かお前は。
「俺だよ俺、前の実技でてめぇにボコボコにされた奴だよ!」
そんな喰い気味で説明するほどのものでもないと思うが。
「それぐらいしか今のところ出番がねぇからな……」
「安心しろ、これから先も大して出番がねぇだろうし」
どこか遠くの方で「しまった、下手に男キャラ出し過ぎた!」とかほざいてる野郎の声が聞こえるような気がしたが、多分気のせいだろう。
「まぁそれはどうでもいいんだ。って事で、てめぇに相談がある」
「相談とは何だ、殴られまし太郎君」
「酷い渾名つけられた!」
話の腰が複雑骨折を起こしてしまっているな。もっと会話は要点を掴んで行うべきだ、まし太郎君よ。
「……もうツッコむ気力もねぇわ。とにかく、先に待たせてる連中がいるから浴場で話そうぜ」
むぅ、嫌な予感がするな。仕方ねぇ、いざという時は鉄拳制裁を行うしかないか。
「おぉー、こりゃ本格的だなぁ」
大浴場は、非常に俗な言い方をすればスーパー銭湯程の規模だった。何々、これは檜風呂、向こうには五右衛門風呂か。にしてもえらく和風だなぁ。
「おい、こっちに来いっ」
まし太郎君(俺の独断と偏見により命名決定)の案内で、水風呂に誘導された。奥には数人程の男子生徒が集まっている。
「さぁ、これに入るんだ」
「………………入ってもいいが、一つ頼みを聞いてくれるか」
「何だよ」
「まずは掛け湯をさせてくれ」
ずるっ。すっ転んだまし太郎君がその勢いのまま水風呂に頭から突っ込んだ。
「ぶはっ!てめぇ、この期に及んでそんなことを言い出すか!」
「何言いやがる。まずは掛け湯で全身の汗を流す、浴場の常識じゃねぇか」
「知るか、さっさとやってこい!くそ、やっぱり巻き込むんじゃなかったぜ……!」まし太郎君が何に怒っているのかは知らないが、俺は掛け湯をして戻ってきた。
「さて、お前達が何故俺を呼んだのか説明してもらおうか」水風呂に入りながら話しかける。ふぅ、ようやっと本題に入れた。何でこんなにまだるっこしくなるんだろうか。
「ふふふふふ、よくぞ聞いてくれた。俺達はF組屈指の非モテ軍団、人呼んで『RSG』だ!」まし太郎君含め、後ろに居た男子達がポーズをとった。
「……『RSG』?何かの略か?」至極面倒くさいが、一応聞いておく。
「『リア充・死んでほしい・軍団』の頭文字をとったんだ」
「ふーん」こっちに来てから一番役に立たない上に明日の朝には忘れてしまいそうな情報だった。「で、その『RSG』の皆様は俺をどうしたい訳で?袋叩き?」
「そう急かすな、まずは自己紹介からだ。まず俺は――」
……多分これを読んでいる君も俺と同意見だと思う。
『別にこいつらの紹介要らないよね?』
という訳で、飛ばします。
「以上、メンバー紹介終了だ」
「わーすごーい」棒読みで拍手する。「んで、何度も言うが俺を巻き込んだ理由を教えろや童貞軍団」
まぁ俺も実質的には童貞なんだけど。
「……単刀直入に言おう。アイン・アイノ、てめぇの協力が欲しい」
「ほー、協力って……何に?」
「決まってんだろ、覗きだよ」
「よし、全員歯を食いしばれ」
「ま、待て!暴力反対!」
まし太郎君がさっきまでの自信ぶりから一転、急に怯えた目で俺に命乞いをした。後方の連中も水風呂以外の理由で青ざめた顔をしている。安心しろよ、湯煙男子生徒集団殺人事件なんて事態には絶対しないからさ………………視聴率稼げなさそうだし。
「計画外の奴らが来るまで後5分、もう時間はねぇんだ!頼む、一生のお願いだ!」
揃って水風呂から上がり、土下座をするRSGの方々。
「………………そんな不細工な恰好をするんじゃねぇよ、これじゃ俺が悪人みたいだろうが」
『えっ』
一様に顔を挙げた彼らを一瞥し、俺は最大限の譲歩をした。
「ふん、お前らの無様っぷりに呆れた。だが、同時に興味がないとは言い切れねぇな」
失敗したらこいつら切り捨てちゃえばいいし。
「その代わり、頼みを聞いてやるのは一回こっきりだ。どうする?」
『………………あんた、神だよ!』
やめい、お前らに崇められた所で嬉しくもなんともないわ!
「よし、時間もないし作戦を説明するぞ!」まし太郎君の指示で、俺は犯罪の片棒を担がされることになってしまった……。
「いいか、チャンスは各員一度きりだ!では健闘を祈る!」
『ラジャー』
「ブラジャー」
計画も何も、露天風呂の仕切りの隙間から覗くだけじゃねぇか。このアホっぽさもまた男子の性故といえば仕方ないが……。
「じゃ、お前らちゃっちゃとやってこいよ。俺は暫く外の風呂に浸かってるからさ」
はぁ、生き返るぜ。この出歯亀大作戦は先にRSGのメンバーが10数秒間見て、最後に俺の手番となるという代物だ。何故俺が最後なのかと言えば、順番が後ろになればなるほどバレやすくなるのと、バレた際に応そこそこの役職に就きかつ女子との交流もある俺が矢面に立ちなるべく穏便に済ませられるかもしれないというものらしい。
(ま、実態は俺の評判を落とそうとしてるんだろうけど……どうなることか)
前方では、まし太郎君が頑張って隙間から向こうを見ようとしていた。しかし、どうも調子が狂っているようだ。
「お、おかしい!女子が誰も居ないぞ!」
「そ、そんな馬鹿な!」「いくら時間がずれていたとしても、この時間帯にどのクラスも使ってないなんて事は……」
狼狽えるRSGメンバーを眺めつつ、俺は男子大浴場の入口に目をやった。よしよし、予定通りに来やがったか。俺はそいつに向かって手招きし、露天風呂に来るよう誘導する。
「おーい、お前ら。まだ終わんねぇのかぁ?」
「……ま、待ってろ!すぐに手番を回して……」見苦しく弁明するまし太郎君に冷や水を浴びせるように、俺の真の共犯者が現れた。
「手番を回して……って何だい?」普段の優男スマイルとは違い、若干の失望を織り交ぜた真面目な表情で現場に到着したのは……。
「た、隊長。ヴァンが……ヴァンの野郎が来ました!」
「び、ビビんじゃねぇ!こっちにゃ頼れる協力者がいるんだ、ヴァンが相手だって……」
「へーぇ、そいつは一体誰を指してやがるんだ?」そろそろ軽くのぼせてきたので、立ち上がりRSGの連中に言い聞かせる。「いつ、俺が協力すると言った?」
恐る恐る振り返るまし太郎君と愉快な仲間達。あまり怖がらせないように、努めて笑顔を作ってやる。
「こういう真似をする奴が居ないか心配でなァ、予めトラップを仕掛けておいたんだよ」
「ト……トラップ……?」
「そう。と言っても、僕はアイン君に相談を受けた時は反対したんだけどね」あくまでも優しく諭すように、しかしその実は極めて冷徹にヴァンが言い放つ。「まずは合宿の前に不逞な行為をしそうな生徒をリストアップし、その中から特に危険性の高い生徒を選出する。残念な事に、それは君達だった」
「それ以外の奴らには念入りに釘を刺しておいた。無論、それだけじゃなくそれなりの見返り……例えば期末試験の点数の優遇とか、そんなんを用意しているとも伝えてな。うちのクラスにも候補者は居たが、お前らと違ってあいつは最低限の良心は持ち合わせていたようでな……見返りすら拒否して絶対にやらないと言ってくれたよ」
他の生徒には生徒会にも協力を要請し、伝言の要領で手伝ってもらった。楓は最後まで渋っていたが、何とか折れてくれたなぁ。あいつはどんな事情があっても人を騙す事を嫌っているから、説得させるのも骨が折れたぜ。
「で、最後はヴァンに頼んでお前らを嵌める下準備をした。お前らの話を盗聴し、あえて俺が現場に偶然居合わせたようにする。お前らの事だ、どうにかして俺を計画に抱き込もうとすると考えたんでな」
「そ、そこまで計算づくだったと……!?じゃ、じゃあ女湯に誰も居ないのも……!」
「良く気付いたな、それも俺が考えた。女子には今頃、屋内で待機してもらっているよ。無論、その隙間からは死角になって見えない場所だな」
彼女達には申し訳ないが、こいつらをのした後にゆっくり浸かってもらいたい。
「それじゃ、最後に聞きたい事はあるか?」
「……な、何で俺達をハメた?」
「愚問だなぁ、そいつは。まぁいいや、答えといてやるよ」
俺とヴァンは示し合わせるように、同時に答えた。
『見せしめ』
「かぁー、これ以上動いたら死ぬわ俺」
「ご苦労様だね、アイン君」
死屍累々(殺してないけど)とした惨状を尻目に、俺は改めて温泉に浸かった。塀を挟んだ反対側では、女子生徒達が騒がしそうに露天風呂を楽しんでいる。こちらにも続々と入ってきた男子が例のブツを見て引きながらも体を休めているようだ。
「で、彼らはどうするんだい?」
「俺のクラスの男子総出で運び出す。一時的に気絶している奴が大半だし、万が一怪我していたら流石に医務室まで連れていくが」
こんな奴らでもうちの生徒だ。お仕置き以上の暴力は俺の好むところじゃないんでな。
「それよりもだ、ヴァン。お前、さっき凄い技出してたな。あれは何だよ」
「あぁ、あれはね。次の学園対抗戦に向けて習得したんだ」
下方からの水流で相手を打ち上げた後、落下のタイミングに合わせて掌底を決める。ヴァンにしては珍しい荒技だと思った。
「水そのものは攻撃能力を持たない。だから、基本は水の質量を利用した打撃や窒息を狙った搦め手が中心になるんだ。でも、ここに別の力が加われば、当然破壊力は増す。名付けて『龍王対破』」重力を利用して攻撃力を上げるのは俺もやっているが、こいつはそれを自分なりに実践しようとしているみたいだな。
「でもアイン君だって見た事の無い技を使ってただろう?」
「!気付いていたか。あれは指向性をもたせた音波を発する事で相手に外傷を与えることなく気絶させるのが目的だ」
単純な殴り合いだけじゃなく、状況に応じて他の手段を使えるようにしないとこの先が大変だからな。
「俺の故郷でも『音響兵器』として使われていたものだが、これなら実戦投入もいけそうだ」
「できれば、そんな事態に巻き込まれたくはないけどね」
「……当然だ。さて、俺は上がるとしますか」
本日の夕食は何なのだろうか。それが気になって仕方がないのだ。
「ふぅ、食った食った」
夕食後、渡り廊下を歩く。と、後ろから誰かが触れてきた。
「ん?誰さね」
「こんばんは……かな?阿陰」
「おぉ、ユアじゃないか。どうした急に」
「今……お時間、空いてますか?少し話したい事がありまして……」
うーん、空いてないといえば嘘になる。しかし、今すぐに?
「はい。あ、そんなに時間はとらせませんから」
「そうか、じゃあ問題ないな。場所は……すぐそこでいいか?」
「えーと……ちょっと恥ずかしいので、向こうで」ユアは渡り廊下の屋外にあるベンチを指差した。少々距離は離れているが、まぁ許容範囲か。
確かにここは他の生徒や教師も通るので内緒話には向かないな。しかし、恥ずかしいって何を話すつもりだ。そんな事を考えながら、俺は彼女と共にそのベンチへ向かった。
到着して、腰かける。先程までいた廊下からはギリギリ見える位置のこのベンチは、わざわざ座ろうとする人間以外には大して気にも止められないような地味なものだった。俺の隣にユアが座り、少し密着した格好になる。
なるべく意識し過ぎないように心掛けながら、彼女から話題が振られるのを待った。
10分ほど経っただろうか。ユアは、覚悟を決めたように語り出した。
「………………阿陰。今日の深夜、こちらに来れませんか」
「こちらにって、どこに?」
「………………私の、部屋です」
俺は固まった。
「他の子達は別の部屋に行くみたいなんで、大丈夫です」おいおい、何が大丈夫だ。
「ま、待てよ!話が急すぎる」
「実は今日まで、ずっと我慢してたんです。阿陰と、一つになれるのを……」コラ待て、勝手に了承したようにしないでくれよ!ていうか何、一つになるって!
「い、いやでもな、ほら見回りの先公とかにバレるだろ」
「……それも問題ないですよ?私は自分で言うのもなんですが割と優等生ですし、阿陰だって……何だかんだで庶務じゃないですか。こんな羽目を外す生徒達だなんて、思われないですよ?きっと……」ユアは俺の左腕をとり、自分の胸に押し付けてきた。な、なんだ?こいつ、いつの間にここまで積極的に……!?
そのまま勢いに任せてしまいたいという自分と、この状況を訝しく思う自分がせめぎ合う。理性が解答を導き出せるのか……?
「だから、今日こそ。私を好きに……してください」ユアはほんのり頬を染めながら、俺の唇へキスをしようとする。俺も今回ばかりは小難しい思考をやめ、ただ本能のままに彼女を……。
「……ようやく分かった。お前、ユアじゃないな」
押し戻した。
「……え?な、何言ってるんですか、阿陰。私は……」
「とぼけんじゃねぇよ。正体が誰かは知らないが、少なくとも俺の知る限りにおいて、お前はユアじゃないと判断しただけの事だ」ベンチから立ち上がり、距離をとる。
「そ、そんな……酷いです。何を証拠に……」
「じゃあ証拠を出してやる。まずその一、もしお前が本物のユアならわざわざこの時間じゃなくても呼び出す事は出来たはずだ。例えば俺が風呂から上がった時に待っていたりとかだな。それぞれの入浴時間自体はしおりに書いてあるから、無理なく実行できる」
「そ、それは……今日ずっと悩んでいたからで……」
「そのニ」俺は冷たく、次の証拠を言い放った。「確かにユアは学業も優秀で大人しめの性格だから、教師に目をつけられにくいってのは筋が通ってる。だが、俺が庶務だからという理由で警戒されないと考えるのは早計だったな。自慢じゃないが、俺は何度も決闘という形をとってはいるものの喧嘩をやってきている。それは教師の間でも少なからず話題に上るだろうし、それ抜きでも俺はさまざまな疑惑が浮上している。寧ろ庶務をやっているのが不思議なくらいだ」
こうやって生徒会に居続けられるのも、他の志願者が居ない事に加えて楓達既存メンバーからの支持があるためだ。
「だから、庶務の肩書程度で俺への疑念が帳消しになる訳がないし、ましてや信頼される訳でもねぇんだよ。それにだ。俺のいい加減さを、ユアは知ってるはずだ。尚更お前の発言は信用性を失ってる」
「………………」
「で、最後。これが一番の理由だ」
俺は、臆せず言った。
「胸が小さかった」
「………………へ?」
「幸か不幸か、俺は今まで何度もユアのおっぱいを触ってきた。そうしている内にだな、俺はあいつのバストサイズを体で覚えてしまったんだよ!悲しい事に!」
自分でも何を言っているのだろうと思い詰めるほど、しょーもない話をしているように感じた。ははは、相手もドン引きしておられるわ!
しかし、言ったモノは止められない。
「いいか、確かにお前の変装は完璧だった。背丈も、顔も、体型も、声でさえも。だがな、おっぱいだけは嘘をつかなかったという事なんだよ。恐らくだが、パッドか何かで誤魔化したんだろうな。その触感も違和感の理由だ」
あぁ、こっちに来てから俺はどうかしちまったんだろうか。こんなアホな話は一生する必要がないと思っていたのに。
「い、以上より、お前はユアじゃないんだ!Q.E.D.!」
最早ヤケクソ気味に叫んだ。
「………………まぁ、いいでしょう」
そうして彼女は、変装を解いた。俺はその姿に、驚嘆せずにはいられなかった。
「……!?お前、その恰好は……」
「初めまして、藍野阿陰さん……いえ」
「被験者000号」
眼前に立っていたのは、最後に俺が見た。
姉そのものだった。
というよりキャラクターが増えすぎているような気がして仕方がないです。
場合によっては何らかの対策をしないといけませんね。




