第十片
仔細全てを、あのひとは流れるようにおっしゃいました。
装いを整え、ボアズ様の寝る場所へ行け。
わたしのためを思っておっしゃっているということは、表情や仕草を見ればよく分かります。
でも、そのやさしい瞳の奥に、わたしは見てしまいました。利己の光がのぞいているのを。
わたしは、こちらの民ほど律法には明るくありません。
それでも、注意深く考えてみればすぐにわかることです。
わたしたちが貧しい寡婦であること。
あのひとの元に継ぎ手のない地所があり、売り払おうとしていること。
近しい親戚に裕福な独り身の男がいること。
あのひとは年老いているが、わたしはまだ若いこと。
わたしの再婚がすべてを解決するのです。
解決してしまう。
わたしの願いを、すべて置き去りにして。
モアブの家を発つ前に、わたしはあのひとに言いました。
「あなたの死なれるところでわたしも死んで、その傍らに葬られます」と。
命を終えたその時は、夫の傍らではなく、あなたの傍らで眠りたい。
それなのに、あのひとはわたしに、他のひとの足元で寝ろと言う。
わたしが心をかけて身をかけて愛したことを、少しも惜しまないで、わたしを他人に明け渡そうとしている。
わたしの言ったことなど、ちっとも覚えていやしない。
日々の食事を欠いたとしても、嗣業を絶やしたとしても、二人きりで居られるなら、それでよかったのに。
あのひとは、とても賢くて、あまりにも優しいのです。
わたしの身の上を想うが故に、わたしの思いを顧みなかった。
モアブの町の外れであのひとに説得された時とは反対に、わたしは素直に、あのひとの言葉に従いました。
顔を上げられないまま、ただ、
「あなたのおっしゃることを皆いたしましょう」
とだけ申し上げて、その外は何も漏らしませんでした。




