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斑な猫は夏が嫌い
まだこの世の中のことを何一つとして知らず、名もなく、何者でもなかったあの頃は目に映る全てが複雑怪奇で面白おかしかったのを覚えている。
毎日が新しい発見と喜びに満ちていた。だが時には世の中の理不尽や残酷さに押しつぶされそうになった。怒り、涙し、世の中は美しいものだけで出来てはいないのだと知り、戦うことを覚えた。
生きることが冒険だった。
そんな怒涛の日々が過ぎ去ってしまえば、世界は思っていたより単純であると気付く。
空は青くて
「昨日うちのばあちゃんに聞いたんだけどさ、この町で昔、神隠しにあって消えた子供がいたらしいぞ」
「知ってるよ、僕も昔やられたことあるし」
「それ本当かっ!?」
雲は白い。
「うん。あれは洒落にならないよねー、トイレで紙隠されるとか死活問題でしょ」
「それはただの嫌がらせだ!お前分かってて態と言ってるだろ!!」
人間はバカで
「見ろよ、“斑“だって呆れてるじゃねーか!!」
「いや、『こりゃ一本盗られたぜ旦那!』って思ってる顔だ「んなわけねーだろ!!」」
マヌケだ。
「ニャー」
(つまらねぇんだよ)




