得意技は猫パンチである。
この黒い豆が甘いなんて、よく気づいたものだと斑はこの時ばかりは人間に感心していた。
口に残る豆の皮の感触はあまり好きではなかったが、しっとりと舌に広がる甘さと、柔らかくフワフワとしたパンが合わさって何とも言えない。
「うまいかー?斑」
「ニャア」
(まあまあだな)
パンを口いっぱいに頬張りながら答える。
「そうか、うまいか!良かった良かった!」
「ニャー」
(まあまあだって言ってんだろバカめ)
「そのアンパン本当はちょっと遅い、おじさんの昼飯だったんだぞー。全部持って行きやがってこの野郎」
「ニャアァ?」
(オレ猫だから何言ってるかわかんねぇ)
上から降ってきた溜息と恨みがましい目を無視して、舌でペロリと口の周りについたパンクズと黒い豆を舐めとる。
「あんこが好きなのか?変な猫だなあお前は」
こしあん派?つぶあん派?とおっさんが尋ねてきたが言葉の意味がよくわからなかったので無視した。
「そういえば昔、お前を飼おうかって嫁さんと話してたことがあるんだ」
(そうか、そりゃあ傍迷惑な話だ)
「息子が猫好きでなあ、」
(オレは人間のガキは嫌いだ)
「アメリカンショートヘアを飼いたいって駄々こねてたんだが、そんな血統書付の高い猫なんて買えるわけないだろ?その点お前は野良だか「フシャアアァァ!!」」
獲物を狩る時のように、体勢を低くし後ろ足から前足へと力を込めた四本の足で地面を蹴りあげる。
勢いを殺さず、狙いを外さず、斑はおっさんの眉間に渾身の猫パンチを叩き込んだ。




