種族は違えど子供は子供であった。
「不愉快。寝る」
そういうと少年は床に寝転がると自分の腕を枕にして宣言通り、本当にそのまま数分とかからずに寝入ってしまった。
今度は斑か眉をひそめる番だった。
「・・・・・・。」
(何故、ここで寝る・・・。)
何故、帰らない?人間ってやつはみんな自分の縄張りを持ってるものだろう。
たまに縄張りを追われて公園などで寝ているものを見かけるが、そういう奴らは総じて死体みたいな目をした年老いた人間である。戦いに負け、縄張りも何もかも全てを失った者の成れの果てに斑は見えた。
だからこそ不思議だった。
この目の前の若い人間は腕こそ傷だらけだが目は死んでいなかったし、この神社の社に不法侵入する図々しい態度と生意気な口調は戦いに負け、全てを失った者とは到底思えない。人間の子が独り立ちするにもまだ早いだろう。
──ならば・・・。
あまり広くない社の中をぐるりと見回すと案の定、少年の物とおぼしき大きな黒い鞄が隅っこにぽつんと置かれていた。
「ニャア」
(やっぱり家出か、このガキ)
この年頃のガキのやることは猫も人も変わんねぇものだな。バカバカしい、と溜め息をつくと斑は社の中から外に出て、元いた賽銭箱の上に寝転んだ。
すると急に睡魔が襲ってきて斑のまぶたが重くなる。
このぶんじゃメシは明日の朝だな、と賽銭箱の下に隠したカロリーメイトチーズ味のことを思いながら抗いがたいほどの眠気に負け、斑は少年同様、数分もかからずに深い眠りについた。
そのため1人と1匹は気づかなかった。
何時の間にか辺りが、風の音はおろか、虫や鳥の声一つしない痛いまでの静寂に包まれていたことに・・・。
夜が更ける。
月だけが優しく、1人と1匹を見守っていた。




