表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

第8話 孤独の檻

 あるループの時、俺は耐えきれなくなって、わざと陽葵を激しく拒絶してみた。


 この無限に続く停滞の元凶が彼女にあるなら、彼女に俺を嫌わせれば、この鎖は外れるんじゃないかと思ったんだ。


「お前なんかいなきゃいいんだ!お前がいるから、俺はいつまで経っても……!」


 放課後の誰もいない教室で、俺はありったけの罵声を陽葵にぶつけた。


 陽葵は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、それから見る間に大きな瞳に涙を溜めた。

 その涙が頬を伝い、床に落ちた。


 そして午前零時――世界はガラスが割れるような音を立てて崩壊し、また十二月六日の朝が来た。


 彼女を傷つけることも、遠ざけることも、この世界は許してくれない。

 陽葵は、俺がどれほど冷たく当たっても、次のリセット後には何事もなかったかのように「おはよう、湊!」と笑いかけてくる。


 彼女には自覚がない。

 もし、本当にループの原因が陽葵だったとしても、自分が俺を監獄に閉じ込めている加害者だなんて、一ミリも思っていない。


 俺の心は、もう限界だった。


 どれだけ勉強しても知識は虚空に消える。

 誰と仲良くなっても関係はリセットされる。


 この無限に続く十二月六日の中で、俺が積み上げてきたプライドや野心は、ヤスリで削られるみたいに少しずつ形を失っていった。


 あんなに熱望していた「外の世界」や「留学」という言葉が、次第にただの音の羅列にしか聞こえなくなってくる。


 代わりに、俺の中に居座り始めたのは、「誰かに愛されていたい」「この孤独から救ってほしい」という、動物みたいに原始的な渇望だけだった。


 夕暮れの土手。オレンジ色に染まる川面を見つめながら、俺は隣を歩く陽葵の影を見た。

 彼女の影は、俺の影に寄り添うように伸びている。


(もういいのかな。このまま、ここで……)


 明日を望む気力さえ、冬の冷たい空気の中に溶けて消えようとしていた。


 陽葵が笑っていれば、世界は安定する。

 陽葵の隣にさえいれば、俺は「記号」にならずに済む。


 それは、誇りを捨てる代わりに手に入る、究極の安寧だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ