第8話 孤独の檻
あるループの時、俺は耐えきれなくなって、わざと陽葵を激しく拒絶してみた。
この無限に続く停滞の元凶が彼女にあるなら、彼女に俺を嫌わせれば、この鎖は外れるんじゃないかと思ったんだ。
「お前なんかいなきゃいいんだ!お前がいるから、俺はいつまで経っても……!」
放課後の誰もいない教室で、俺はありったけの罵声を陽葵にぶつけた。
陽葵は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、それから見る間に大きな瞳に涙を溜めた。
その涙が頬を伝い、床に落ちた。
そして午前零時――世界はガラスが割れるような音を立てて崩壊し、また十二月六日の朝が来た。
彼女を傷つけることも、遠ざけることも、この世界は許してくれない。
陽葵は、俺がどれほど冷たく当たっても、次のリセット後には何事もなかったかのように「おはよう、湊!」と笑いかけてくる。
彼女には自覚がない。
もし、本当にループの原因が陽葵だったとしても、自分が俺を監獄に閉じ込めている加害者だなんて、一ミリも思っていない。
俺の心は、もう限界だった。
どれだけ勉強しても知識は虚空に消える。
誰と仲良くなっても関係はリセットされる。
この無限に続く十二月六日の中で、俺が積み上げてきたプライドや野心は、ヤスリで削られるみたいに少しずつ形を失っていった。
あんなに熱望していた「外の世界」や「留学」という言葉が、次第にただの音の羅列にしか聞こえなくなってくる。
代わりに、俺の中に居座り始めたのは、「誰かに愛されていたい」「この孤独から救ってほしい」という、動物みたいに原始的な渇望だけだった。
夕暮れの土手。オレンジ色に染まる川面を見つめながら、俺は隣を歩く陽葵の影を見た。
彼女の影は、俺の影に寄り添うように伸びている。
(もういいのかな。このまま、ここで……)
明日を望む気力さえ、冬の冷たい空気の中に溶けて消えようとしていた。
陽葵が笑っていれば、世界は安定する。
陽葵の隣にさえいれば、俺は「記号」にならずに済む。
それは、誇りを捨てる代わりに手に入る、究極の安寧だった。




