【第2話】 飛べない蝿は、ただの蛆
ピキピキッ……。
パワ~~ぁぁ!?
お、おお……!?
ついに世界が見える!
しかも……ほぼ360度ビュー!
ゲームで画面酔いには慣れてるし、まぁなんとかなるはず。
でも、なにこれ……
全身しろっ! しなしな!
絶対弱いやつやん。
やばい。早く整えないといつもの敵が来る。
蚊のときと同じように、
まずは羽を伸ばして乾かさねば。
肩甲骨を動かす感じで~~~……羽をグイィィッ!
あとは20糞(分)ほど風まかせ。
今なら銭湯の隣のオッサンのドライヤーでも欲しいわ。
羽よし! 顔よし! 触覚よし!
オールグリーン!
でもまだちょい飛びぐらいが限界か……
よし、とりあえず脱皮で栄養使い果たしたし——
ランチタイムでもいくか!
ブゥ~ンッ。
おっ!飲みかけのコーラが置いてあるやんけ。
肉も落ちてるし。
おれの口、ストローみたいやし……
まさにハエドナルド状態や!
チューチュー……
うんまっ!!
いや、待てよ?
コーラとか人間でも飲みすぎたら害あるのに
ハエの俺が飲んでも大丈夫なんか?
──フュィンッ……
フェニたん:
「ハエがしょーもない心配してるんじゃないわよ!
あんた今まで何食べてハエになったと思ってるの? 腐敗液・死骸・糞・ゴミ・化学物質よ?
蝿はね――毒耐性バケモノ級。薬剤分解酵素バチバチだし、“肝臓ポジ”の脂肪体でガンガン毒処理できるの。
人間から見て“毒”レベルのものが、あんたにとってはエナジードリンクみたいなものなのよ♡」
──フォンッ……
おれ:
「まじか!? コーラ無限に飲めるんか!
糞にダイブした苦労が報われたわ!」
パワー満タン!
よっしゃ、ガチ訓練いける——
──◯△■×◯△■×ッ!!
どこからともなく、怒鳴るような声が響いた。
???:
「飛べん蝿は“ナゲット”や!!
揚げられたくない奴は──前に出ろッ!!!」
おれ:
(なんやなんや? ここ並んだらええんか?)
ファルコン大佐:
「ワシの名は……ファルコンや!!
本来なら自然の摂理で“勝手に覚える”もんやが……
諸事情でワシが直々に 飛行戦術 叩き込んだる!!」
おれ:
(やばいな……ガチの体育会系やん。)
ファルコン大佐:
「これより──“フライト・サーキット訓練”を開始する!!
お前ら、ハエコンバット 感覚でついてこい!!
置いてかれた奴は知らんッ!!」
黒光りした身体に、鋭すぎる視線。
全身から“鬼教官オーラ”が滲み出てる。
ファルコン大佐:
「蝿戦術(Fly Tactics)は全部で5つや!」
1. インバーテッド・クライム
──逆さ姿勢上昇(天井逆さ歩き応用)
2. ハイGフラッター
──毎秒200回の高速揚力技
3. マイクロ・ホップ
──短距離ジャンプ離陸訓練
4. ストレート・スラスト
──短距離ロケット加速
5. スナップ・ターン
──瞬間旋回による0.01秒ターン
ファルコン大佐:
「……以上や! あとは遺伝子を信じろ!!」
おれ:
「いや薄っ!! あんたの存在意義なくね?」
ファルコン大佐:
「ほざけ!イメージが大事なんじゃ!
空はお前の庭や!自分がF-14トムキャットになったつもりで飛べ!!」
おれ:
「なんで戦闘機やねん!精神論で飛べんのかいな……。」
━━3時間後。
ファルコン大佐:
「そう!そこでクンッとして……
ガーーーっていけばええ!!
……お前、なかなかやるやないか。(ニカッ)」
おれ:
(あ、今のめっちゃかわいい……。)
ブゥーーーウンッ
ギュイィーンッ
おれ:
「ヒャッハーーーーッ!!自由自在や!!
ファルコン大佐!!ありがとうございました!!」
ファルコン大佐:
「……よし。
お前、なかなか“空を掴む”センスがあるな。
実力は完全にエース級だ──胸を張れ。
……ハエ・キャット。
これからその名を背負っていいぞ。
いいか、ハエ・キャット。
優秀な遺伝子は空で輝く。
お前が未来をつなげ。
飛べぇッ!!
空を掴む者だけが、蝿界を生き残る!!」
足をこすり合わせるファルコン大佐は、
まるでサングラスをかけて敬礼しているように見えた。
おれ:
「蝿ぇーーーーッ!!!
なんやこの機動力!!
蚊とは比べ物にならん!
蹴り飛ばした相手より先に目的地着いて、さらに蹴り上げれそうや!!
サイヤ人もびっくりやで!!
おれは調子に乗った。
人間スレスレを飛び、
出来たての唐揚げ定食の頂上に着陸し——
客:
「店長ォーー!!ハエついたんやけど!!」
店長(殺意MAX):
「……てめぇ。」
全力でスリッパを振り下ろすッ
バチコーンッ!!
店長:
「やったか……?」
おれ:
「残像だ……。
スナップ・ターン!!
ほれ、このままトンズラや——
……って、あれ!?
体が勝手に……人間の周り旋回してまう!」
バチコーンッ!!
スリッパにより撃墜(死亡)。
━━。
……ここは?
目が見えない……。
パンパンッ。
おれ:
「ああ……卵や。」
──フュィンッ……
フェニたん:
「あんたねぇ!もう3回目の蝿よ!!
前回も言ったわよね?
ハエは人間の放つあらゆる臭いがご馳走なの!
だから本能で勝手に近寄っちゃうのよ!無になりなさい!まったくもぅ!」
──フォンッ……
おれ:
(だからあいつら手で払ってもしつこいんか……)
「死んだら最初から……ね。
糞ぉ……1週間無駄にした……」
——だが、もう要領は掴んだ。
卵パリンッ!!
「はいはい、どうせまたうんこやろ。なんでも来いやぁ!!」
ギーコギーコ……ドロドロチューチュー……
おれ:
「そこの君ぃ!楽園あるでーこっちや!」
後輩を案内しつつ成長し、
羽化→訓練→エース級で復帰した。
よし、今度こそ慎重に子孫繁栄や!
メス蝿:
「フ~ン フ~ン フ~ン フ~ン 糞 フフンッ♪」
おれ:
「なんか歌いながらうんこ食べてるメス発見!
お、前回五つ星ホテルに案内してくれた子やん!
しかも大量のオスに狙われてる!
あのご機嫌な食べっぷりと、
女の子らしい足のこすり方……
好きかも……♡
ロックオン。
ストレート・スラスト!!
ブゥーーーーーンッ!!」
メス蝿:
「ッ!?」
おれ:
「めっちゃ逃げるやん!」
メス蝿:
「フフッ♪ ついてこられたらね♡」
おれ:
「壁!天井!急停止!
めちゃ機動力高い!
でも甘いな。
“エース級”を舐めんなよ!
スナップ・ターン!
からのォ——
ストレート・スラスト!!」
ピタッ。
おれ:
「背中にタッチダウン成功や!!」
メス蝿:
「ブラボー♡ やるじゃない♪
でも安心するのはまだ早いわよ?♡
フンッ!フンッ!糞ッ!」
おれ:
「めっちゃ暴れるやん!!」
——20糞(分)ほどドッグファイト。
おれ:
「蝿、交尾めちゃ時間かかるやんけ……」
???:
「アナタ、なかなかやるわね♡
……私は蝿山よ♪」
おれ:
「ハエ・キャットや。」
蝿山:
「かっこいい名前ね♡
ホントはいろんなオスが来るんだけど……
アナタの子、産むことにするわ♡
じゃあね♪ ハエある未来を♡」
足をこする仕草が——
マーシャリングに見えた。
※飛行機を手信号で誘導するアレ。
おれ:
「(キュンッ)……いや何蝿キュンしてんねん俺。」
おれ:
「よし、次のメス探すかー!」
???:
「おっ兄さん!アンタ、ハエ・キャットやろ?
今からひとLOVE行くんか?
うちも行くで!一緒に行こーや!連携プレイや!!」
おれ:
「いいね!あんたは?」
蝿藤:
「うちは蝿藤や。よろしゅうに!」
???:
「なんやお前らつるんで女々しいのぉ!
男は弾丸やろがい!!」
おれ:
(完全に死亡フラグたっとるやんけ)
蝿藤:
「お前は相変わらず勢いだけで生きとんなぁ蝿嶋ぁ!頭使わんと死んでまうで?」
おれ:
(死亡確定やんけ⋯)
蝿嶋:
「見とけやァ!!
弾丸飛行でおなご共キュンキュンや!!
ワイの人間煽りスキル舐めんなよ!!」
ブィィィィンッ!!
おれら:
「アイツ絶対やらかすやつや……
しゃーない、ついてくか。」
蝿嶋:
「おっ!ちょうどええ場所に鈍そうなじーさんおる!!」
じーさんの頭上を
右へ左へ旋回しながら煽り散らかす。
蝿嶋:
「ほれほれぇ!!
どっかいったと思ったら戻ってくるでぇ!!
嫌やろぉ? 謎やろぉ??
(おなご共見とるかぁ~?)」
おれ:
(……ん? なんやここは?
じーさんと子供がいっぱい……?)
おれ:
「はうあっ!?
これはあかんやつや……!!」
━━続く━━




