第29話 館を出ましょう
ドラムから帰ってきて即執筆&即投稿。パトラッシュ……僕はもう疲れたよ…
第29話、どうぞ
(コイツが俺の恋人だって…?)
足下でううう…と顔をおさえ唸っているサラを見下ろす。
何てことだ…と眉間をつまむ。
一馬の残念そうな視線に気付いたのかサラが頭にクエスチョンマークを浮かべながら
「どうしたの?ご主人。私の顔に何かついてる?」
ついているとしたら鼻血が垂れている。顔を打ったときにでたのだろう。
「…………いや、なんでもない。鼻血拭けよ」
?と顔を傾げるサラだが、やがてハッとなり袖で鼻血を拭く。
「…とりあえずここを出ないとな」
ゴシゴシと一生懸命拭いているサラを横目に出口らしきものがないかあたりを見渡す。
だがあるのはただの壁。扉1つ見当たらない。
どうしたものか…と一馬が顎に手をあて考えていると
「ここから出て行くんだったら私に任せるんだよ!」
サラがドン!と胸をはってそんなことを言い始めた。
訝しげな視線をサラに向ける一馬。
「むぅ、ご主人私のこと信じてないでしょ」
プクーっと顔を膨らませそっぽをむく。
「なぁ、そのご主人ってのをやめてくれないか?」
先程からご主人、ご主人と言ってくるサラだが、なんだかムズムズする。
「……ご主人の名前まだ聞いてないんだよ」
そういえば言ってなかったと今更思い出す一馬
「俺の名前はカズマだ」
面倒くさいので名前以外は言わない。
カズマ、カズマ…と口で繰り返すサラ。次第にニヤニヤし始める。
「えへへぇ、カズマ、カズマかぁ。うふふ」
名前を連呼されるとなんだか恥ずかしい気持ちになってくる。なんせ相手は見た目だけは美少女なのだ。恥ずかしくならない筈がない。
「もういいだろ、お前出口がどこにあんのか知っtーーーー」
「ーーーーカズマ、私のこともサラって呼んでよ」
はぁ?と言い返す一馬。
「だって私の名前さっきから呼んでくれないから………ダメ?」
目をうるうるさせながら上目遣いで言ってくるサラ。
クッ、殺人兵器並だぞ。こいつの上目遣い…っ。
「はぁ…。サラ、出口を知ってるのか?」
パァァとアホ毛をピコピコ動かせながら顔を輝かせる。
「うん!うん!知ってるよ!!」
サラは棺があった場所とは向かい側の壁に向かうと、壁に手をつきながらボソボソと何かを口ずさむ。すると、壁だった場所が扉へと変化した。
「お前…一体どうやったんだ…?」
一馬は不思議に思いながらサラに尋ねる。
サラは何てことない、というような顔をしながら
「んー?コレは私の『創造魔法』なんだよ」
創造魔法?と一瞬首を傾げる一馬だが、先程見たサラのステータスにそんな名前が書かれてあったのを思い出し、納得する。
扉をくぐると、そこには小部屋がたくさんあり、レッドカーペットが敷かれた通路も前方、右方向、左方向の3つあり、どちらに行けばいいのか一馬に皆目見当がつかない。
「おい、ここからどっちに行けば外に出られるんだ?」
大丈夫なんだろうな…と一馬。
「だ、大丈夫なんだよ!ここは私の家だからね!」
慌てた様に言い返すサラ。
「え〜と、コッチ…かな?いや、コッチだったかなぁ……」
右を指差したり前を指差したりと実に怪しい。
「サラ、お前もしかして忘れたりしt」
「ああああ!!思い出した!思い出したんだよ!!」
一馬の言葉を遮り、サラは左方向を指差し、ピョピョンとポニーテールを揺らしながら跳ぶ。
ちょっと不安だが一馬はこの場所を全く知らない。それだったら自分の家だと主張するサラについていった方がいいだろう。
「分かった。コッチだな?じゃあ行くぞ」
スタスタと左方向に向かう一馬。
「あっ、ま、待ってよぉ〜カズマぁ」
ステテテと走ってくるサラだが、何もないところで再びコケる。
「はむゅぅっ!?」
はぁ…と一馬は溜息をつき、天を仰いだ。
数十分後………
「なぁ、いつになったら外に出られるんだ?」
隣を歩くサラに質問する。
サラは額に冷や汗を流しながら
「あれぇー?おかしいなぁ。コッチだと思ったんだけど…」
うーん、と首を捻る。
更に数分経つとやがて目の前に立派な壁が。
「………………壁だな」
「………………壁だね」
しばらく沈黙する2人。
一馬は隣に居るサラを見下ろす。身長的には一馬がサラより頭1つ分大きい。
一馬は手をワナワナさせながら
「や…………すれ………か………」
「ん?何?一馬」
サラが唇に指を当てながら首を傾げる。
普通のシチュエーションならば可愛いのだが、今の一馬には逆効果だ。
「やっぱり忘れてんじゃねぇかぁぁぁぁぁ!!!」
一馬の頭グリグリがサラに炸裂する。
サラの頭からミシミシと聞こえてはいけない音が。
「ふにゃぁぁぁぁ!!ゴメン!ゴメンなんだよぉ〜〜〜!!」
「許すかぁぁぁぁ!!!」
館にサラの悲痛の叫びが鳴り響いた。
うむむ、この残念メインヒロインには名誉挽回の晴れ舞台が必要だと思う今日この頃。
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