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第39話 宿屋でのあれこれ

「こちらになりまーす」

「「おお……」

そう言われて連れて来られたのは宿屋の二階にある一番奥の部屋。風呂はもちろん、洗浄式のトイレがついていて、【スレイプニルの宿】と比べると部屋も広い。今はちょっと蒸し暑い気温が続いているがこの部屋はなぜか涼しい。クーラーのようなものが設備されているのだろう。

だが一つ、問題がある。それは――――


「……なんでキングサイズが一つだけしかないんだ?」


そう、相部屋なのにベッドが一つしかないのだ。大きさはあるから二人で寝ようと思ったら寝れる。だがカズマには女性と同じベッドで寝るということはできない。カズマにそんな度胸は無いのだ。


「え? なにか問題でも?」

「いやあるだろ……なんでベッドが一つしかないんだ?」

「へ? そんなの決まってるじゃないですか。二人だけのあまいあま~い夜を楽しんでいただくためですよ?」


真顔で言い放つセリス。

まさかその為に一番奥の部屋を選んだのか……?


「んー、私は別にいいけどなぁ~」


ほけ~っとした雰囲気を放ちながらそういうのはサラ。ちらっちらっとこちらを見てくるのが気になる。


「はあ……」


半ば投げやり気味に部屋へと入り、コートをベッドに投げる。


「では、食事の時間になったら呼びますのでごゆっくり~」


そう言ってセリスは手をヒラヒラと振りながら二階に降りて行った。


「さて、どうすっかな……」

「えっと、私お風呂入りたいな」

「じゃ俺は少しベッドで横になってるかな」


カズマはベッドに横になろうとして……固まった。サラが服を脱ぎ始めたからだ。


「ちょちょちょちょっと! お前なにしてんの!?」

「ほえ? 何ってお風呂入るために服を脱いでるんだよ? あ、まさかカズマも一緒に入りたいの?」

「ちげえよ!? 脱衣所があるんだからそっちで脱げよ!!」

「えー」


渋々といった様子で脱衣所に行くサラ。

風呂場から聞こえるサラの鼻歌を聴きながら、カズマは深いため息をついてベッドに横たわった。



✴︎✴︎✴︎



コンコン 


誰かが扉を叩く音がする。セリアが呼びに来たのだろうか。

意識を覚醒させ、体を起こすために腕を動かす。


――むにゅっ


(……ん?)


――むにゅむにゅっ


(んんん??)


何故か右腕が重くそして右手になにか柔らかく温かいものが……

カズマが何気なく右側を見て


「~~っ!?!?」


声にならない悲鳴を上げ、そして身悶えた。カズマの右側、そこには――――


「んぅんん……ふみゅ…………」


――――何故か全裸すっぽんっぽん状態のサラがいた。

サラは抱き枕の要領でカズマの右腕を抱いており、腕にはその豊満な胸がのしかかっていて、形が変形しいている。

視線を下げ右手のほうをを見ると、なんと見事に股の間でガッチリとホールドされていた。

カズマは残像を残すぐらいのスピードで顔をそむけ、意識しないように窓の外を見る。

だがサラが「ん~~」と言いながら体を動かすので全く意味を成さない。その際に追い打ちでもするかのようにとてもいい香りがカズマの鼻孔をくすぐる。


(落ち着け……落ち着け俺)


必死に理性を保っていたカズマだったが、ついに理性が吹っ飛ぶ出来事が起こる。


「にゅぅ……あ、カズマおはよう」

「あ、ああ……おはよう。その……サラ、悪いが今すぐそこをどいてくれ」

「へ? なんで?」

「いろいろとヤバいから……」

「えー……」


中々抱き枕の体勢から動かない。カズマは一刻も早くこの状況から脱するため右腕を思いっきり引きぬく!

だがそれはカズマにとって悪手だった。


「ふにゃッ!?」


サラが気の抜けた声をあげ顔を赤らめる。

それを見たカズマは何かをこらえているのか、しばらくぷるぷると震えていたが……  


「……ぶはっ!!」


やがて鼻血を出してベッドから床へ転げ落ち、さらにベッドの隣にあったタンスの角で思いっきり後頭部を打ちつけた。

そのままピクリとも動かなくなる。


「カズマぁ!!」

「どうしましたか!?」


サラの悲鳴が上がった瞬間、セリスが扉をバンッと開け部屋の中に駆け込んできた。


「カズマが動かないのっ」

「大変じゃないですか!!」

「ど、どうしよう……」

「とりあえず下の食堂に連れて行きましょう! 幸い客はいないので大丈夫です!!」


不安そうなサラに対し、どこかハイテンションなセリス。

実際セリスは


(一体どこまでいったのかな? まさかお風呂行ってからのそのままゴートゥーベッド!? キャーッ!! なんて破廉恥なの!!!) 


と考えていたりする。


サラは素早く服を着ると、セリスと二人でカズマを抱え一階へと降りて行った。



✴︎✴︎✴︎



「う……」

「あ、カズマ!」


あれから数十分後、やっとカズマは意識を取り戻した。


「く……なんだか大変なことがあったようななかったような……」


少し痛む後頭部をさすりながら何かを必死に思いだそうとする。

うーん……と横になっている状態で一人百面相をするカズマ。その時、不意に頭上から震えた声がかけられる。


「ん……カズマ、くすぐったいから……」

「ん?」

「動かれるとくすぐったい……」

「何言ってるんだ?」


しばらく疑問顔のカズマだったが何かに気付いたのか、バッと上半身を起こしサラの方を見る。

サラは地面に女の子座りをしていた。

やはり「膝枕」なるものをしてくれていたらしい。


「え、えーっと、今どういう状況?」

「んと……カズマが倒れたからセリスさんと一緒に食堂に連れてきたの。そしたらセリスさんがご飯を持ってくるって言ってどこか行っちゃったから、私はカズマに膝枕をしながら待ってた」

「倒れた…………ああっ! 思い出した!」


カズマの脳裏に部屋で起こったアブナイ出来事が鮮明にフラッシュバックする。


「そう、そうだ。サラ、なんでお前は素っ裸で俺に抱きついてたんだ?」

「え? それは――――」

「はいはーい! ご飯持ってきま……って、カズマさん起きたんですね」


きわどいタイミングで現れるセリス。何故か彼女はカズマとサラを見てニヤニヤ(・・・・ )している。


「……ああ、今起きたところだ」

「そうですか! あっそうだ、お部屋の方ではどこまでいったんですか!?」

「はあ?」

「決まってるじゃないですか!! アレですよ! アレ!!」

「は、はあ……」


いきなり詰め寄られ戸惑うカズマ。セリスは夕食が乗った盆を机に置くと、突然両腕で自分の体を抱きしめ、何やら語りだした。


「艶めかしく濡れる黒い髪……頬を赤らめ潤んだ瞳で見つめてくる彼女……やがて彼はその逞しい体で彼女を優しく包み込んだ………キャーッ!! なんてロマンチックなのぉ!!!」

「えっ…………」


セリスの変貌ぶりにカズマは驚きを隠せない様子


「目が覚め、窓からは優しげな太陽の光が差し込んでいる……隣には愛しい愛しい彼。彼は形のいい眉を震わせながら目を開け、そして彼は優しい声で言った…………おはよう……キャーッ! やばすぎるわ! ああもうたまんねえな……ぐふふっ。おっといけねぇ、ジュルリ」


優しげな太陽の光とか言ってるが、今はまだ夜だ。

ヨダレを服の袖で拭うセリスを唖然とした表情で見ているカズマ。

隣のサラはさほど驚いた様子もなく服に付いた汚れを払い落していた。


「なんだこれ……」


カズマの困惑に彩られた一言は、未だ続いているセリスの一人演技にかき消された。














活動報告でも書きましたが、第三回OVLに伴い少しずつ改稿していきたいと思います。

あまりにもヒドイので……(文章とか)

もし変わったところがありましたら、後書きか活動報告のほうで報告したいと思います。

これからも拙作をよろしくお願い致します

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