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これがキョウダイ?

「恵美香は可愛いね」


それが親の口癖だった。

3歳下の妹の恵美香は確かに笑えばまるで花が咲いたような笑顔だし、

平均よりも少し小さい身長に人懐っこい性格

そしてなによりも二人姉妹の末の妹という点も大きく含まれているであろう。

「おねえちゃん、見て!!可愛いお花があったよ」

「本当だ、綺麗だね。恵美香よく見つけたね~」

そう言って笑う妹を可愛がりながらもどこかで恨んでいた私はきっと惨めだっただろう

おねえちゃんと言う単語に縛られて私は様々な事を我慢した。

小さい妹のためにお菓子を譲ってあげたり、おねえちゃんだからという理由だけで様々なことを我慢した。

可愛がられる妹を横目に育った私は中学生になった。

入学式には本当は両親と車で一緒に行くはずだった。

なのに当日、妹が38.7という高熱を出した。当然両親は慌てて妹を病院に連れて行こうとした。

朝からやってる病院を二人で大急ぎで探している様子を見ながら私は真新しい中学の制服に身を包んだ。

新しい制服のネクタイがうまく結べなかった。

お母さんに聞こうとしたけどお母さんは恵美香のそばにずっと居て甲斐甲斐しく看病していた。

私は諦めてお父さんに聞こうと思ってお父さんの方に行くと、お父さんは朝からやってる病院を必死に探していた。

昨日お父さんは、私の主役の日だと言ってくれたのに


一瞬で妹の主役になってしまった。

リビングのソファに一人で座っていたら申し訳なさそうにお母さんがやってきた。

「ごめんね、恵美香をどうしても病院に連れて行かないといけなくなったから…」

「うん、大丈夫。中学校の場所一人でもわかるから」

申し訳なさそうにする両親に私は行ってきますと告げて入学式に向かった。

中学校に近づくにつれ制服や正装に身を包んだ家族連れの親子が楽しそうにしているのを横目に、しょうがないとつぶやきながら私は考えた。

もし、自分が末っ子だったらとか、妹だったらこんな風な思いをしなかったのではないだろうかと。

そう思いながら横断歩道を渡る。

その時道の向こうに居た子供がこっちを見て青ざめている。

何を驚いているんだろうかと私が思った瞬間体がすっごく痛くなった。


血がドクドクと流れていくのが分かる。体に力が入らない。

道路のど真ん中で寝っ転がることって多分もうないだろうな。

そんなのんきなことを考えながら私は目を閉じた。


親は私よりも妹を選んだんだ。


もし、神様に一つ願い事が言えるとしたら今度は末っ子として生まれたいな。

それで家族に甘えて、可愛がられて、今よりも長生きしたいなって願いながら私は意識を手放した。


4月9日9時37分


私がこの世を去った日



―――……

―――…


「起きろー、咲良」

「んぅ……」

瞼が重い……。

「起ーきーろー」

誰だろう…

私がゆっくりと目を開けるとそこには男が居た。

「へぇ!?」

私は勢いよく起き上がり男を見る。男は私よりも年上な感じで少し髪の毛がふわふわとはねていて何よりもカッコよかった……顔が。

「あの、どちら様でしょうか?」

そう言って首を傾げると男の人は私に抱きついてきた。

「うぇ!?」

「酷いよー!!咲良俺のことを忘れるなんてー!!」

横暴だー!!とか神様は俺のことを見捨てたのかー!!とか言う男の人。

ちょっとずつ意識が遠のいてきたかもしれない。

「紘希いい加減にしろ!!」

どこからか聞こえてきた声の後に剥がされた男の人

私は酸素を思いっきり吸い込みながら声のした方を向く。

した方を向くとメガネをしたなんというか賢い感じの人。

この人も顔が整っていた。

「だってー、咲良が俺のこと忘れるなんて」

「咲良だって寝ぼけてるんだよ」

な、咲良。そうイケメンに微笑みながら言われても私はなんとも言えない。

だんだんと覚醒してきた脳みそで私は考えた。だんだんと落ち着いた頭で思い出した。

私は神に願いながら来世は妹になりたいと考えながら生涯を終えた。

そして生まれ変わった私は見事神様に願いが通じ、見事末っ子の妹に産まれた。

抱きついてきた兄は紘希兄、メガネをかけた兄は悠希兄二人は一卵性双生児の双子。私の2つ年上ののお兄ちゃんで、

「早くしないとご飯が覚めるって俊希兄さんに怒られるよ」

そう言って悠希兄は私のつむじに軽くキスを落とした。

「うん、今行く……」


一階に降りれば美味しそうなごはんに味噌汁たちが湯気を立てて迎えてくれた。

「おはよう、咲良」

「おはよう、晴希兄」

朝から新聞を読みながら優雅にコーヒーを飲む長男の晴希兄に挨拶をして私は晴希兄の横にある自分の席に座る。

晴希兄は長男で私の4つ上の高校3年生のお兄ちゃんで近所でも好青年として有名だ。

スラリとした長身に加えて物腰やわらかな雰囲気はまさに王子様とも言えるだろう。

「咲良、寝癖が付いてるぞ」

そう言って晴希兄は私のはねてる髪を触る。

「咲良の髪はサラサラしてて綺麗だな」

そして髪に軽くキスを落とされた。これは寝癖が治った合図だ。私がやれやれとため息をつくと

「咲良起きてばっかりで悪いが夏希を起こしてきてくれないか?」

キッチンからまるで新妻がつけるようなフリフリのエプロンをして出てきた3つ年上の俊希兄。

仕事で中々家に帰らない両親の代わりのような存在だ。

少し吊り上がった目と晴希兄よりもがっしりとした体格で硬派なイメージが漂うが至って普通の主婦だ。だけど俊希兄に主婦と言うと目くじらをたてて睨まれてしまうので我が家の禁句なのだ。

「うん、分かった」

「頼むぞ」

そう言って俊希兄は私の頭を撫でた


「夏希兄―?朝だよー?」

夏希と書かれた部屋に行けば布団が盛り上がっているのを発見する。

「ん……」

「朝だってばー」

そう言って私は部屋のカーテンを開け、布団のそばに行く。

「おきてー」

「うるさい……」

そう言って腕を引っ張られた私はいとも簡単に布団に引きずり込まれた。

「起きてってばー」

「別にいい……」

別にいいなんて誰も言ってませんけど……。

夏希兄は私の1つ上のお兄ちゃんで低血圧なんだけども常時低血圧気味の為、よく怒ってる?って聞かれるらしい。

まぁ、怒ってるようにも見えなくもない。

はぁ…と深い溜息を着くと首筋の方に夏希兄が顔をうずめてきた。

髪の毛が当たってくすぐったい。

「夏希兄、くすぐったいよ」

「んー、」

いや、まじで、くすぐったいんですけど

「夏希兄!!」

そう言えば夏希兄は渋々起き上がった。

「朝ごはんで来てるからね」

そう半ば投げやりのように言うと夏希兄は私に頷いてくれたので私は部屋を出た。


私は前世の願い事を叶えてくれたが神様は面倒なことに

超がつくドシスコンの兄を神様は五人もつけてくれたらしい

私はため息を一つこぼして朝食を食べに食堂に向かった。




ここまで読んでいただいてありがとうございました!!


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