我が輩は怒りを覚えた。
その服には見覚えがあった。
つい最近、いや、今日の朝だ。朝に会ったバカな会話をしていた2人組と同じ服だ。
確かこの服を着てる人間をチューガクセーと言うガキのチームだとリンコが言っていた。
保健所の人間じゃあないようだ。
(だからと言ってこんな夜遅くにガキが1人で何やってんだ?しかもこんな場所で)
敵ではないことはわかったが不信感は拭えない。
だがあまりにも傷だらけの白い手にまた傷を増やしてしまったことに少なからず罪悪感を覚え、そっと食い込ませていた牙を外し、血が溢れる傷口を舌でペロリと舐めた。
「ニャア」
(悪かったよ)
血はまだ止まっていなかったが血がでていないほうの手がズボンのポケットを探ると、古びた水色のハンカチを取り出し、傷口に巻きつけた。
「ンニャアーニャア」
(おいおい、キタネー布だなぁ。バイ菌はいるぞ)
水色のハンカチのはじっこに、お世辞でも上手いとは言いづらい刺繍が施されているのを見つけた。
──“イオリ“か‥‥。
「ニャアー」
(お前の名前か?)
あまりにも印象的すぎて、手しか見てなかったことに気づき顔を上げ、相手の顔を仰ぎみた。
「ニャッ゛」
その瞬間、白い手に首根っこを捕まれ持ち上げられた。
(クソガキ、テメェいい度胸だなぁ‥。
その手に空いた穴だけじゃ足りねぇのか?ああ゛?)
無遠慮にこちらを見つめる視線を捕らえると睨みつけ、先ほどまでその手の肉を食いちぎろうとしていた己の牙を見せつけるように威嚇した。
しかしそれをものともせず、斑の全身を食い入るように視てくるので基より首根っこを掴んで持ち上げられ、点火した斑の怒りの炎に更に油が注がれた。




