第38話 オカマ再来
オカマって恐ろしいですよね…(実体験アリ
「くっうっ……玉三郎ぉぉ……」
「いい加減元気出してよカズマ……」
あれから場所は変わりギルドの酒場。
そこでは机に突っ伏しているカズマをサラが慰めるという光景が広がっていた。
実はカズマ、かなりの猫好きで地球では野良猫を5匹家の外で飼っており、近所から苦情が来るのは日常茶飯事だった。
なんでも猫こそ至高だとか
「それより早く宿とろうよ!」
「宿ぉ……?」
「うん」
サラは埒があかないと話題を変える。
「ほら、ここって帝都だから早くとらないと無くなっちゃうよ!」
「……」
無言で立ち上がるカズマ。路地裏で寝るのだけは嫌らしい。
カズマはゲッソリとした顔でギルドを出た。
ちなみに、にゃんタレスの討伐証明である牙はカズマが沈んでる間にサラがもう一匹討伐して、それをギルドに提出した。
✴︎✴︎✴︎
「どこも空いてねぇ……」
「どどどどうしよう……」
手当たり次第に宿屋をアタックしたがどこも満室。
空いているとしても貴族が泊まるような高級宿屋のみ、今の所持金(銀貨50枚)では恐らく泊まれないだろう。
野宿を覚悟しかけた時、不意に背後から少女の声がかかる。
「あの、宿屋をお探しですか?」
「ん?」
「ほえ?」
後ろを振り返るとそこにはカズマと同じくらいの年齢で髪をお下げにした可愛らしい少女が立っていた。
「あ、まぁうん。いま丁度困ってたところだ」
「そうですか! では是非うちの宿屋に来て下さい!」
「あ、ちょっ」
少女は嬉しそうに言うとカズマの手を引いて走り始めた。
「む……ちょっと待ってよぉ〜」
一瞬顔を顰めたサラだったがカズマの姿が見えなくなるとすぐさま後を追った。
「【グレート☆クリスタル】へようこそ!」
「これは……」
「うーん……」
カズマ達の目の前には『普通の』宿があった。
そう、普通。名前はこんなに派手なのに普通なのだ。一体どうグレートで何がクリスタルなのか、意味が分からない。
若干不安に思いながらもここしか宿がないので仕方なく中へと入る。
その時、カズマ達は何故か周りの人達から生温かい眼差しを向けられていた事に気付かなかった。
「うわ……普通だな」
「普通だね……」
キラキラな装飾でも付けられているのではと思っていたのだが全然違った。
名前はアレでも結構普通な宿みたいで少し安心……とその時、めっちゃキラキラしてるヤツが来た。
「あらあらうふふ、可愛いお茶目さん達ねん」
そう言いながら出てきたのは、ある意味カズマのトラウマであるオカマだった。
「うわっ!?」
大きく体を仰け反らせるカズマ。するとオカマの視線がカズマへと向き……
「あらっ! べっぴんさんじゃないのぉ〜」
とクネクネ体を動かしながらスライド移動してきた。そして
「はぁ〜いいわぁ、この腹筋背筋上腕二頭筋! そそるわね……」
オカマがカズマの体を触りまくっている間、カズマはカタカタと震えて動けなかった。
半ば意識が飛びかけた時、
「ダメダメぇ!! カズマは私の!!」
とサラがカズマがオカマの魔の手から救助した。
「あらっ、こっちの娘も中々……」
「ひぅっ!?」
「ハッ!? た、助かった……」
どうやら貞操は無事らしい。安堵して隣を見ると……
「あっ、やめっやめてよぉ、そ、そこはちがっあっ……」
サラがオカマに胸を揉みしだかれていた。
ゴクリ、喉を鳴らすカズマ。しかしこれは仕方のない事だろう。なんたって、隣で美少女が喘いで(?)いるのだから。
「ちょっとカズマぁ、見てないで助けてよぉ……」
ちょっぴり涙目のサラを見て、名残惜しく感じながらも助ける。
「ん〜、なんだかお肌にツヤが戻った感じがするわ!」
言われてみると確かにオカマの肌がツヤツヤのピカピカになっていた。一体何を吸収したのだろうか。
「……泊まりたいんだが」
ハッキリ言ってオカマが居る宿には泊まりたくない。だが他に宿はないし背に腹は変えられない。
「あら、そうだったの。 最近お客が誰も来なくなったからなんだが久しぶりねぇ〜」
言われて周りを見渡すと確かに、誰もいない。
大体今の時間帯は夕食で賑わっているぐらいなのだが、人っ子一人もいない。なんで客がいないのかはおおよそ見当がつくが。
「とりあえず一泊」
「あら、もっと泊まっていっても良いのよ?」
「……一泊」
「つれないわねぇ……一人銀貨2枚よ。部屋は個室で良いかしら?」
「そうだな、じゃあ個室で──」
「相部屋でいいよ!!」
「おい……」
とんでもない事をいいやがる、とサラをジト目で見る。
そんな事したらカズマの理性が吹っ飛ぶ……かもしれない。多分。
「別に個室でいいだろ」
「だーーめぇーー!」
「はぁ……あのなぁ」
「カズマは私の事嫌いなの?」
「うっ……」
目をウルウルさせながら上目遣いでカズマを見つめるサラ。
「……っはぁぁぁぁ、今回だけだぞ」
「うん!!」
盛大に溜息をつくカズマ。サラの上目遣いの効果は抜群のようだ。
サラは了承を得られた事が嬉しかったのか頭のアホ毛がブンブンと勢いよく回っている。
「じゃあ相部屋で」
「はいはーい、セリス、部屋まで案内してあげなさい」
「はーい、お父さん」
「「お父さん!?」」
少女のお父さん発言にものすごく驚いた様子のカズマ……とサラ。
「ん? どうかしたの?」
少女──セリスが首を傾げる
「あ、いや、何でもない。部屋まで案内してくれ」
「はーい」
何でもないとは言いつつも、オカマの方をガン見するカズマ。
(父親がオカマってどうなんだ?)
するとカズマの視線に気付いたのかオカマが頬を赤らめ、再び体をクネクネする。
カズマはサッと視線を外すとサラと少女の後について行った。




