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第40話 二人目の魔神

遅くなりました、申し訳ありません!

「うーん、美味いなこれ」


カズマが今食べているものは、キャベツの様な野菜で肉を包みその上にホワイトソースのようなものがかかっている、言うなればロールキャベツだ。

ホワイトソースのクリーミーな味が、ジューシーな肉とマッチしていて強烈なインパクトを与えてくる。


「こっちのシチューも中々美味しいよ!」


サラはサイコロ肉と野菜がたっぷり入ったシチューを頬張り、顔を蕩けさせる。

食堂には何とも食欲をそそる香ばしい匂いが漂っていた。


「んむ……ん、パンとも合うな」


シチューにパンを浸し口に入れると、たちまちなめらかな味わいが広がっていく。


「うふふ、気に入ってくれたようでなによりだわ」

「むぐむぐ……人は見た目によらないとは、まさにこのことだな」

「もぐもぐ……ほんとだね」


驚くことなかれ。今机の上に並んでいる食事を作ったのは、目の前にいるオカマである。

見た目は筋骨隆々のハゲたおっさんだが、料理の腕は確かだ。現に、その料理でカズマとサラの胃袋を鷲掴みにしている。


「おっさん、まだこの肉あるか?」

「ジェシーって呼びなさい」

「いいだろべつに、おっさん早――」

「ジェシーだつってんだろうがァ……」

「ジェシーさん、おかわりください」

「いいわよ、うふふ」


皿を受け取ると、クルクルと回りながら調理場へと消えていくオカマ、もとい、ジェシー。

カズマはジェシーが居なくなるとジト目で背後を振り返る。


「……お前いつまでそうしてんの?」


そこには――


「ああッ、そんな……私はいつだってあなたの事を…………グフッ」


恍惚の表情を浮かべグヘグヘ言っているセリスがいた。

最初は驚きで固まっていたカズマだったが、五分たっても終わる気配がなかったので、そのまま放置して食事をすることにしたのである。

あれから三十分、激しさが増してきている気がする。

やれ「それなら○○○を○○○して○○○にしちゃうわぁ!」だとか、「オラオラ立てやコノ◯◯◯がぁ!!」だとか。

なんだがキャラがブレブレだ。


「……明日はどうするか」

「デートしたい!」

「そうだな、そうするか……って、はぁ!?」


一体何を言っているのだろうか、この娘は。


「ギルドで何でもしてあげるって言ったのカズマじゃん」

「ぐっ……」


プンスコプンスコ怒るサラ。

確かにカズマはサラを慰める時にそう言った。

言ってしまったものは仕方がないので


「……じゃあ、明日は街の見物だな」

「うん!」


ここの物価がどうなのかはよく分からないが、今のカズマ達の所持金は銀貨46枚

明日デートするとなるとかなりのお金が飛んでいくに違いない。宿代を抜けば大抵は足りると思うので、少しの間は大丈夫かもしれない。

だが、緊急時などの時にお金が足りなかったりすると困る。

よって明後日からはクエスト三昧。


それからしばらく、運ばれてくる食事に舌鼓を打ちながら、サラとジェシー三人で雑談に耽った。




寝るときにサラがまた全裸でくっつこうとしたので、カズマは自分の周りに強固な結界を張り巡らせ、就寝した。

その後、サラが力尽くで結界をぶち壊し抱き着いてきたのは、言わずもがな




✴︎✴︎✴︎




「準備できたかー?」

「待って待って!」


時刻は朝の九時半頃。

昨夜、サラと死闘を繰り広げたカズマの目の下には深い隈が浮かんでいる。

服装はいつものフード付き黒コート。

今日はサラと二人で街の見物だ。


五分後、サラが部屋から出てきた。

いつもの巫女服(ミニスカver.)かと思ったら、若干透け気味のシャツ(下には薄っすらと青いスポーツブラのような形をした服が見える)、ミニズボンという服装にクラスチェンジしていた。

なんというか……凄いエロい。

シャツが少し長めなので、パッと見下には何も履いていないように見える。

髪はいつものポニテではなく全部おろしていて、大人らしさが出ている……気がする。


「お前……その服装はどうした」

「え? どうしたって、私の創造魔法で……」

「いや、そうじゃなくて……なんか、その……目のやり場に困るというか……」

「??」


本人は素で気付いていないようで、可愛らしく首を傾げている。

だがやがて気付くと、その可愛らしい顔にニヤニヤと笑みを浮かべ


「えー? ほら、もっと見ていいよ?」


ズイッとカズマに近づき、体を両手で抱きしめる。

その立派なお胸様がカズマの体に当たり、ぽよんぽよんと激しい自己主張を繰り返す。

顔に熱がこもるのを感じる。

これはきっと一つのスキンシップだ。そうに違いない。

カズマは自分に言い聞かせ、努めて平静を保つ。


「……行くか」

「うん」


カズマとサラ二人は並んで喧騒が飛び交う街へと向かった。



✴︎✴︎✴︎




「へいらっしゃい!! にいちゃん達! 一本どうだい!」


通りを歩くこと数分、早速出店のおっちゃんに絡まれる。

おっちゃんの手には一本のクレープ? みたいな物が握ってある。

……普通そこは串焼きだろ。

おっさんにクレープとは似合わないが見てると食べたくなってきた。


「二本。いくらだ?」

「おう! 一本銅貨5枚!」

「銅貨10枚だな、ほら」


サッと金を払うとおっちゃんが驚いた顔をする。


「おめぇ、計算早えな!」

「ん? 別にそうでもないだろ」


カズマはただ5×2をしただけだ。小学生でもできる。

お釣りをもらい、おっちゃんに手を振って再び通りを二人で並んで歩く。

隣ではサラがニマニマしながらクレープを頬張っている。


「美味いか?」

「うん!」


カズマもパクっとクレープをかじる。

イチゴのような果物の味とクリームの甘い味がたまらない。


「……美味いな」


ここ(異世界)に来てから甘いものを食べたのは今回が初めてかもしれない。

再びクレープにかじりつく。

隣から視線を感じ、隣を見るとサラがジーッとカズマのクレープを見つめていた。


「なんだ?」

「いや、美味しそーだなーって思って」

「そうか」


それだけ言うと再びクレープ食べだすカズマ。

サラがぷくっと頬を膨らませる。カズマはそれに気がついた様子はない。


「あっカズマ! あんなところに可愛い真っ白な猫が!」

「なに!? どこだ!?」


物凄い勢いで猫を探し出すカズマ。

その隙に


パクッ


「ああっ!」

「むふふ〜」


サラがカズマのクレープを横からパクつき口をモグモグさせる。


「ぐっ、騙したなぁ〜……」

「えへへ」


カズマ達の周りには、桃色空間が出来上がっている。

もちろん、本人達は無意識だ。

だから……


「こ、このぉ……見せつけやがって……」

「なっ!? 女の子めっちゃ可愛いじゃねぇか! あのフード野郎……何者だ……」

「俺の火魔法で爆発させてやろうか……」

「おい、お前、非リア充同盟の奴ら呼んでこい」

「リア充……敵……」


などという、周りから突き刺さる男達の視線にも気付いていない。

ちなみに今カズマの脳内は


(こ、これは所謂『間接キス』というものなのか!? ど、どうしよう……)


男のくせになんとも乙女チックな事でいっぱいだ。


「……? あっ」


そんなこんなしているとサラが沢山の貼り紙が貼られている掲示板みたいなところに走っていった。


「あっ、ちょっ……待てよ」


サラは一つの貼り紙の前で止まっていた。

サラの視線をたどる……その貼り紙にはーー



〈フィルバス帝国魔剣闘会開催!!〉

◼︎フィルバス帝国の帝都、ウォースレンで魔剣闘会開催! 開催日は時雨の月14日!

◼︎予選を行い、それぞれのブロックで勝ち上がった選手が、本戦でたたかう権利を得られる!

◼︎参加者自由! 詳しくはロフェンス闘技場入り口まで!




見た感じ、まぁありきたりな内容だった。

異世界である大イベントといえば、闘技大会というイメージが高い。

ちなみに時雨の月とは数字で表すと大体七月ぐらいだ。

それぞれ


一月→凍水(とうすい)の月

二月→雪瞬(せっしゅん)の月

三月→暖燈(だんとう)の月

四月→華翔(かしょう)の月

五月→静動(せいどう)の月

六月→轟迅(ごうじん)の月

七月→時雨(しぐれ)の月

八月→風渓(ふうけい)の月

九月→鮮滝(せんろう)の月

十月→紫泉(しせん)の月

十一月→霊魂(れいこん)の月

十二月→寒厄(かんやく)の月


こんな感じだ。

なんともややこしいが、どの月の呼び方もそれ相応の理由や由来がある。

例えば五月、静動の月は何も起こらないかららしい。

毎月、魔物に村が襲われただとか、ダンジョンが現れたとか、事件が起きるのに、この月だけは毎年何も起こらない。

だが六月……轟迅の月は、とある事が活発化する。


まず一つ目は、地震だ。

一週間に何度も地震が起きては地形が変動し、沢山の家屋が倒壊したり、海に面している国は最悪、一部の地域が津波に飲み込まれたりする。


二つ目は、魔物だ。

地震による地形変動で住処がなくなったせいか、魔物達の大移動が行われる。

大量の魔物に街一つが潰されたりするのはざらで、死者が大勢出る為非常に厄介な月だと言われている。


静動の月はまさに嵐の前の静けさ、と言えるだろう。


他にも霊魂の月は死せる魂がこの世に顕現するから、だとか紫泉の月はとある場所に幻の温泉や幻獣が現れるだとか色々ある。



閑話休題



魔剣闘会などは繰り返すがありふれた大イベントだ。

カズマとサラもそれだけなら気にも留めなかっただろう。

だが一つ、どうしても無視できない事が貼り紙の一番下に書かれていた。

そう、貼り紙の一番下。そこにはーーーー



☆スペシャルゲスト!

◦ウォースレン帝国現皇帝…アドニス・アムズ・ウォースレン

◦ウォースレン帝国騎士団団長…コールス・ストレッサー

◦ウォースレン帝国魔術師団総長…レムテス・カースロ

◦魔神…メルナ



「魔神……メルナ……?」


カズマは無意識のうちにその名を口にしていた。

脳内に次々と疑問が浮かび上がる。


魔神は二人いたのか?


そもそも魔神は人間族にとって邪神のはず、それがなぜここに?


アルス聖教国は知っているのか?


知っていたとしてなぜ放置している?



考えれば考えるほど分からない。


「サラ、お前こいつ知ってるか?」

「…………」

「サラ!!」

「っ!? う、ううん。知らない」


どこか上の空なサラ。



魔神の復活


フィルバス帝国に向かう道中での襲撃


アルス聖教国の勇者召喚


そして……暫定二人目の魔神



(なんだか嫌な予感がするな……)

人の悪い予感というものは未知だと言う。

カズマはどうしても、その悪い予感が拭いきれなかった。









なんだか「天然龍神の異世界ライフ」って、タイトル詐欺な気がしてきました。

全然天然出来てませんし……。

改稿時にカズマの天然力を底上げします(バカになる訳ではありません

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