【第3話】 ハエある未来を。
蝿山:
「フン 糞 フゥ~ン♪
あら♪ アナタ♡ 蝿藤くんと……あそこにいてるのは、蝿嶋くんね♪」
おれ:
「あ、さっきはどうも♡
(何気まずくなってんだおれ……)」
蝿藤:
「何や? あっ……(お察し)
コーラで乾杯するけ?」
おれ:
「ありがとう!
……ってそれどころやないんや! 蝿嶋を止めないと!」
蝿藤:
「何や? ただの老人ちゃうんけ?
人間が“ハイッ!ハイッ!”とか皆で言うとるけど。」
蝿嶋:
「オラオラァー!
悔しかったらワイを捕まえてみぃー!(時速7km程度)
さほど早ないけど、コンパクトボディと旋回能力で
人間なんてイチコロや!」
謎のじーさん:
「こうして心を無にして……
心の目で見るんじゃよ……
──ホレッ。」
パシッ
蝿嶋:
「なんや!? 動けん!
何に捕まったんや?!」
おれ:
「蝿嶋ぁーー!
お前は達人の箸によって摘まれたんや!」
蝿山:
「ハァーイ ウェー トゥ〜 ザ〜
デンジャゾーンッ♪」
おれ:
「お前その歌……蚊山やろ!」
蝿山:
「ん?♡(ニコッ)」
おれ:
「そんなことより!
蝿嶋にげろぉー!!
(どうか助かりますように……ナンマンダブナンマンダブゥ……)」
(……はっ!? 自然に手をスリスリしてたやん俺。
もしや蝿のあの仕草って祈りだったのか!?)
──フュィンッ……
フェニたん:
「違うわよ!
ハエには味覚・触覚・匂いセンサーがびっしりあって、掃除をしてるのよ。
・味覚・嗅覚のリセット
・飛行姿勢の調整
・触角掃除の準備
まぁピットインみたいなものかしら♪
そんなことより蝿嶋さん……大丈夫なの?
助けようもないかもだけど。」
──フォンッ……
おれ:
「イジェクトや!(緊急脱出)」
蝿嶋:
「まったく動けんのや……
明日もしお前らにまた会えたら……」
スッ(箸が緩む)
蝿嶋:
「あ、解いてくれた。認めたくないが……いったん離脱や!」
ブウィーーーーーンッ!
達人じーさん:
「──という訳じゃ。」
蝿嶋:
「ふぅー……たしゅかった(ジョボジョボ)」
達人じーさん:
「では、お前たちもやってみなさい。」
蝿嶋:
「え?」
子どもたちが“ガチの目”で箸を構えた。
子どもA:
「俺が一番に捕まえるぞ!」
子どもB:
「違うもん! 私よ!」
キャキャッキャッ……!
蝿嶋:
「こりゃ流石に撤退や!
こいつら手加減っちゅーもんを知らんから……な!?」
プチッ(蝿嶋死亡)
おれ:
「あ……。
みんな、逃げるで!
人間が一番の天敵やからな!
近寄ってもいいことないで!」
蝿藤:
「ハエキャット!
敵さんきなさったで!
イベイシブアクション(回避運動)や!」
ヒョイッ
おれ:
「助かったで!蝿藤!
あとは俺がドラッグ(敵を引き付ける)する!
お前はその間に離脱してくれ!」
蝿藤:
「ラジャ! 離脱する!
後で2丁目のゴミ箱前で会おう!」
ブィーーーーンッ
蝿藤:
「……ん? なんか……ええ匂いが……甘い……」
ブィィィ……(近づく)
おれ:
「蝿藤!アカンそれ──!」
ベトッ!!
蝿藤:
「な、なんやこれ?!
動かれへん!」
おれ:
「それは粘着トラップや!今助けるでッ!」
(……でもどうやって……)
蝿藤:
「Go! Leave me!(行け!俺はいい!)」
おれ:
「糞ぉ!蝿藤ぃーーー!!
仕方ない!
蝿山!俺達だけこのまま離脱する!
振り向かずにまっすぐ飛ぶんやッ!」
ブゥィーーーンッ!
ブゥーーーンッ!
蝿山:
「Threat range clear♪
(脅威圏クリア♪)」
おれ:
「これでひとまずあんし……」
──ッ!!
シューーーーッ!!
おれ:
「なんやこの煙!?
まさか……!
蝿山!逃げろ!
俺の子を……頼んだで!」
【ハエ・スクランブルアタックッ!!】
ドンッ
蝿山:
「キャッ♡
ア、アナタ!?」
おれ:
「足が……動かん……
羽が……重い……
視界が……にごる……
どうやら……おれの使命は……終わりみたいや……
ありがとな……」
ひゅぅぅ~~~~~~ん……
ポテッ(死亡)
蝿山:
「アナタァーーーーッ!」
おれ(魂):
「あ……おれ……死んでもうたんやな……
蝿山は……無事か……?」
ブーーーーンッ(蝿山が寄ってくる)
蝿山:
「アナタ! アナタ!
生きてよ!」
おれ(魂):
「はよ行け……ここは……デンジャーゾーンや……
意識が……飛ぶ……」
朧げになる視界の中で、
透明になった自分の翼がふわりと揺れた。
そして——
最期に見えたのは、蝿山が足をこすっている姿だった。
あれは掃除ではなく、
間違いなく祈りだった。
蝿山:
「……ッ。
アナタに……ハエある未来を♡」
──そして、
おれは光となり消えた。
ハ・END
──フュィンッ……
フェニたん:
「はい、お疲れ様♡
無事に蝿の人生を全うしたわね!」
おれ:
「え? おれ、最後殺虫剤で死んだけど?」
フェニたん:
「確かに死んだわね。
なかなかいい最期だったわよ。見直したわ♪」
おれ:
「違う! 死んだらリセットちゃうんか?」
フェニたん:
「あーそれね。
あんたの使命はとっくに終わってたのよ。
達人のじーさんとのくだりとか……
ハエとしては一切いらなかったわ。
楽しませてもらったけど♡」
おれ:
「なんてこったい!
あっ……蝿山は?」
フェニたん:
「なに熱くになってるの?
安心しなさい。あのあと無事に卵を産んだわ。」
おれ:
「よかったぁ……ほんまに。」
フェニたん:
「そのあと、他のオスと──」
おれ:
「言うなーーッ!!
ハエにヤキモチ焼いてる俺がおもしろいか!!
好きやったんや……ほんまに……!」
フェニたん:
「ちょっ……早まらないで!
本当はハエのメスって何度も交尾する生き物だけど……
蝿山さんは“最期まで”あんただけだったわ。
そんなハエ、聞いたことないわ。
しかも……
あなたが昇天したあとも、
しばらくあの場から離れなかったの。」
おれ:
「なんでそこまで……?」
フェニたん:
「あなたが守った……からかもね?
ときどき“愛のバグ”を起こすものよ。
……たとえ、それがハエであってもね♡
さぁ、蝿山さんのためにも、
次に転生するのよ!
彼女の言葉——大事になさい。」
あんた、逃げてばかりの人生だったけど……
今回、初めて“誰かのため”に動けたわね?
すごく成長したわ。
それも考慮してあげる♡」
おれ:
「……自分のことばっかりで逃げ続けてたからな…。
なんか、認めてもらえるんて嬉しいもんやな。
ありがとうフェニたん!」
フェニたん:
「フフッ♡ それじゃぁ……いくわよっ!」
おれ:
(わくわく……)
フェニたん:
「虫転生ぃ~~~っ スロットぉ♡」
おれ:
「虫って言うてもぉーてるやぁーーん!!」
──。
カリカリ……カリカリ……。
おれ:
「ん? 何やこれは……。」
【第二章 蝿編 完】




