少年の才能
エルドの噂は王国兵士団だけでなく、王城の中にまで広まった。
その内容とは「剣を持って間も無いのに部隊長を負かし、更には飛行術までも身に付けた、随分と大人びた孤児がいる。」と言ったもの。
「凄いねぇ、エルド!瞬く間に噂になってるよ」
「……チッ」
「お前はホントに可愛げがないよなぁ……」
レイマが褒めちぎる横でガイムが呆れ顔で溜息をついた。
「凄いねエルド君。王城で噂になるのも無理ないよ……
そうだ……『騎士団』に気を付けた方が良いんじゃない?」
「……騎士団……」
エルドはメイルを問うように見つめた。
「実は、前から王国兵士団と騎士団は仲が悪くてね。特に騎士団なんかは王国兵士団から優秀な兵士を引き抜いたりね……。ホント、質が悪いんだよ」
「そうだねエルド、騎士団には警戒しておいてね?
一応教えておくけど、僕達王国兵士団は藍色のマント。王国騎士団は紅色のマントを身に着けているから」
「……分かった」
――――……
「……何?」
「はい、以前話したあの新入りのガキです。王城までその噂は広がってると……」
「その噂は確かなのか」
「いえ、それは分かりませんが。ですが噂によるとかなりの逸材ですよ」
「……そうだな。では……、
俺が直々に、勧誘に向かうとするか……」
以前と同じ部屋で、以前と同じ紅色のマントを身に着けた2人の男。その内の1人が、ニヤリと笑いながらゆっくり立ち上がった。
――――……
「よッ……と。」
兵士達の訓練や鍛錬も終わった頃の夕暮れに、エルドは1人で飛行術を練習していた。
「馴れると……結構、楽しいもんだな……」
エルドは相変わらず無表情だったが、心なしかその表情は今柔らかくなっているように見えた。
「――やぁ、少年。こんな時間に何をしているんだ?」
「――――!!」
不意に背後から声を掛けられる。
エルドはすぐ様振り向いた。
――そこにいたのは、『紅色のマント』を身に着けた1人の男だった。