第7話 時は経ち〜
7話目…どうぞ…バタッ
湖をぶち壊したあの日から早9年。
その間一馬は魔力コントロールの修業、魔法の習得、体に馴染むための運動、そして魔物の種類・体質の理解に時間を費やした。
中でも一番苦労したのが「魔物」だ。
そう、じつはこの森には魔物が生息する。
8本の足を持つ馬のような魔物『スレイプニル』や、ワシの頭に獅子の体を持つ『グリフォン』、沢山の首を持つヘビ的ななにか『ヤマタノオロチ』、さらには体を白色の毛に覆われたトラみたいなやつ『白虎』とか、日本生まれの一馬からすれば、伝説の生き物じゃん!てな感じでとても苦労した。
中でも一番厄介だったのは『ドラゴンゾンビ』だ。
この9年間火竜や地竜、下位の竜種『ワイバーン』と会ったりしたのだが、何故だか攻撃して来ず逆に懐いてきたりしたのだ。
だが、ドラゴンゾンビにいたっては、近づいた瞬間敵意丸出しでこちらに殺気を向けて来たり、攻撃したりしてきた。
しかもとてつもない腐臭の持ち主で、一馬はこれが一番嫌だった。
一馬は龍神でありそこらへんの生物よりも五感が優れている。
よってただでさえ酷い腐臭が、更に酷い腐臭として一馬を襲い、その日一馬は寝込んだ。
とまあこんな感じで魔物に対しては一番苦労した。
魔力コントロールに関しては、アクアが鬼の形相で指導してきたので1番得意だったりする。
とある日、一馬はいつものように魔法の練習をしていた。
『水の鎖!』
地面から水でできた鎖のようなものが出てきて、標的である木に絡みつく。
そして、
『氷隕石!』
一馬の頭上に半径7、8メートルほどの氷塊が大量に発生し標的に向かって降り注ぐ。
ドガガガガガガガ!!!
「ふむ、上出来だな」
そこには跡形もなく吹き飛びクレーターができている。
一馬は魔力コントロールを完璧にこなせるようになったので、アクアに魔法を教えてもらっていたのだ。
勿論場所は湖から遠く離れたところでだ。
アクアは水の精霊王なので水、またはその派生属性の氷しかつかえない。
よって一馬が習うのは必然的に水属性の魔法になったのだ。
それを9年間ずっと続けてきたことにより、今の一馬は水、氷属性共に神級まで取得していた。
魔法はクラス分けされており、下級→中級→上級→超級→精霊級→神級の順である。
ちなみに神代魔法と神級魔法は全くの別である。
アクアは精霊級までしか覚えておらず、神級はアクアが持っていた文献で独学で習得した。
余談だがその様子を見ていたアクアは、キィィィィィィッ!とハンカチを噛んでいた。
そんなこんなで一馬は見事に魔法を使えるようになったのである。
魔法の練習が終わり洞窟に帰ろうとしていた一馬に声がかけられる。
「カズマ、ちょっとこっちきて」
声の主はアクア。チョイチョイと手を振って呼んでいる。
「なんだよ、アクア。もう夜だぞ」
周りを見れば夕日は沈みかけ月が淡い光をおびている。
「ふふっ、つれないわね〜。あなたにいいものをあげるわ」
そう言われ手渡されたのは辞書ぐらいの太さがある本。
「なんだよ、これ」
一馬が尋ねると
「それは魔法書よ」
とアクアが答えた。
魔法書?と聞き返すと、
「そう、魔法書。私水魔法しか使えないしね。それだけじゃこれから困るでしょうし、ちょっと知り合いに頼んで貰ったのよ」
アクアはいずれ一馬がこの森から出て行くと考えている。その時のことを考えて一馬に魔法書を渡したのだろう。
「いきなりどうしたんだよ。明日は天気が荒れるんじゃないか?」
「失礼ね!プレゼントよ!プ・レ・ゼ・ン・ト!!
あなたと出会って今日で丸9年。あなたも10歳になったことだしね」
一馬は思う。あれ?アクアってこんなやつだったっけかと。だがプレゼントに対しては素直に嬉しいので
「ありがとう、アクア」
アクアの目を見ながら礼を言う。
「べ、別にいいわよっ!」
そう言いながら頬を若干赤く染めたアクアはそっぽを向く。
(か、可愛い…)
ジーーっとアクアを見ていると、
「ホラ!用は済んだから帰った帰った!」
そう言われて背中を押される。
(ああ、幸せだなぁ)
一馬は空を見上げて思った。
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