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御華詩Garden  作者: nakoso
2/7

ウソgame


 青 → 黄 → 赤。

 信号の指示でブレーキを踏みつけた。

 この交差点の赤は長い。

 サイドブレーキを上げて鼻先で横切る車と歩行者を、ワイパーの向こうに眺める。

 カラフルなカサ模様。

 窓を伝う雨雫を目で追っていると、助手席から声をかけられた。


「ウソゲームしようよ」

「はい?」


 快活に笑う彼女に眉をひそめた。


「ここの信号、青になるまで長いでしょ?」

 こいつとは、付き合い始めて今日でちょうど5カ月。

「それまでの暇つぶし」

「どんなゲーム?」

 沈黙が続くよりはマシ。俺は承諾した。

「思ってることの逆を言うの」


 うれしそうに簡単な説明。

 どういう発想力を持っているのか、時々彼女の頭の中を覗きたくなる。

「じゃ、スタート!」


 何を言おうか考える間もなく、彼女の先制。

「私、雨が大好きなの。水たまりに飛び込みたくなる」

 雨は嫌い。水たまりも嫌い。

「俺は晴れてる方が好きだな」

 俺は雨が好き。

「そうなの? 知らなかった〜」

 それを彼女は知っている。

「言ってないからね」

 前に話したから。

「じめっとした空気の方がいいよ」

「からっと晴れた日の方が気持ちよくない?」


 ウソの反論に彼女はご満悦。

 何が楽しいのか、俺にはわからないけど。

「えへ〜」

 うれしそうに笑う彼女は楽しそう。


「あとね、あとね」

 きょろきょろと頭を揺らした彼女が、後部シートに上半身を伸ばした。

 何事かと思えば。

「これ」

 その手に取ったのは1枚のCDケース。

 メガネが3つ、公園のベンチに並んだジャケットで俺が好きなCD。

 目の前に出されたそれに相槌を打つと、


「これ、大っ嫌い」


 たとえウソゲームと言っても、笑顔での否定ってのはつらいものだと実感した。

「センスないもんなー」

 言っていて苦笑にしかならない。

「あ」

 小さい口を彼女が開いた。

 歩行者用の信号が点滅している。

「じゃーねー」

 まだ続けるつもりらしい。

 サイドブレーキを下げつつ、俺は青信号を心から待ち望んだ。


 自慢の笑顔で彼女は言う。


「あなたが一番好き」


 彼女に横目で俺は笑う。


「この世で一番愛してる」



 信号が青に変わった。












とあるマンガを読んでいた時の事。

もしも自分だったらどういう風にするのかな〜?と想像(妄想)を膨らませたら、こういった形に相成りました。

いわゆるインスパイア物とでも呼びましょうか。

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