Tさんと片岡さんのデート
片岡さんは、もうすぐ結婚って時に、急に気が変わった。それは、Tさんが好きだったからに他ならない。
彼女は六甲山の降り口に立って、彼を待ってた。
「よう、片岡さん、元気かい?何してるんや?」
片岡さんはちょっと照れて、
「いやあ、Tさんの来るのを待ってたのよ」
Tさんは喜んだ。
「おお、それはうれしい。疲れたな。茶でも行こか?」
「はい、じゃあどこにしようか?」
「不愛想な喫茶店嫌やな。コーヒー吐き出すかもしれんわ」
「Tさんは、ワンちゃんとかどう?抵抗ある?」
「ないよ」
「じゃあ、Feliz Gateにしようよ」
「ああ、双葉筋のとこか?あれ最低!
接客態度めっちゃ悪い女がおるからな。
前は斉藤和義のおすすめ曲とか紹介してくれる人もおったのに。
今最低や。あ、もう一人の背の低い方の女性はちゃんと接客態度が 整っていると思う。でも、もう一人のせいで、気分ガタ落ちや。
二度と行かへん」
Tさんは珍しく怒りをあらわにした。
片岡さんはそれをなだめるように。
「歩こっかー」
二人は一緒に歩きだした。
「ねえ、Tさん、インドダイニング ガネーシャてとこで、カシスソーダでも飲まへん?カシスオレンジもあるわ 」
「おおええやん、ACTAの西館1Fのとこやろ?」
「そうなんよー。やってはるのはネパール人でとても感じがええわ」
「よっし行こう!」
Tさんはスタスタと歩きだした。
しかし、片岡さんはだんだんと遅れてくる。Tさんの方が先だ。
「はあ、はあ、ね、Tさん、もっとゆっくり歩いてよ」
片岡さんは流石に立ち止まって膝に手をやってしまった。
「え、これゆでっくりやで」
「タクシー乗らへん?」
「うわあ、勿体ないで、これしきの距離」
道路に出て片岡さんは迷わず手をあげてタクシーを止めた。
タクシー内、片岡さんは言う。
「まあ楽ちんね」
「うん、快適やわ」
「ね、Tさん、なんでタクシーの事ハイヤーっていうか知ってる?」
「タクシーとハイヤーの主な違いは、「利用方法(予約の有無)」、「料金の計算方法」、そして「車種やサービスの質」やね。
ハイヤーは完全事前予約制や」
すると運転手が反応して
「あんたら、そんな古い言葉知ってるなあ。今時ハイヤーなんて使わへんで」
片岡さんは笑いながら、
「運転手さんはハイヤー乗務員じゃないんですか?」
「ハッハッハ、ハイヤーは路上で拾うことでけへんよ、予約して最初からハイヤーは、車庫を出発して、仕事が終わって車庫に戻るまでの時間が料金対象になるんや」
するとTさんも興味を持って
「大体、どれぐらいの料金になるんでっか?」
運ちゃんは答える。
「短距離でも1万円〜2万円以上(数時間〜終日貸切が基本)やで、高級車扱いやわな」
片岡さんは外を指さして
「あ、ACTAここよ。運転手さん止めて」
「なんぼ?」
運ちゃんが
「1120円です」
「え、これだけの距離でも千円超えるん?」
「ええ、なんでも値上げしてまっさかいな。すんまへん」
片岡さんは
「昔の黒澤明の映画『悪い奴ほどよく眠る』とか見てたら、ワンメーター80円よ!しかも、『暖房車』!」
「今時、暖房車なんていいまへんで」
Tさんはそそくさと千円札とじゃら餞を払った。
「ACTAかあ、久しぶりやな」
「そうなん?私よう行くよ」
「なんで?」
「DoCoMoの携帯ショップ行くからねえ。
2人は、ガネーシャの店に入った。
するとこっちにカップルがいる。
ケンジとともちゃんだ。
「あ、ご両人!どーも」
とケンジは挨拶してきた。
「なんでここ知ってるのん?」
「それは、片岡さんの紹介よ」
片岡さんも挨拶して
「あ、やっぱりともちゃんて背が高いわね。身長幾つ?」
ともかはすかさず言う。
「167㎝よ」
コーヒー飲んでたケンジが吹き出した。
「おい、それは7と6を入れ違えて言ってるだけだろ(笑)」
するとともかは
「 ねえ、このお似合いのカップルに邪魔しちゃいけないわ。これであたしらは出ようか?」
「うん、そうしよう」
「自分ら、これからするんか?」とTさんは尋ねた。
「勿論」そう言って、ケンジはともかと一緒に出て行った。
するとTさんは
「この店、安いやん。同じ一杯500円で不愛想なおばはんがやってる店あるわ。名前は伏せとくけど『南風』とかいうとこや」
「わかったわ。その店にも絶対に行かへんわ」と片岡さんは答えた。
Tさんは、続けた。
「接客態度大事やで。それ一つで店の印象ガラッと変わるからな」
「ほんまや。前田さんがやってるフラットっていう店は?」
「接客まあまあやけど、かけてる音楽がイマイチやな。いくら美味しいコーヒーを出してくれてても、あの音楽じゃ、シラケる」
「まあ、みんないろいろ工夫してるのよ」
「じゃあ、何しよ?」
「カシスオレンジにする?」
「そうしよ、そうしよ」
しばらくするとそこに、ネパール人の若い男性が、カシスオレンジを持ってきた。
「あんがと」
「美味しいわねえ」と片岡さんも満足だ。
「これからどうしよ?」とTさんが訊いた。
「まあ、しばらく話でもして帰ろうよ」
すると片岡さんは恥ずかしそうに
「あれ、せえへんの、あれ?」と言ってたじたじしている。
「いやあ、この小説投稿サイトはアダルト禁止やからな。そんなんの描写書かれへんで」とTさんはきっぱり言った。
すると片岡さんは話題を変えた。
「ねえ、Tさんが山頂に登った時どんな気分?」
「やったー!って感じだね、『俺は栄光をつかんだぞ!』って感じよ。」
すると片岡さんは惚れ惚れしながら、
「カッコいい!流石はアルピニスト!」
「うん、まあいつも上がる山でも、それぞれに感じ方が違うね。あれがやめられへんから、登山に備えて六甲山でトレーニングしてるねん」
彼女は彼の話に夢中になった。「それで、山を下りるときはどんな気分になるの?」
するとTさんは前のめりになって「いや、登りより下りの方が危ないねんで。山の氷が解けてないとことか、滑るしな。気を付けてるねん」
「いいなあ、登山て、わたしもやりたいところだけど、足腰が付いていかないわ」と片岡さんが言った。「ほな、一緒に六甲山に登ってトレーニングしようや」とTさんはうれしそうに言った。
「そうしようそうしよう」
二人はそのあといろんな話をしたが、忘れてしまった。そんなことより、前向きに付き合っていく方がいいからね。
二人は「よっし、じゃあ二人で六甲山頂を目指そう!」と言って、その店を後にした。
つづく、と思う。




