第十二片
どれほどの間、ボアズ様の足元にうずくまっていたでしょうか。
麦打ち場の外から、夜風が吹き込んできて、香ばしくわたしの頬を撫でていきました。
節くれだった厚い手は、なかなか伸びてきません。
この調子では、いつまでも気を張っていたって仕方がない。
そう思って目を閉じてみると、気疲れのためか、だんだんと、ふわふわとした夢心地へとなっていきました。
ボアズ様の足元から伝わってくる体温が、不思議と、いつしか別の温もりに感じられてきます。
聞こえてくるのは、年嵩の男の寝息ではなく、あのひとの吐息のように思えます。
寝返りの衣擦れの音は、あのひとがわたしに迫る衣擦れの音。
目の前に微笑むあのひとが立ち現れます。
芳しいレバノンの幹のような手が伸びて、わたしをかき抱き、胸を押す。
舌の下の蜜と乳を味わい、腿を撫でる。
閉じた園はただひとりのために開かれ、封じた泉を湧き上がらせてくれる。
「あなたを余所へやるのは間違いだった、どうか私を許して」
そう言って縋りついてきたあのひとの頬を包んで笑いかけてあげると、夜空のような瞳がわたしを見下ろし、燃え盛る唇でわたしの名を呼び━━
わたしの夢想を破るように、低く野太い声が、わたしの頭の上から降ってきました。
「誰ですか、私の足元で寝ているのは」
わたしは熱い息を飲み込んで、あのひとに言われたとおりのことを一息に言いました。
ボアズ様は、わたしが他の若い男ではなく自身のもとへ来てくれたことに、嬉しそうにされていました。
そして、わたしの衣には触れず、優しい声で、
「ここで朝までお休みなさい」
とおっしゃいました。
そのお言葉を聞いて、なにより、ほっとしました。
それと同時に、このようにも思いました。
ああ、あのひとの考えどおりに事を遂げられなかった。
祭壇の薪木から転げ落ちてしまった、と。




