【第3話】 未来へと繋がる命
ドクンッ ドクンッ ドクンッ…
おれ:
「ふしゅぅ~~~~……」
――7回目の脱皮 → 成虫
全長:50.0mm → 65.0mm
スピード:12.0 → 15.0
パワー:10.0 → 11.0
耐久:6.5 → 7.0
反射神経:15.0 → 18.0
武器:11.0 → 13.0
おれ:
「世界が……広い。
カラダが……軽い。
鎌がさらに……伸びる。
そして……飛べる。
まさに最強!
メスには勝てる気がしないけど……。」
──フォンッ……
フェニたん:
「ようやく成虫になれたようね。まずはおめでとう♪
先に言っておくけど羽が生えたからって、自由に飛べるわけじゃないわ。
あくまで補助装置として使いなさい。
主な機能はこうよ。」
・加速装置
・落下制御装置
・旋回装置
・体勢復帰装置
・威嚇装置
・緊急脱出装置
「これらを使いこなすことで、立体機動が可能となるわ。」
おれ:
「えっ!? あの有名な立体機動装置的な?」
フェニたん:
「そこまで高性能じゃないわ。
あくまで “簡易版・虫用の補助装置” ってところね♪」
おれ:
「えーやん。かっこいい。
なんか知らんけど……使いこなせる気がする! フフフ……」
フェニたん:
「まぁがんばりなさい。いい奥さんを見つけることね。
言葉通り、食べられないように要注意よ!」
おれ:
「あぁ……頭からいかれるやつね……
あれはさすがにごめんやわ。
気をつけるよ。ありがとう。
……気にしてくれてるの?」
フェニたん:
「き……気にしてなんかないわよっ! べ、別に……!
ほら、さっさと行きなさい!」
──フォンッ……
おれ:
「さて、さっそく狩りといきますか。」
(今までの狩りは “強くなるため”。
これからの狩りは “種を残すため”。
目的がはっきりしてるから、
ある意味、人間のときよりもモチベが上がる気もする……。
もしかしておれって虫が天職なのかも。)
おれ:
「お?なんやアイツ。えらいテクニシャンな動きしとるのがきたで」
キュイィーーーーイッ!
ガシッ
チューチューッ
???:
「おらよっ! そいやっ!
ちょろいもんやで。
そろそろ体力MAXやし、嫁さん探しにいこかいなぁー。
……ん? そこの兄さん、名前は? 成虫になったばっかりかいな?
成虫はえぇどぉー。見た? さっきのウチの技。」
おれ:
「カマボコや。よろしく!
あなたは?」
鎌藤:
「兄さん、美味しそうでかっこえー名前やん。
ワイは鎌藤や。よろしくやで。」
おれ(心の声):
(どこがかっこいいねん……虫界ではこういうのが流行ってるんか!?)
「お、おう。ありがとう。」
鎌藤:
「今からメスにアタックしにいくんやけど、不安やから近くで見ててくれへん?
兄さんが見ててくれると安心するわ。
カマが震えるんよ、こう見えてビビリでなぁ……
立ち回りの勉強にもなるし、ちょうどええやろ?
一石二鎌や。」
おれ:
(……一石二鎌? 一石二鳥みたいなやつか)
「OK! じゃぁここで待機してるわ。
頭からいかれんといてくれよ!
成功を見せてくれ……性交だけに。」
鎌藤:
「え? ……まぁええわ、いってくるで!」
おれ:
「いけるいける!
そこや! そう!
ゆっくり……ゆっくり……
ブラボー!!」
──3時間後。
おれ:
「長いわっ!」
鎌藤:
「え? 堪忍やで! ワイ、これでも“早い”ほうやけどなぁ
コツは掴めたか?」
おれ:
「まぁ間合いとかタイミングとか、参考になったわ! ありがとう!」
鎌藤:
「こちらこそやで! よし、ワイの命も残り僅かやし、次のメス探してくるわ!
兄さんも頑張りやー! 成功を祈っとるで!」
おれ:
「……性交だけに。」
フェニたん:
「……性交だけに。」
「フフッ♡
それじゃ行くわね。性交……いえ、成功を祈ってるわ♡」
──フォンッ……
おれ:
「言いたかっただけやん……」
っ!?
……ブーン……
(音が……ほとんど、せぇへん……?
なんやこっちに赤いテントウムシが飛んできよったで。
おれの NEWタイプ を試すにはピッタリや!
とろいとろい……あんなもん瞬殺やで。)
「加速装置オンッ!」
キュイーーーーンッ!
シュパッ!
(スカッ)
謎の赤いテントウムシ:
「……。」
おれ:
「確かに掴んだはず……でも感触がなかった……」
(先読断ッ!)
(スカッ)
謎の赤いテントウムシ:
「……。」
おれ:
「なんやこいつ!」
シュパッ
シュバババッ
スパッ スパッ スパッ
(スカッ スカッ スカッ)
なんやこの彗星のような動きは……
おれの動き……完全に読まれてる!? いや、見切られてる……!
謎の赤いテントウムシ:
「……。」
ブーーーーンッ
……フッ。
(音も気配も……一瞬で消えた!?
……絶対にただ者やないな。)
おれ:
「…あっ、そや!
狩りしてパワーマックスで交尾をしなければ!」
キュイィーーンッ!
雷迅鎌閃ッ!
フィンッ!
虚空落葬ッ!
クルンッ!
螺旋鎌襲ッ!
──数時間後。(お腹いっぱい)
おれ:
「おれの嫁さん候補は前から決めてるんや!
あの無双っぷり……何か惹かれるもんがあったんよね♪
おっ、いたいた。
やっぱりオーラがすごいわ。」
(バレたらやばいから、怒らせんように……
そろぉ〜り、そろぉ〜り……
ヨイショッ!
あれっ!?
簡単に乗れた。
ん?
少し動きが鈍い……?)
おれ:
「あの、あなたの事は前から何度か見てて、
すごく強くて惹かれました。
結婚するなら、あなたしかいないって─」
???:
「フフッ。アナタね?前からちょくちょく視線が気になってたのよ。
鎌山よ……よろしく……ね♡」
おれ:
「見てたの気付かれてたんですね。
恥ずかしすぎる……
……鎌山さん、なんか元気が……
えっ! その鎌……」
鎌山:
「鳥から逃げるときに……ね。
それから狩りがあまりうまくいかなくて。
でも、栄養がないと卵を産むことが出来ないの。
だから……」
おれ:
(え! もしかして……おれ食べられる!?)
鎌山:
「いつも見ててくれて嬉しかった。
最後にアナタに出会えてよかったわ。
本能には逆らえないの。
未来の子供の為に……私の栄養になってもらうわ。
……覚悟は、いい?」
おれ:
(……怖い。
でも、それ以上に……鎌山を、信じたい。)
「……。(ニコッ)」
シュッ
ガシッ
ガブッ(おれ死亡)
鎌山:
「片方の鎌だけの私なら簡単に逃げれたはずよ……
それなのに……アナタは……」
噛んだ瞬間、
“存在しないはずの未来” がよぎる。
懐かしいような……
でも、確かに “あったかもしれない” 未来。
なのに──
なぜか、懐かしい。
── 鎌の手入れなんかしちゃったり…
おれ:
「鎌山さん、ちょっとここ欠けたんや。
直すの難ッ……ちょっと見てくれへん?」
鎌山:
「もう……しょうがない子ね。
その角度……そう、ゆっくり……上手よ♡」
二匹で向かい合って、
鎌を研ぎ合いながら笑う。
── 二人でゆっくりと休憩するのもいいわね。
そよそよ……
枝の上で、背中から感じるやさしい鼓動。
鎌山:
「ねぇ……風が気持ちいいわね♡」
おれ:
「せやな……ずっとこうしてたいわ」
そんな穏やかな時間が……
あったかもしれない。
── 二人で狩りもしたかった…。
鎌山:
「ほら行くわよ♡ 今日はアレを狩るの♪」
おれ:
「任しとけ。今日こそおれが先読断決めたる!」
笑い合いながら跳ねる二つの影。
夫婦らしく、寄り添って――
鎌山:
「……こんな日々が、ずっと続けばよかったのにね……」
ガブッ バリッ
チューチュー……チュー……チュー……
鎌山:
「……もしこの未来が本当にあったなら……
アナタの鎌……もっとずっと……
磨いてあげたかったのに…………」
おれ(魂):
「鎌山さん、その気持ち……しっかり受け取りましたよ。
やっぱり……あなたを選んでよかった。」
おれは今まで、自分のためだけに生きてきた。
でも今は、鎌山さんと未来の子どもたちのために “生きて(食べられて)いる”。
不思議や……死ぬはずなのに、心だけは満たされてる。
これが……自己犠牲、なんかな。
いや、犠牲じゃない。
おれの一部が未来に繋がるなら、それは……希望や。
カラダがほとんどなくなっていく。
しっかり栄養にして、最高の卵を産んでほしいな。
チュー…チュー
チューチュー…
…ッ
チュッ♡ チュッ♡
鎌山:
「アナタ……ごめんね……ありがとう……」
おれ:
「鎌山さん……全部が報われたよ……ありがとう。
鎌が一本しかないんや。
どうか……ご無事で。」
THE・END
フェニたん:
「もぉおおおおおおッ!!
虫転生ぃ~~~~~~スロッ!」
おれ:
「ちょいちょいちょい! 待った待った!
強制スロットはやめてや!」
フェニたん:
「あんたわざとやってない!?
頭から食べられるの嫌だって言ってたでしょ?」
気をつけてってあれだけ……!」
おれ:
「確かに直前までは怖かったし、生きたかったよ。
でも虫になって初めてわかったんよね。
種のためなら……何だってできる。
それを不幸とも思えんのよ。
いろんなカマキリがいてるけど、全部まとめて “一つの生命体” って感覚というか……
欠片がこぼれても、未来へ生命が繋がるなら……それでええんかなって。」
フェニたん:
「見てるこっちが……苦しくなるのよ……
胸がぎゅってなるのよ……わかる?」
…ハッ!? ゴホンッ
フェニたん:
「……ほんと変わったわね。
ほんとに、強くなった。
「一応伝えておくわ。あのあと鎌山さんは
ギネス級の卵を無事に産んで、人生を全うしたわ。
あんたの栄養のおかげね。ギネスよギ・ネ・ス♡ 誇りに思いなさいッ。
あんたは、蚊・蠅・蝉・カマキリを経験して、
人間では絶対にできない “深い理解” を得たのよ。
逃げてばかりだったあんたが、今じゃ……
そこらの人間よりよっぽど勇気も優しさもある。
これなら人間として……」
おれ:
「え? やっと!?」
フェニたん:
チラッ
「虫転生ぃ~~~~~~~~スロットぉ♡」
おれ:
「虫って言うてもぉーてるやぁ〜んッ!」
意識が遠のく。
この転生がいつまで続くのか……
……でも、不思議と悪い気はしない。
フェニたん:
「フフッ♡ あんたの成長は認めるわ♪
でも、それとこれとは別の話よ♡
さぁ次は何かしら?
存分に輝いてらっしゃい♡
(……ちゃんと、見てるから。)」
【第4章 カマキリ編 完】




