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長い春の落とし穴

作者: レモン
掲載日:2026/08/19

 その時は、きた。2人の仲は、終わっているのに、まだ、決めきれずにいた。聡一と翔子は、悩んでいた。この8年間は、決して、短くはない。楽しいことばかりでは、なかった。けんかも、たくさんした。結論を、ズルズルと、ひきのばすわけには、いかなかった。2人共、30歳を、迎えようとしていた。聡一は、よくても、翔子は、適齢期を過ぎていた。子どもを産む年齢も、考えなくてはならない。

 2人は、とうとう、この日を迎えることになってしまった、と、どこか、物悲しく感じていた。もう、修復できない程になっているのだから、別れを選ぶしかないのだ。でも、8年は、長かった。もっと早くに、結論を出すべきだったと、お互い、思っていた。

 しかも、聡一には、今、好きな女の人がいた。同じ会社の上司の美穂子だ。美穂子には、まだ、気持ちは、打ち明けてはいないが、美穂子は、35歳なので、事を急ぎたかった。

 この日に、結論を急ぐのには、理由があった。8年前のちょうどこの日に、付き合い始めたからだ。やはり、もう、二人の間には、愛は、ないから、別れを選ぼうとしたのは、聡一だった。翔子も、別れたほうがいいとは、わかっていても、微妙な心理から、決断しきれずにいた。年齢的なこともあるし、この先、いい人が、見つかるだろうか、とも、思ったりしていた。それでも、やはり、2人の今の関係は、結婚に進むには、あまりにも、壊れかけていると思っていた。

 やはり、今日、この日に、2人が、決断するのが、望ましかった。あまり、先のばしにしても、逆に、大変になっていくと思っていた。2人は、別れを選択した。それは、なるべくして、なった結果だから、2人共、強い悲しみは、なかった。別れるって、こんなにも、淡々としたものなのかな、と、2人は、思っていた。お互い、納得した別れだからなのかな、とも、思っていた。最後に、ドロドロした、終わりにならなかったことを、お互いに、感謝していた。

 翔子は、これからのことを考えた時、一抹の不安があったが、乗り切っていこうと、決心していた。

 聡一は、別れてすぐ、美穂子に、会いに会社へ向かった。休日出勤をしていた、美穂子に、聡一は、自分の気持ちを、打ち明けた。「前から好きでした。付き合ってください。」と。美穂子は、驚いて、聡一をみた。美穂子は、仕事に明け暮れて、婚期を逃していた。美穂子は、素直に、嬉しかった。「こんな私でいいの?」と、聡一に聞いた。聡一は、「そのままの部長でいいです。」と、思わず、社内の呼び方で、答えてしまった。美穂子は、笑っていた。美穂子は、微笑んで、「よろしくね。聡一くん。」と、言った。聡一は、一刻も早く、美穂子と、結婚したかった。今流行りの、0日婚でも、いいと思っていた。すぐに、聡一は、言った。「僕と、結婚を、早いうちに、してください。僕は、すぐでも、いいです。」美穂子は、笑っていたが、すぐに、まじめな顔になって、「私も、早く結婚したいな。」と、言った。聡一は、それで、決まった、と思っていた。「それなら、早めに入籍しましょう。」と、言った。

美穂子は、聡一に、「そうだね。」と、言った。

 トントン拍子で、入籍して、結婚式も、挙げた。あまりにも、スムーズにいき過ぎて、怖いくらいだった。

 一方、翔子は、風の頼りで、聡一が、結婚したことを聞いた。複雑な気持ちになっていた。もしも、自分も、付き合って、すぐに結婚してたら、どうだったろう、と。今頃、子どもがいて、幸せだったかな?とか、いろいろ、考えていた。

 どちらが、いいとは、言えないが、長い春になった、自分の方が、みじめな結果になったと思って、悔いていた。

 聡一とは、もう会うこともないと思うが、幸せに、なってほしいと、今、心から、思えるようになった自分がいる。

 




 

 

 

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