神様の悪戯すぎる
私には前世の記憶がある。
幼い頃に親にそう言ったが信じてもらえなかった。
そりゃそうだ、いきなり自分の娘が「私前世の記憶がある」なんて言っても世迷言かそれこそ妄想だと思われるに決まってる。
「紘希兄、重いんだけど……」
歯磨きをするために洗面所に立っている私にのしかかるように身を預けてくる三男の紘希兄にそう主張すれば
「俺は重くないよ」
当たり前だろ、お前は乗っかってるだけなんだから。
ハァ……と重いため息をついて私は歯磨きを再開する。
歯磨きをして制服に身を包み最後に鏡の前でチェックする
前世で私がきた制服と一緒の制服。
だが違うことは環境だけではなく私が死んだ歳よりも年上だということ
あの時は一回しか着ることができなかった制服ももうすでに何回も来ている
私は今日から中学校2年生になる。
「夏希!!あとはお前だけだからな!!」
「うるせぇよ」
「…夏希」
「ッチ」
朝から何か騒がしいと思えば、リビングでは今年から高校1年生になる紘希兄と悠希兄が夏希兄になんか頼んでいた?
その様子を晴希兄はニコニコと笑いながら見て、俊希兄はヤレヤレと言わんばかりにため息をついていた。
「何してるの?」
私の疑問に答えてくれたのは晴希兄で
「咲良に変な虫が寄り付かないように見てねってみんなで夏希にお願いしてるんだよ」
……なぜ?
さわやかな笑顔でそう言われても私は返す言葉がなかった。
「そんなこと言ってるよりも学校に遅刻するよ」
「遅刻よりも大事なことだからしっかりしてもらわないとな」
何が遅刻よりも大切なことだ。そんな重々しい空気出す必要ないじゃんか
私はハァと今日何度目かのため息をついた。
「もう先に行くね」
なんかもう疲れた。
結局先に行こうとしたら兄達は我先にと玄関から出てきた。
今度からはこうしようと心に決め、私は半ば付いてくる兄達を無視するように学校に向かった。
うちの中学は小学校から高校までがすごく近い距離にある。
大学は少し離れたところにあるが、チャリでも十分はかからない距離だ。
だから、中学校受験も近いという便利で隣の高校を選ぶことが多い。
晴希兄や俊希兄はこの私の学校の隣の高校に通っている。そして明日の入学式で紘希兄と悠希兄もここの生徒になる
フェンス超えたらお隣は高校だ。
ちなみに小学校は道をはさんで向かい側
この学校に通うと知った時には流石に神様の悪戯すぎるとか思ってしまったが、それを上回るほど学校生活は充実していて楽しかった。
「咲良ー!!今年も同じクラスだったよ!!」
「やったー!!」
クラス表を見に行こうとすると途中小学校から友達の里愛に会った私はその場で里愛と手を取った。
「今年もよろしくね」
「うん」
二人で始業式が始まる体育館に向かう途中に今朝の出来事を話す。
里愛は苦笑いだ。
「いつも思うけどすごいよねー」
「うん…ホントもう……」
「カッコイイだけまだマシだよ」
そういわれても残念すぎる
始業式が始まり校長先生の長い話が終わり、ようやく終わったーとあくびを一つする
「では、今学期から入った新任の先生を……」
そう言えば保健室の先生が赤ちゃん産むって言ってたのを思い出す。
良くしてもらってたからいなくなる時はショックだった。
一体どんな先生が来るのかなと思っていたら壇上に上がってきたのは……
長くてサラサラとした髪を一つにくくっており、
スラリとした体に
「皆さん始めまして、新人ですので至らない点も多いと思いますがどうぞよろしくお願いします」
そう言って笑った笑顔は花が咲いたようで、
私は目を見開いた。
「本日から本校に勤務される戸田恵美香先生は―…」
校長が紹介をしているが耳に入らない。
確かに大人だが、私が見間違える訳が無い、
壇上に居たのは紛れもない前世の私の妹の“恵美香”だった。
容量オーバーになってしまった私は一瞬で意識を手放してしまった。
ここまで読んでいただいてありがとうございました(*´ω`*)