吾が輩はなんとも面妖な大きな木に出会った。
そこは長い坂の上にあった。
坂といっても、人が通るために作られたような道ではない。
背丈の高い草木がうっそうと生い茂り、ときおり吹く風にお互いの頭をぶつけあいざわざわと唸っていた。
夕闇に沈む空が草木を染め上げ、怪しくうごめく。
まるでこの先には行かせない、とでも言うかのように。
そんななかを斑はビニール袋と草の擦れる音をがさがさと響かせながら迷いなく歩いて行く。
斑が歩いてきた地面の草が倒れ、一本の小さく細い道が切り開かれていた。
しばらく歩くとあんなにも行く手を阻むかのように生い茂っていた草木が姿を消し、かわりに道の真ん中に大きな木を見つけた。
木と言ってもその木には青々と茂る葉も、しなやかに伸びる枝もなく、幹しか存在していない。まるで、
まるで、食いちぎられたようだと、斑は思った。
その幹の太さと地面に力強く根を張る姿から元はとても大きな大木だったのだろう。
その木の周りの地面は黒く、焼き払われたかのように草一本、生えていない。
この異様な空間を、斑は目的の神社を見つけるための目印にしていた。
この木も、地面も、斑が見つけた1年ほど前から今の今まで何も変わっていないからだ。
木は枯れることもせず、地は新しい命を咲かそうともしない。
この食いちぎられた木が生き長らえるために、地面から栄養を根こそぎ吸いとってしまっているからいつまでもこの木は枯れないし、地面には草一本も生えないんじゃないかと斑は思った。
(‥‥どうでもいいか、そんなことは‥‥──。)
自分の思考を自己完結させ、いつのまにかうつむいていた顔をあげる。
がさっと揺れたビニール袋のなかの獲物の存在に自分の目的を思い出す。




