一難去って
騎士団の男の訪問から一夜明け。
その日は朝からある話題で持ち切りだった。
「遂に……、奴が接触して来たか」
特に部隊長であるガイムは人一倍眉間に皺を寄せて考えこんでいた。
「ガイム。あいつは……誰なんだ?」
「奴は騎士団の城下部隊長、王国兵士団から見たら俺みたいな立ち位置の奴だな。
――名前は、アヴェロ・アルレイド。俺と同期だ」
「アヴェロさんねぇ……。僕も前に話し掛けられたなぁ」
「レイマさんもですか?僕も、正式入団のちょっと前に声を掛けられたかな」
「レイマの話は聞いた……。メイルも接触されたのか……」
「奴に接触されたって事は……、勇者召喚の話も聞いたのか」
「嗚呼。6年後……それと同時に王国兵士団は用無しだってな」
「勇者召喚は本当らしいがな……王国兵士団が切り捨てられるかってのはただの噂だ。騎士団が勝手に言ってるだけだから心配すんな」
「まあ、そこは俺も信じてないが……勇者、か」
「異界から呼び出す――それって誘拐じゃ……」
「まあ、それくらい現在人間は魔族に負けてるって事だ。魔族から奪った魔法石を根こそぎ使って異界から勇者を誘拐。正直ヤケクソな部分もあるだろ」
「ガイム。」
「なんだ?」
「今日の特訓が終わったらで良いんだが……夕方ちょっと付き合ってくれないか?」
「ええっ、なにそれ僕も行きたい!」
「……そうだな、レイマも付き合ってくれ」
「あれれ、僕はー?」
「メイルは……、悪い。」
「ふふっ、まあ良いけどね……」
その日の訓練は、エルド心なしか上の空であった。
――――……
「よ、エルド。何の用だ?」
「いつも剣術の特訓してるよね、飛行術をまた教えてあげようか?」
「いや……ちょっと、単に聞きたいことがあっただけで」
「ん?何だどうした?」
「あの男からちょっと聞いて……、気になったんだ。
ガイムとレイマって……どんな関係なんだ?」
「「…………?」」
「いや、関係って言っても……その、なんだ?」
「……ふふっ、まあ言いたい事は分かるよ。そうだねぇ……、僕にとって隊長は恩人なんだよ」
「そう言われるとなんか照れくさいなぁ~」
「恩人……?」
「隊長……エルドには言っても良いと思う?」
「まぁ、お前の好きにしろよ」
「うん、分かった。
――――じゃあ、教えてあげるよ。でもね、エルド?この話は誰にも言わないでね。」
レイマはそう言うと、何時ものような穏やかな眼付きから真剣な眼付きへと変えた。
じっとレイマに見つめられたエルドは、また真剣な眼でレイマを見つめ返した。
「……僕は、――――」