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第44話 Aブロック第一回戦

みなさん、お久しぶりです。

お待たせしてしまい申し訳ありませんm(_ _)m

一つ、修正を入れました。

ガルズ達のランクをS→Aに変更しました。

ガルズ達って誰や? という人は、9話あたりに登場しますので、そちらの方をよろしくお願いします。

「なんなのアレなんなのアレ……」


場所はEブロック控え室。控え室からは女性とおぼしき声が外の廊下まで響いていた。


「あんなの、見たことない……」


頭に手を当て、顔を伏せている女性━━ゼノス。

つい先程、自分のブロックが決まり、いつも通り周りから避けられ、そしていつも通り控え室に戻ろうとした時、とんでもない魔力が視えた(・・・)

会場全体どころか、国ごと全体を覆うような強大な魔力。

しかしダダ漏れという訳ではなく、魔力は感じない(・・・・)

ゼノスは見ての通りエルフだ。

エルフは人間と精霊の間にできた種族である。

不老とも言われ、魔法に精通しており、そして魔力を視る種族だ。

エルフの中には魔法とは別の『精霊魔法』なるものを使うことが出来る人物もいる。



閑話休題



エルフは視る種族。

だから視えてしまった。黒コートの男から発せられる魔力(オーラ)に。

ゼノスは長く冒険者稼業をしてきたが、あそこまで規格外な魔力は見たことがない。

誰だってあんなものを視たら冷静ではいられないだろう。

それに対して、隣にいた黒髪ポニテの女の子からはさほど魔力は視えなかった。

ゼノスはEブロック、黒コートの男がどこのブロックなのかはわからないが、もしかすると予選で当たってしまうかもしれない。

例え予選で当たらなくても、自分が本戦に上がればほぼ間違いなくあの男と当たるだろう。

あれほどの魔力だ、必ず本戦出場を決めるだろう。

出来れば……いや、絶対に当たりたくない。


「あぁ嫌だ嫌だ……戦いたくないよぉ……」

「あのー、ゼノス選手? そろそろ開会式が始まるんですけど……」

「ひょわぁ!?」


いきなり扉が開かれ、役員の人が入ってきた。


(ビックリしたぁ……そういえば開会式もあったな……あぁ行きたくない目立ちたくないよぉ)


開会式については必死にダッシュでここまで来たから忘れていたらしい。

一人百面相するゼノスを見て訝しげな表情を浮かべる役員。


「……? ではゼノス選手。こちらに。道は分かりますか?」

「…………」


手を差し出す役員。そして役員の前を無表情で素通りするゼノス。

微妙な表情を浮かべている役員を置いて、そのまま会場の方へと去って行ってしまった。

しばし固まる役員。だがやがて拳を握り締めると何故かガッツポーズをとりはじめた。


「……くぅぅぅ! やっぱゼノスさんクールだなぁ」


自分が声をかけた時はなにか慌てていたっぽいが。


「あのクールな表情、雰囲気がたまんねえよなぁ」


役員が一人熱くなっているが、実際、ゼノスの内心は━━━━


(え、ええええと、道わかんないけどどうしよう……で、でも何て言えばいいか、ぁぁぁぁ……)


という感じで、めちゃくちゃパニクっていていた。

クールキャラとして絶大な人気を誇るゼノス。

何事に対しても冷静沈着に対処。

人とはあまり接することなく、話もしない。

だが実際はクールなのではない。

人とは話せないし、近づけない。

とても緊張するし、目立ちたくない。

ゼノスは地球で言う━━コミュ障だったのだ。



✴︎✴︎✴︎



「集まりましたか? それでは、これからAブロック戦を開始します!」


司会のトリスによって、開戦が告げられる。


「Aブロック第1回戦、選手の皆様はステージにお上りください!」


トリスに促され、1人、また1人と選手がステージにのぼる。


「さあ早くも注目選手の登場です! フロッシュ選手だぁ!」

「あら、フロッシュって聞いたことあるわ。えっと〜、確かAランク冒険者の……なんだっけ」

「ワイバーン狩りのフロッシュですよ、レムテスさん」

「あ〜そうそう! ワイバーンといえば下位の竜種。あの毒が厄介なのよねぇ」

「はい! フロッシュ選手は竜峰に住み着いてるワイバーンを、なんと! 合計500匹近く倒している経歴の持ち主です! 恐らくワイバーン討伐では彼の右に出るものはいないでしょう!」

「期待ねぇ、一体どんな戦い方をするのか楽しみだわ〜」

「他にも、Bランクのゾール選手やガトー選手などもいます! これは早速ハイレベルな戦いを目にすることができるかもしれません!」


レムテスののんびりとした声とハイテンションなトリスの声が会場に響き渡る。


「ハッ、いつもワイバーンばっかだったからよぉ、飽きてたところだったんだよなぁ」


首をゴキゴキと回しながら獰猛な笑みを浮かべる筋骨隆々な男、フロッシュ。

身長は2メートルを遥かに上回っているほどの長身。

顔には額から左目の下にかけて斜めの傷が入っており、左目は閉じられている。

ステージを見渡すその視線は、まさに獲物を狙うソレだ。

試合に出る何名かが緊張している中、フロッシュはリラックスした雰囲気を纏っていた。

その様子も相まって、他の選手に何とも言えぬ威圧がのしかかる。



「ん? なんか……まあいいか、じゃあやるとするかぁ」

「それでは、Aブロック第一回戦! 始め!!」


トリスの掛け声で、戦いの火蓋が切っておろされた。



✴︎✴︎✴︎



「オラァァァァ!!」

「がっ!?」


フロッシュが己の武器であるバトルアックスを振り下ろし、相対していた男を吹き飛ばす。


「へっ、手応えねえなぁおい」


得物を肩に担ぎ男を見下ろし、ため息をつく。


「余所見してていいのかよ! おっさん!」


それを好機と見たのか、ダガーを構えた青年━━ガトーが連撃を繰り出す。


「へぇ、中々に早えな。さすがはBランクと言ったところか」

「っ!?」


背後から放たれた攻撃を、フロッシュはその図体には似合わない俊敏な動きで体を右に、左に捻りかわしていく。


「……クソッ!」

「おいおい、おじちゃんまだ35だぜ?」

「うるさい! 自分でおじさんって言ってるじゃないか!」

「おーうおう、最近の若いもんはこんなにうるさいのか?」


ニヤニヤしながらガトーを挑発するフロッシュ。

どこか余裕じみた態度を取っているフロッシュだが、その視線はどこから攻撃が来てもいいようにステージ全体へと張り巡らされている。

周りで他の選手が戦っている中、二人の間に沈黙が流れる。


ヒュッ


突如上空からフロッシュめがけて何かが降ってきた。

フロッシュは何食わぬ顔でソレを弾き飛ばす。

金属音をあげ足下に転がり落ちたのは、クナイ。


「なんだぁ? これは」


訝しげな表情を浮かべ、クナイを手に取る。

クナイの先は何かの液体で濡れている。


「おいおい、随分とおもしろ……」


再びニヤニヤと笑いながらガトーの方を見るが、目に映った光景を見て、フロッシュは絶句した。


「がっ……はっ……」


肩をクナイで刺され、過呼吸を起こしながら地面にうずくまるガトー。

一瞬何事かと動きを止めたフロッシュだったが、不意に背後から殺気を感じ、無意識に前方へと退避した。

何かが背中を掠める。

身体を起こし、先程自分がいた場所を確認する。

何もなかったはずの場所。

そこには、全身黒ずくめの少女が立っていた。




✴︎✴︎✴︎




「何者だてめえ」


バトルアックスを握りしめ、僅かに殺気を混ぜ、押し殺した声で問う。


「何者とは失礼ですね。私は大会出場選手ですよ」

「そういうことじゃねえ! お前……さっきまではいなかったはずだ」


さっき、とは、このステージに上がり試合が始まるまで。

フロッシュはステージに上がる際、すべての選手を確認した。

その時、確かにこんな姿をした選手はいなかった。

全身黒ずくめなどという目立つ服装なら覚えているはず。


「ああ、なるほど。フロッシュさん、その時何か違和感を感じませんでした?」

「違和感……?」

「はい、そうです」

「……」


確かに違和感は感じていた。

しかしその正体が何であるかは実際のところよくわからない。


「へっ、余裕ぶってんな嬢ちゃん。大丈夫か? 他にも相手は沢山いるんだぜ」

「相手? 何言ってるんですか。いませんよ」

「はあ? 何言ってんだ……」


そこでハッと気付く。やけに周りが静かなことに。

チラリと周りを見渡す。

周りで戦っていたはずの選手たち、その誰もが全員地面に倒れ伏していた。


「なんだ……これは」

「なにって、どうしたんでしょうねえ。皆さん疲れちゃったんじゃないんですか? ふふ」


ぐるりと周囲を確認する。

何故全員倒れているのかわからなかったが、やがて一つの共通点に気づく。

全員過呼吸を起こしている。

ガトーと全く同じだ。

ということは……


「……めんどくせぇことになったな」

「そうですか? 私は強い人と戦えるから嬉しいんですが」


そう言いながらクナイをクルクルと回す少女。

恐らくクナイにかかっていた液体。

アレは恐らく毒の類だろう。

一発食らっただけで過呼吸を起こし体が動かなくなるほど強力な。


「貴方はAランクらしいですし、相当強いと思うんですよ。はぁ〜楽しみだなぁ」


戦闘狂みたいなことを言いながら笑みを浮かべる少女。

自分が気付かないうちに他の選手を全員倒す手際。

そして異様に掴みづらい気配。

何かの魔法かもしれない。


「嬢ちゃん、なかなか強いなぁ」

「あはっ! そう? ありがとう」


バトルアックスをさらに強く握りしめる。

向こうもこちらのやる気を感じたのか、浮かべていた笑みを消し、両手でクナイを構えはじめた。


「名前ぐらいは言っておこうかな。私は久坂部暮羽(くさかべくれは)。アルス聖教国の勇者」

「へえ……俺はフロッシュ。……Aランク冒険者だッ!!」


バトルアックスを構え、暮羽めがけて突進する。


「いいねぇいいねぇ! こういうのがしたかったんだよ!」


突っ込んでくるフロッシュに対し、暮羽は笑みを浮かべると、手を高速で動かし始めた。



✴︎✴︎✴︎



「おっ、始まったっぽいな」

「うん」


飲み物片手に観客席に座るのはカズマとサラ。

周りでは大会を観に来た観客で溢れかえっている。


ズドォォォォン…!!


地響きが鳴り、僅かに揺れる。

会場の方を見ると、フロッシュと呼ばれた冒険者が、バトルアックスを振り切っていた。


「……すごいな」


カズマの口からそんな言葉が漏れる。

事実、たったの一振りでフロッシュの直線状にある地面が抉れている。

並みの冒険者では出来ない芸当だろう。


(このまま行けばフロッシュってやつの勝ちかな)


そう思い、ジュースに口を付けた瞬間


ズゴォァァァァァン!!!!


凄まじい爆発音が鳴り響き、視界を土煙が覆った。


「い、いったいどうなったのでしょうか!」

「これは……すごいわねぇ〜」


トリスの驚きを含んだ声と、感心しているレムテスの声が拡声器を伝い会場全体に響き渡る。


「なんだったんだ……今の」

「わからない。けど、一瞬魔力が一箇所に急速に集まっていくのは感じたよ。ほら、あそこ」


サラが指差した方向を見る。

そこは先程までフロッシュがいた場所。


「今のはフロッシュの攻撃か?」


未だに視界を悪く、向こうの様子が分からない。

暫くすると土煙が徐々に晴れていき、ステージには全身真っ黒な人物、そしてその足下には━━━━


「っ!?」

「えっ!」


━━━━血だらけで地面に倒れ伏すフロッシュがいた。

報告が一つ。

次回の更新時に、作品タイトル名変えます。

この前改稿して主人公の天然力上げますと言いましたが、何度書き直してもそれをうまく表現出来ず、タイトルを変える、という結論に至りました。

身勝手な理由で申し訳ありません……

あまり何回もタイトルを変えるのは良くないと思うので、今回でしっかり決めたいと思います。


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