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第45話 勇者、久坂部暮羽の魔法

どうも、SWBFのβテストでダースベイダー卿フィーバーしてた猪鹿蝶です。

アレめっちゃ楽しいですね、ルークも使いたかったです。

それとタイトル変えました。はい。

長いですよね。でもこれしか思いつかなかったので許してください

これでタイトル詐欺にはならないはず…っ!

ブォン!


フロッシュの渾身の一撃が暮羽の細い首めがけて繰り出される。

だが直撃する寸前で、突如暮羽の周りに黒い靄が広がり始め、その姿は霧の中へと掻き消されていった。

結果、フロッシュの攻撃は空振り。霧が視界をあっという間に覆っていく。


「くそっ、どこにいきやがった!」


舌打ちをし、自分の勘だけを頼りに周囲に気を配るフロッシュ。

闇雲に動かず、冷静に状況判断を下せるのは流石Aランクといったところだろう。

何事もなく数秒が経ち、バトルアックスを握る手を緩めた瞬間、フロッシュはふと足下に違和感を感じた。


「これは……?」


そこには黒い液体。液体は自分の周囲全体に広がっているらしく、その液体からは独特の臭いが放たれている。


「この臭い……まさか!?」


液体の正体に気付き、その場を素早く飛び退くフロッシュ。

だが時既に遅し。


「遅いよぉ〜、瀑点塵(ばくてんじん)!」


その数瞬前、暮羽は液体に手をつけ、そして点火(・・)した。



ズドォォォォン!!



会場全体に響き渡る爆音。

土煙が宙を舞い、パラパラと会場の石の破片が周囲へ飛び散っていった。



先程の液体の正体は、地球で言う石油。

だがただの石油ではない。

『ルーオン』と呼ばれる、魔力干渉が非常に高く、ちょっとした魔法にも反応する特別な石油だ。

危険かと思われるがその実、爆発時の温度は50度と低めで、爆発に巻き込まれても少し火傷を負う程度で済む。

逆に爆発力は絶大だ。

直撃したらシャレにならないほど凄まじい衝撃を負うことになるだろう。




閑話休題





会場全体が騒つく中、徐々に土煙が晴れていく。

会場にいる観客達が息を呑んでステージを見つめる中、視界が晴れたそこには気を失い地面に倒れ伏すフロッシュと、どこか残念そうな表情で立つ女性がいた。



✴︎✴︎✴︎



「なんだあれは……」


あっという間だった。

ステージが霧で覆われたかと思うと突然の爆発。

視界が晴れたら既に勝負は決まっていた。



一般人だったらこういう感想を抱くことだろう。

だが龍神・魔神であり、鑑定スキル持ちのカズマ達には見えていた。

彼女がどういう方法でフロッシュを倒したのか。

そして彼女がどのような魔法を行使したのかを。


「流石勇者、えげつない魔法を使うな……」

「うん、あの魔法は厄介だよ」


暮羽の魔法はすなわち、「移動」

先程彼女はルーオンをフロッシュの足下に移動(・・)させ、それを起爆した。

それだけではない。

フロッシュや他の選手達が暮羽に気づかなかったのは、彼女が「移動魔法」で彼らの視線や意識を移動させたからだ。

移動魔法の対象者は暮羽が立っている方向に視線を持っていこうとしない。もちろん、選手、フロッシュ本人は無意識だ。

フロッシュが気付かないうちに他の選手が全滅していたのも、これが理由だ。


「相手の意識を移動させ、自分に気付かない中、勝負を決める……ホントにとんでもない魔法だ」


だが対処法がないわけでもない。なんとかなるだろう。


「し、試合終了! 勝者は久坂部暮羽選手!」


音一つ立たず静まり返る会場。

やがてポツリポツリと拍手が鳴り出し、歓喜の声と雄叫びが響き渡った。


「うおお! なにやったのか全然分かんなかったぜ!」

「おい、あんな姉ちゃん最初いたか!?」

「なに言ってんだよお前」

「流石勇者だな!」


ステージの方では倒れた選手達が続々と担架に乗せられ運ばれていく。

その方向を見て微妙な表情を浮かべる暮羽。


「期待してたのに……残念」


暮羽の呆れを含んだ声は、会場を覆う大きな歓声に掻き消された。



✴︎✴︎✴︎



そのあとのAブロック予選は、最初の一回戦程目立つ戦いはなかった。


冒険者同士が一対一のタイマンをしたり、殴り合い乱闘になったりなど、まあありふれた試合だ。

中にはなんと、弁慶立ちで気絶してる奴もいた。


あっという間にAブロック予選が終わり、その勝者が発表された。

結果、Aブロック勝者全6人の内、4人がアルス聖教国の勇者。

その中にはもちろん、移動魔法を使う勇者、久坂部暮羽もいる。

他の3人の勇者はこれといって目立つような戦いもせず、魔法を使わないまま肉弾戦で次々と冒険者達を倒していった。

勇者と言うだけあって、身体能力はAランク冒険者を超えているだろう。


「次はBブロック予選です! どんな戦いが見れるのでしょうか」


ゾロゾロと選手たちがステージに集まっていく。


「もうBブロックか、早いな」

「そうだね」

「次はどんな奴が…………おいサラ、お前なんでここにいるの?」

「え、なんでって何?」

「いや、お前確かBブロックー……」

「えー? そうだったかなぁ」


そう言いながらポケットをゴソゴソと漁るサラ。


「私自分のブロックぐらい覚えてる……けど……」

「どうした?」


徐々にサラの声が小さくなっていく。

視線は自分の手元。気になったカズマもその方向を見る。

そこには青のボール。


「青だな」

「青だね」

「「…………」」


しばしの沈黙。

眼下のステージでは既に一回戦が行われようとしている。


「青はBだよな」

「そうだね」

「……」

「てへ」

「てへ、じゃねぇよ! 早く行けよバカなの!?」


サラの尻を引っ叩くカズマ。

バシィン! と鋭い音が鳴り、周りの人達が驚いた様子で何事かと周りを見渡し始めた。


「痛いよぉぉ」


澄まし顔で席に座るカズマ。

サラは踵を返すと、目尻に涙を浮かべながらそのままステージへと走り去っていった。


「それでは、Bブロック第一回戦、開始!」

「「うおおおおおぁぁぁ!」」


合図で試合が開始された。

筋肉ムキムキの男達が獰猛な笑みを浮かべ、得物を片手に相手へ殴りかかる。


「あいつ、大丈夫か?」


もしサラの出番が一回戦だったら、ここで終わりだ。

そうなるとサラとは戦えない。


「はぁぁぁ」


深くため息、どっと疲れが押し寄せてくる。

戦うのを楽しみにしていたカズマにとっては全然嬉しくない。

カズマは椅子に全体重を預けると、そのまま手を額に当て天を仰いだ。

2016年10月16日

生存報告です。

次の更新までもう少しお待ちを…!

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