第22話 ガルズの不安
第22話どうぞ
一馬はドラゴンゾンビを倒した後、周りの魔物斬り伏せていった。
他の冒険者の奮闘もあり徐々に数を減らしていく。
しばらくすると魔物達が後退していった。
「なんとか撃退できた…てな感じだな」
周りを見ると、冒険者達が疲労困憊な様子で地面にへたり込んでいた。
大量の魔物の死体の中には冒険者の姿もちらほら。
一馬は取り敢えずリリアのいる場所に戻る。
一馬の姿を見たリリアが猛スピードで駆けつけてきて
「カズマ!!大丈夫なの!?」
体をペタペタと触りながら尋ねてくる。
「問題ない。ちょっとドラゴンゾンビの匂いが離れないが」
顔をしかめる。
「はぁぁぁ、よかったぁぁ」
心配してくれていたのか、地面にへたり込む。
するとそこに指揮官の女性が来る。
「ありがとう、君のお陰で魔物を撃退することができた」
指揮官の女性はそう言いながら頭を下げてきた。
「別にいい俺のお陰じゃない。皆が頑張ったからこその結果だろ」
女性はポカンとするが、
「アッハッハッハ!いやぁそうだね。君の言う通りだ」
大笑いするがすぐに真面目な顔になりこちらを見つめてくる。
「ところでキミ、カズマ君だったかな?君は一体何者なんだ?」
ピクッと反応する一馬だが、無表情を作り
「俺は普通の人間だ」
とあらかじめ考えてた嘘(笑)をつく。
しばらくジーッと見てくるが、溜息をつきながら、
「教えてはくれなさそうだ。まぁ君があのドラゴンゾンビを倒したお陰でこちらも一気に攻め立てることができた。ありがとう」
再度頭を下げてくる。
一馬は手を振りガルズのところに行こうとするが、名前を聞いていなかったので聞く。
「ところでお前の名前は?」
女性はああ、というと
「私は冒険者ギルドミルド支部ギルドマスターのシアルだ」
(ギルドマスターだったのか…)
一馬はどこか納得しながら
「じゃあ、シアル。これからよろしく」
手を差し出す。
「ほう、これからもここで活動するつもりなのか?それは頼もしい」
指揮官の女性改めシアルはニヤリ、と笑い手を握り返した。
ガルズのところについた一馬はそこにいる治癒師に容態を聞く。
「ガルズは?」
治癒師はカルテの様なものに何かを書き込みながら
「ガルズさんでしたらあちらのベッドでお休みになられてます」
左奥を指差し教えてくれた
「ありがとう」
ベッドに近づきカーテンを開ける。
そこには脇腹に大量の包帯を巻いたガルズが渋い顔をしていた。
「お?カズマか」
すぐに笑顔を浮かべ迎える。
「大丈夫か?かなりキツそうだったが」
カズマがそう尋ねるとまた渋い顔を浮かべ
「すまねぇな…Sランクなのに情けねぇぜ」
落ち込むガルズ。いい機会だ、と思った一馬は
「そういえば前から聞こうと思ってたんだが、ガルズ達はどういう経緯でSランクになったんだ?」
ガルズは遠い顔をして
「経緯…か…、別にこれといった経緯はないんだがな。コツコツ頑張った、それだけだ」
ぶっきらぼうに答えるガルズ、聞いてはいけない事を聞いたのかもしれない。
「まあ、Sランクになったのもほとんどリリアのお陰だしな」
何故そこでリリアが?と疑問に思う。
「リリアはなぁ、魔法も凄いがそれ以上に頭が良いんだ。そりゃもう宮廷魔法師並みにな」
宮廷魔法師がどの様なものかは知らないが恐らくエリートなのだろう。
「なんどあいつに助けられた事か……そして、今回もまた助けられた!そんな自分が不甲斐ねぇ…」
拳を固く握り悔しそうに声を漏らす。
何を言えば良いのか分からず無言になる一馬。
「ドラゴンゾンビお前が倒したんだってな?ホントにお前って謎だよな。ははっ」
自嘲的な笑いを浮かべるガルズ。
「一体どうしたんだよ、ガルズ。お前らしくないぞ」
ガルズはブルリ、と震えると
「俺なぁ、リリアから見限られるんじゃないかって不安なんだよ…」
「……………………は?」
ちょっと言ってる意味がわかんないかも、と混乱する。
「だから、見捨てられるんじゃないかって不安なんだよ。何度も言わせんな、恥ずかしい」
頬を赤くしそっぽを向くガルズ。
誰得だよ…と思いながらも、笑いが込み上げてくる。
「ぷっ……ククッ………」
まさかそんな言葉が出てくるとは思わず笑いを堪えるが声が漏れる。
「プッ、そうか……お前はリリアが好きなのかぁ」
ニヤニヤしながらガルズをおちょくる一馬。
「だったらなんだってんだよ!」
ガルズは顔を背ける。
ここで一馬のお節介が炸裂する。
「だったら今ここにリリアを呼ぼうか?よし、そうしよう」
席を立ちリリアを呼ぶべく外に出ようとする。
ガルズは慌ててそれを止め
「いい!!いいって!お前は黙ってろ!」
一馬は渋々席に座る。
「いやぁ、凄いシリアスな雰囲気だったから何か重い話が来ると思ってたんだが……拍子抜けだ」
身構えていた此方がバカに思えてくる。
一馬はしばらく無言になるが、またもニヤニヤし
「やっぱり呼んでくるか」
それを聞いたガルズが慌てて止める。
一馬は実はSなのかもしれない。
しばらくの間ガルズの病室からは、激戦を繰り広げた後には見合わない賑やかな声が響いていた。
これからは1日1話更新となりますが、それに見合う内容・文字数をお届けできる様頑張ります!
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