腹が減っても戦は待ってはくれぬ。
斑はビニール袋の中からカロリーメイトをとりだし、自分の牙と爪で箱をビリビリ破き始めた。
今日は2つ食べてあとの2つは非常食として置いておこう
鼻歌でも歌いだしそうなほど斑は機嫌がよかった。
牙と爪によって、無残な姿になった箱からカロリーメイトを一つとりだした時、斑は何か違和感を感じた。
野良猫である斑の野生の感が、何かがいつもと違う、可笑しいと告げている。
なんでもない些細なことかもしれない、気のせいかもしれない、だが斑は頭で考えるよりも時として経験によって培った感のほうが頼りになることを知っていた。
さっきまでの浮かれようが嘘のようになりを潜め、猫独特のつり上がった瞳を細めると辺りを注意深く観察する。
(まさか保健所の奴らが嗅ぎ付けてきやがったか?)
野良猫である斑にとって、天敵と呼べる存在である。
斑の住むこの町には野良猫が多く、たびたび保健所の人間VS野良猫たちによる熱い戦いが繰り広げられていた。
以前エサに釣られて奴らの車に乗り込んでしまった猫がいたが帰って来た奴は一匹もいなかった。
逃げようとした野良猫は網で捕まえられた。
どこに連れていかれるのかも、何をされるのかも斑は知らない。
だが野良しか捕まえようとしないのと、飼い主がいる三毛猫のリンコが間違って連れて行かれそうになった時、リンコの飼い主が血相変えて取り返しにいった所を見るとどうやら良いところではなさそうだ。




