第五片
夜が明けると、まだ薄暗いうちから準備をして、あのひとを起こさぬように足音を忍ばせて家を出ました。
麦畑へ続く道を歩きながら、胸の中で何度も繰り返していました。
これからはわたしがあのひとを養うのだ、と。
大変な旅だった分、これからは、あのひとには少しでも多く食べさせてあげたい。
その一心で、わたしは広い麦畑の隅々まで目を配り、刈り取る人の後を追って落ち穂を拾い集めました。
春だといっても、日が高くなるにつれて背中は火照り、汗が目に染みます。
けれど、そんなことは少しも嫌に思いません。
むしろ、この労苦があのひとの糧となると思うと、心が躍るのです。
疲れても、倦んでも、あのひとの顔を思い浮かべれば、また力が湧いてきました。
少しも休まず落ち穂を拾い進めていると、畑の主人であるボアズという方が、実に親切にしてくださいました。
「私の畑で落ち穂を拾いなさい。若い男たちにも、あなたを困らせないように言い付けてありますから」と。
他所からやって来た外国人に、こんな心配りをしてくださる方がいるとは、思いも寄らなかったことです。
それに、水とパン、食べ飽きるほどの炒り麦を与えてくださいました。
残した炒り麦は、あのひとにも食べてもらおうと思って、後で布に包んで持ち帰ることにしました。
ボアズ様のお心遣いに心が励まされて、わたしは日が沈むまで一心に働き続けました。
集めた麦を打って量ってみると、大きなかご一つ分ほどにもなりました。
これを見せれば、あのひとはきっと喜んでくださる。そう思うと胸が弾みました。
あのひとが戸口で温かく迎えてくれる様を思い描くと、疲れ切った足もたちまち軽くなります。
夕暮れ時、家路を急ぎながら考えました。
明日はもっと早く来よう。もっと丁寧に探そう。
わたしの働きが、あのひとの慰めとなるように。




