王国兵士団
「レイマ……、こんな小さな子供に剣術を教えるのか?しかもとても痩せていて……」
「この子は伸びると思うんだ。面倒は僕が見るから!お願い、隊長!」
エルドはレイマをじっと見つめた。
艶のある、少し長めの黒髪に黒の瞳。自分とは正反対のその容姿にエルドは興味を持ったのだった。
「……レイマ。」
「お願い…………、ん?どうしたのエルド?」
「レイマって、『とうようじん』なのか?」
「え……、『東洋人』を知ってるのかい?」
「前に貴族が話してたのを憶えている。髪や瞳が黒い人は『とうようじん』。でももうその数は減っているって……」
「れ、レイマ。この子は本当に9歳なのか?話し方と言い、この記憶力と言い……」
「でしょう!ね、良いでしょ?まずはここに置いてあげようよ!」
「はぁ……、分かったよ。じゃあ俺が上と話つけとくから。先ずは訓練させて見込みがあったら正式入団させよう」
「やったぁ!やったね、エルド!」
「お、なんだなんだ?レイマが何やら面白いもん拾ってきたみたいだぞ」
わらわらと鉄の鎧に藍色のマントを身に着けた男達がエルドの周りに集まって来た。
「正式入団じゃないにしても、ちゃんと自己紹介はお互いにやらないとな。先ずはレイマから自己紹介しろよ!」
「え、えぇ?僕はもう名乗ったんだけど……まあ良いか。
えっと、僕はレイマ・グラセフィナー。さっきエルドが言ったように僕は『東洋人』の末裔だよ。あ、因みに19歳です。改めて宜しくね、エルド!」
「んじゃあ、俺も自己紹介しとくか。エルドっつったか?俺はガイム・ファレノド、一応王国兵士団の城下部隊長だ。因みに歳は27だ。まあ、宜しくな?」
エルドはじっと先程からレイマと話していた男を見つめた。
ガイムの自己紹介が終わると次々藍色のマントを身に着けた男達が自己紹介を始めた。
その中でも――、
「――エルド君かぁ。僕はメイル・メテリード、15歳だよ。今まで僕がここの部隊で最年少だったんだけどね……今日から遂に僕も先輩の仲間入りだね。兎に角宜しくね!」
「……宜しく」
エルドは今度はメイルと言う少年を見つめた。
金の髪、赤の瞳。少し風変わりなその容姿から、エルドは彼にも興味を抱いた。
「……皆、良さそうな人ばかりだな」
エルドはそう小さく呟いたのだった。
――――……
「――新入り?」
「はい、まだ正式入団ではありませんが。」
「容姿はどうなんだ?」
「いえ……まだ9歳の薄汚いガキです、引き抜く程の存在では無いかと」
「なるほど。兎に角今後も王国兵士団の監視を続けるように。」
「承知致しました」
薄暗い部屋の中で、『紅色のマント』を身に着けた2人の男がニヤリと笑った。