爪と牙は常に磨いておかねばならぬ。
甘えたような鳴き声をわざと響かせ、賽銭箱の上から飛び降りた。間違っても背後をとられぬよう賽銭箱を背にして。
久しぶりの狩りに高揚感を覚え、無意識のうちに身体は戦闘体制にはいる。
長く赤い舌で自分の武器である牙を歯列を確かめるように舐めた。
ざぁっと風が吹きぬけ草木が靡く。
ちょうど雲によって隠れていた月が姿を見せ、すっかり暗くなっていた辺りを照らす。
(いい夜だ、月がまた雲に隠されてしまうまえに片をつけよう)
暗かろうが明るかろうが斑にとってさほど問題はない。だが獲物にとっては違う。
弧を描いた口元が更に割れんばかりにつり上がる。
「二ャア、二ャー」
(さあ、狩りの時間だ。)
斑が行動を始めようとしたその時、
──ガタガタガタッ
背後からの突然の物音に斑は反射的に振り返る。
その音は斑が立っていた賽銭箱の後ろにある錠のついた小さな社から聞こえていた。
錠がついていてここの中には誰も入れない、誰もいないと思い込んでいた斑のミスである。
体格的にも数的にも不利な状況で後手を取らされてはたまらない。単純で初歩的なミスが命取りになる。
相手の思考を読み、先手を繰り出していくことが求められるなかで今回の斑は確実に後手に回された。
(ちくしょう、社の中に既にいるってのか!?
罰当たりなヤローだ!!そもそもどうやってはいったんだ!?)




