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そして私は今日もドラゴンの心臓を齧る  作者: ヨハン@小熊
ep1:そして私は始まりの心臓を齧る
5/50

心臓を齧れば血が吹き出る

気が付いたら、知らない部屋にいた。

5,6畳ぐらいだろうか?RPGの宿屋のような簡素な部屋は

いくつかの家具がおいてある質素でがらんとした生活感のない所だ。

頬を髪がさらりと撫でる。その色が現実の自分のものではない真っ黒なのにびくっと驚いてしまう。自分のものはどう見てもこげ茶のはず。

と、いうことはとある種の確信を得つつもメニューを呼ぶ事を考えた。

予想通りメニューが出てきた。勿論ログアウトボタンはない。

固いベッドの上少し茫然とした。

状況を整理してみる。

どらおんをしていた→第三ダンジョンのボス倒した→レアアイテムげっと

→心臓食べた→何故かログアウトできない→人里探し→レアエネミーに襲われている人発見→レアエネミー討伐、気絶→知らない天井だ←今ココ

なるほど、わからない。

まさか夢じゃなかったのか。どういうことなんだ。

「・・・おなかすいた。」

相変わらずお腹がすいていた。

だが、倒れる直前私が見たものが本当だったら、あの時までの私と今の私には決定的な違いがある。

そう、フェアリードラゴンの心臓が!

この心臓の初期捕食特典はアバターアイテム『天使』シリーズの獲得だ。

一式揃えればかなりメルヘンなことになる。

ちなみに全部揃えたあとだと食後24時間魔法攻撃力上昇という妥当で私にはあまり使えない効果がある。

しかし、今は使える使えないとか関係ない。

そこに心臓しょくりょうがあるから食べる。これにつきる。

「いただきまーす。」

心臓を具現化して、齧り付く。と、返り血が服に、布団にはねた。

べったりとした感触にしばし呆然とする。

ゲームでは返り血とか出なかった。しかし今自分にかかったものはなんなのか?しかし齧り付いて飲み込んだ肉片によって更に飢えが刺激される。

50㎝のドラゴンらしい小さな心臓だが、それでも腹の足しにはなる。

ゲームと違って味がある。間食はレバーみたいな。味は意外とあっさりしている。血は思っていたより甘い。生臭いのと返り血を除けばかなりいい食糧ではなかろうか?

ふぅ、と平らげてからはたと気づく。

すごく大惨事なことになっている。手も、口の周りも、服も布団も血まみれだ。べっとりしている。

ゲームではおきなかった惨事にどうしようか悩んで、ふと妙案を思いつく。

聖魔法には、『洗浄』という魔法がある。

アイテムの『薄汚れた~』や『汚れた~』を綺麗にする魔法なのだが

「『浄化』」

唱えれば、すぅっと消えていく血。

なんて便利なんだろう。詠唱必要ないし。

そして、ふと思った。こうやって気絶して起きた。

これってやはり夢じゃないんだろうか。そんな気はしていたが。

しかしそれじゃあ今の状況はどういうことなのだろうか。

異世界トリップ?

どこまでゲームと違うんだろう?

というか誰か説明してくださいまじで。ギブミー説明。

コンコン、と扉を叩く音がした。

「ひゃい?」

驚いて少し舌をかんでしまった。痛い。

「あ、起きていたか。すまないが中に入っても?」

知らない人の声だ。しかも男。

少し考える。普通に考えれば、自分をここに連れてきたのはあの時助けたパーティーだろう。しかし、そうじゃなかったら?

自分の体を見下ろす。

今風着物というものをイメージしたらしい裾が短いワンピースのような着物のコスチューム。完全和風着物もあったが動きにくかったから諦めた。

代わりにニーソックスで露出を抑えている。青と白のイメージカラーで統一したコーデは自分でも気に入っている。

辺りを見渡せば机の上に小刀と防具のロングコートがあった。

防具が何故ロングコートなのかは大体察してもらえると思う。

例によってエネミーからドロップしたなかで一番いいのがこれだったのだ、仕方ない。格好いいからまぁいいのだがやはり鎧に憧れる。

とりあえずそれらを装備してから扉を開けることにした。

もし相手が襲ってきても反撃できるように。

「はい、なんでしょう?」

相手は予想通り、あの時こっちを見ていた男だ。

ズタボロだったわりには元気そうである。

「あ、ああ。いや、元気そうで何より。」

挙動不審に男は答える。

しかも私の質問の答えになっていない。

しかしなんだ、ゲームと違ってしっかり表情が出るのはやっぱりいい。

しかし、じっと男を観察する。武装はしていない。ラフな格好だ。

首回りの空いた長袖の服にズボン。シンプルすぎてコメントに困る。

そんな服装の上。顔。

イケメンだった。あの戦っている時こっちを見ていた顔は汗やら血やら暗いやらでよくわからなかったが、今見ればあの時の男とはわかるが段違いにイケメンだった。シンプルな服装と違いピアスやらカフやら耳飾りが多いのもなんかチャラ男臭がする。実にお近づきになりたくないタイプだ。こういう男に近寄ると碌でもないことになるってばあちゃんが言ってた。

「あー。あの時、助けてくれてありがとう。助けてくれなかったら俺は今頃どうなっていたか。」

ふわり、と自然に笑ってお礼を言ってくる。

開いた口からきらっと歯が光っているようにすら見える。

ゲームでもイケメンは沢山いたが(何故か女キャラ9割だったが)

こんなリア充力の強いイケメンはなかなかいなかった。

「いえ、当然のことをしただけです。」

にっこりと私も返す。しかし気分は熊と遭遇した感じだ。

ばあちゃん、このイケメンが何かフラグを仕掛けてきそうです。助けてください。嫌な予感がびんびんします。

「君は謙虚なんだな。」

くすくすと笑うイケメン。何故イケメンは何をやってもイケメンなのか。くすくす笑うのが似合う男ってどうなんだ。

「しかし君が俺の命の恩人であるのには変わりない。感謝している。」

私には見えるぞ、このあとの展開が。

今の会話と行動パターンから私のサブカルチャーで鍛えられた脳が、何かこのイケメンは私にお礼がしたいといってくるだろうと囁いている。

そして色々行動を共にして利用するだけ利用して捨てる。

イケメンとはそういう生き物だってばあちゃんが言っていた。

残念だったな、イケメン。私はそんな策には決して乗らない。

「気にしないでください。そんなに気になるなら、貴方が困っている人を見た時、助けてあげてください。私はそれでいいです。」

完璧な返しだと思う。これで何も言えまい。

私ならこう言われたら何か礼をしようか、とか言わない。

フラグは折るものじゃない。立たせないものなのだ。

「しか「あ、すみません。ところでここは、どこなんでしょう?」

イケメンが何か言いかけていたが私は聞く。

人の言葉に重ねて言うのは大和撫子あるまじき事だがなにかとても嫌な予感がしたので仕方ないという事で。

実際ここがどこかわからないというのは結構困る。

「ああ、ここはフィンメイの宿屋だよ。」

フィンメイ。聞いたことがないが、恐らくあの森の近くの町だろう。

宿屋ということはお金を払わなければいけない。

今更だがここの通貨はなんなのだろう。ゲームのと同じなのだろうか。

違ったら軽く積むんだが。

「料金については安心してくれ。俺が払っておいた。」

イケメンの真髄1。さらっとおごる(またはそれに類することをする)

そういうさりげない気遣いが世の女子をときめかせるのだろう。

しかしすごくありがたい。ありがとうイケメン。

「すみません、ありがとうございます。」

お礼を言えば、当然のことだろう、とさっきの私の言葉を返したつもりなのかくすりと笑って言った。

それから2,3他愛もないことを話して私達は別れた。

名前は聞かれていない。今後会う予定もない。

まさに完全にフラグが折れた。完全勝利である。

「・・・よし!」

あとは適当な村人Aを捕まえるなり図書館で調べるなりして

この世界の事を知っていけばいい。

イケメンは死亡フラグ、面倒フラグ。これはテストにでるな。(確信)


前回投稿時間設定ミスした・・・(・ω・)

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