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第39話 有意義なだべり

就活や卒論で忙しいですが、出来る限り書いていきます。

「……これで終わりっと。ったく、みっともないんじゃないんスか、後輩に勉強教えてもらうって」

「かたじけない……」

 似合わない口調で肩を落とすミルラを冗談交じりに詰りつつ、シャーペンをクルクル手先で回す。

「それにしても、アイン君のそれ……面白い形だねー」

「そうですかね?いや……確かにこっちじゃ珍しいのは当たり前か」

 俺がこの世界に持ち込んできた代物の半分は、現地じゃ見かけないような物だった。このシャーペンもそうだ。

「でも、さほど便利って訳じゃないですし」俺はシャーペンの芯が入ったケースを見せた。「芯が切れたらいちいち補充しなけりゃなりませんからね」

 シャーペン……シャープペンシルの利点は鉛筆に比べてゴミが出ないという事と丈夫さだ。筆に対しても、インクと違い芯の利便性と保存性で優れている。一方、一本のシャーペンに予め入れられる芯の本数は限られており、それを超える事は出来ない。更に、芯詰まりを起こした場合は一度分解しなければならない。そして何より、この世界では芯を購入できないため、今手持ちの分でどうにかしなければならない点は考え物である。

「一応、買いはしたけど……」

 バッグに箱のまま入れているのは、先日の給料で買った万年筆だ。使い方は自前で習っているが、実際はシャーペンの方が使い勝手がいいのでなかなか出番がない。

「そんなことより、合宿をどうするかが重要じゃない?」ここまで黙々と仕事をこなしていた楓が発言する。俺、マリア、ミルラがそれに耳を傾けた。

「重要って、行き先も目的も決まっとるのに何を……」

「甘いわね、アンタ」ふふんと何故か勝ち誇ったように笑っている。「生徒会でやるべきことは、まだあるわ!」

「ほーん、それをさっさと教えてくれよ。それとも最近の若者は勿体ぶった話しか出来んのか」

「だから、アンタも同年代でしょうが!まぁいいわ。今朝貰ったしおりを見てみなさい」

 仕方なく、バッグから指示されたブツを取り出す。

「で、これのどこに俺らが介入しなけりゃならん事柄があるっちゅうんじゃ」

「恐ろしいほどに語尾が安定しないわね……」

「知るかいな」この無益なやりとりの最中でも、ミルラが何やら面白いものを見るような表情をしている。……余裕ないんじゃなかったんですかねぇ?その横では、マリアの苦笑する姿も見られた。しかし、遅々として話が進まないな。

「とにかく、いいからしおりの『スケジュール表』のページを開きなさい」

 言われたとおりに開いてみる。うーん、何らおかしなところは見当たらない。

「そりゃそうよ。だって書いてないもの」

「は?じゃあ何で……まさか」

「そうよ。あたし達がやるのは所謂サプライズってやつよ」

 ガキの頃からこの世界で生きてる癖に、楓は妙に詳しかった。

「サプライズねぇ。具体的に何をする訳だ?」

「……それを決めなきゃならないから、今日呼んだのよ」

 その割に役員が結構居ないけどな。特に仮病の奴は養護不可能でしょ。

「今いるメンバーでどうにか決めるしかないわ」

「そうか。宜しく頼むぞ、マリア」何だかもう疲れたので、ここまであまり発言をしていない彼女に話してみたが。

「ちょ、ちょっと何でいきなりマリアちゃんに話を振るのよ!」

「俺はいまいちやる気ないし、お前やミルラは喋りすぎだ」

『酷いっ!』そのお喋りコンビは一旦どうでもいいんだ。

「そうですわね。わたくしとしては……」おぉ、マリアも立派なスルースキルの持ち主か。これなら俺の負担も少なくなるな。

「空いた時間を使ってレクリエーションを行うのは如何でしょう?」

「レクリエーションか……体を動かすとか、そんなのか」

「どちらかといえば、クラス間の団結を深めるのが目的ですわ。新学期が始まって2ヶ月弱になりますが、どうしても上手く溶け込めない方は居るでしょうし……」

「確かに……」楓はそうつぶやきながら、何故か俺の方を見た。本当に失礼な奴だなっ。

「そういった方が学友と親睦を深めるのがこの合宿のテーマの一つであるなら、是非ともそういった時間を設けたいですから……」

 なるほどね、まぁ妥当な意見だ。こうやって実務をしていると、彼女のような常識人的思考が非常に貴重に思えてくる。俺を含めて他の役員がぶっ飛んだ話しかしないからこそ、マリアがその対極の視点から物事を述べる必要性が出て来るのかもしれない。ちょっと反省。

「でも、一応自由時間であちこち回れるようにはなってるんじゃない?」ミルラが何時の間にか俺のしおりを盗み見ていた。勝手に見るな。

「それはあくまで班員という元から友好的なつながり内での行動ですわ。そうじゃなくて、クラス単位で何か一致団結できるようなものがあればと考えたのですが」

「貴女、相変わらず殊勝ねぇ」楓が苦笑した。それに対し、マリアも柔らかく微笑んだ。「そうかしら?」

 俺としても特に反対するつもりは無い。問題は、それで何をやるのかだ。

 その後も、俺達四人は会議という名のアイデア出しに終始した。出てきたものを一旦整理しつつ、少しづつ詰めていく。気が付けば、タイムリミットが迫っていた。

「っと、もう終わりか。あっという間だったな」

「この続きは明日にでもしましょ」

 仕方ないので、残りは翌日に持ち越す事になった。

今週中にもう一本書きたいですね。

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