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【第1話】 意識より早く動くもの

ぷにゅっ。


おれ:

「なんやこの部屋は?

外はどうなってる!?」


ガチャッ。


「え? タワマン?」


ガチャッ ガチャッ ガチャッ

 ガチャッ ガチャッ ガチャッ

  ガチャッ ガチャッ ガチャッ


ガチャッ×300


ドドドドドドドドッ

 ドドドドドドドドッ


「ミニカマキリの大群やぁ!

押し流されるぅ~~~


バーゲン並にもみくッ——」


シュバッ


チューチュー


(死亡)


──。


ぷにゅっ。


おれ:

「えっ? 死んだ?

おれ今喋ってる途中やってんけど?」


──フュィンッ……


フェニたん:

「まぁ……こうなるでしょうね。


さっき見たと思うけど、あんたは今カマキリよ。

なかなかカワイイ姿だったわ♡


……死んじゃったけど。


カマキリ界はね、初日で半分近く死んじゃう世界なの。

さっきあんたは、生まれたての仲間に食べられて死んだのよ。


よく覚えておきなさい。

カマキリは本能で、近くの動く物体を餌と認識し、

意識せず反射で狩るの。


だから“バーゲン並の〜”とか、

しょーもない例えを言ってると一瞬でやられちゃうわ。」


おれ:

「そ、そんな! しょーもない例えが好きなのに!」


フェニたん:

「フフッ♪ しょーもないって自覚あったのね。


でも、集中しなさい。本能を信じなさい。

あんたは狩られる側ではなく、狩る側よ。


それじゃ、私は“転生マニファクチュア”に行かないといけないから……

しっかり全うしてくるのよッ♪」


──フォンッ……


おれ:

(また訳のわからんとこ行って……どういう状況よ。)


「それにしてもカマキリか……。

確かにうじゃうじゃとミニカマキリが湧いてるのは見たことあるけど、

こんな壮絶なことが起こっていたとは知らんかったな。


よし、次こそ!」


ぷにゅっ。


ガチャッ。


おれ:

「おれが一番最初に外に出るでぇー!

うぉーーーーッ!」


シュバッ


チューチュー。


「お、二番手きよった……な。

って、あれ?


おれが2番手をチューチューしとるやないか!」


(意識よりも先にカラダが動く……

これぞ武の境地……!


それにしてもこの空腹感は何なんや。

頭がおかしくなるぐらい腹減ってる……)


「……はうあっ!?


チカラが み・な・ぎ・る!」


スピード:2 → 3.5

パワー:1 → 3.0

耐久:1 → 2.0

反射神経:4 → 4.5

武器:1.5 → 3.0


「仲間一匹食べただけでこのステータスUP!?

蝉のときは何やったんや!


うぉ! 動きにキレがッ」


シュバッ

チューチュー。


シュバッ

チューチュー。


「チカラが み・な・ぎ・る!」


スピード:3.5 → 4.5

パワー:3.0 → 4.5

耐久:2.0 → 3.0

反射神経:4.5 → 5.0

武器:3.0 → 4.5


「何やこの、冒険開始時の勇者並の

ステータスの上がり方は!


これなら外の敵(餌)とも戦える!」


──ぼふぁっ。


っ!?


シュバッ


スカッ!


???:

「……残像だ。


おい、ヒヨッコ。

拙者を狩ろうとするとは──たまげたもんやな。


今の“魂の一振り”、悪くはなかった。」


おれ:

「あっ、ごめん。

反射でつい動いてもうたんよ。

あなたは?」


???:

「……影が囁き、刃が応える。


無音にして無慈悲の刃の行軍──

無響斬行衆むきょうざんこうしゅう》その長。


影・龍刃えい・りゅうじん

趣味は──足音を殺して歩くこと。


……よしなに。」


おれ:

「何か恥ずかしいから、えーちゃんって呼ぶね。」


影龍刃:

「まぁ……えぇけども。


よしっ!

ヒヨッコのお主に、カマキリのイロハを叩き込んでやる!


お主はハンターではあるが、なんちゃらハンターのように

自分からどんどん戦いにいくスタイルではないのだ。


忍びたるもの、一撃必殺が基本。


まずは──静と動。

己の気配を消し、射程範囲に入った瞬間、一気に仕留める。


名付けて

【序ノ術・静破一閃じょうは いっせん】。


まずはあそこのアブラムシで試してみろ。

任は果たした。後は風に聞けッ」


……ドロォンッ。


おれ:

(か、かっこよくはないな……)


「アブラムシね……あの動きの遅さならいけそうやな。


よし、このままいけばあいつは俺の横を通るはず……


(静……おれは空気……己を客観視……)」


カサカサカサ……


『静破一閃ッ!』


スカッ。


「あー! 逃げていくぅーーー!」


──フュィンッ……


フェニたん:

「あんたねぇ。

いちいち技名を大声で言ってたら気付かれるわよ。


アブラムシはほぼ目が見えないから、

落ち着いて無音で狩るのよ。


技名は心の中だけにしなさい!」


──フォンッ……


おれ:

「あるあるやんこれ。


気を取り直して……」


カサカサカサ……


(静破一閃ッーーー!!)


シュバッ


よし! 成功!


チューチュー。


「おっ♪

薄いメープルシロップみたいで美味しいやん♪


よし、このままアブラムシ中心に狩りをするかー。」


──3日後。


シュバッ


チューチュー


「……ん!?


やばい……カラダがパンパンや。

押し入れにあった10年前のデニム履いたときの感覚やで……


フェニたんデータによると、

葉の裏側が比較的安全スポットみたいやし、

あそこの葉の裏でするか。


うんしょっ……うんしょっ……


脱皮慣れしたおれならやれる!」


──集中。


ピキピキッ


「背中から出しましてぇー

足も順にだしていきますぅー

最後に鎌を抜いてぇ〜


乾くまで待つ!」


──合計30分経過。


「よし、ちょっとだけ大きくなったで!」

9mm → 12mm


──ぼふぁっ。


影龍刃:

「逆懸脱殻の術(ぎゃっけん・だっかく の じゅつ)──

見事であったッ!」


おれ:

「え? 学研合格の塾?」


影龍刃:

「脱皮のことね。


……次は動き回る獲物を狩るぞ。

機先を制する者がカマキリ界を制する!


相手の動きを見て、先の先を読んで動け!


名付けて

【破ノ術・先読断せんどくだん】。


失敗したとしても決して深追いはするな。

眼の前の獲物だけに全ての神経をそそげ。


任は果たした。後は風に聞けッ」


……ドロォンッ。


おれ:

「ありがとう、えーちゃん。


そうか、カマキリは上級ハンターやし、

自分からどんどん狩りまくると思ったら違うんやな。

なるほどね。」


ピョンッ

 ピョンッ


「よし、あのトビムシで試してみるか。」


ピョンッ

──。

ピョンッ

──。


(飛ぶタイミングと……

そうか、影を見れば……)


ピョンッ!


(着地と同時に……)


『先・読・断ッ!!』


シュバッ


ガシッ


「着地の隙をつくから技名も出せるぜ!」


チューチュー……


おれ:

「うぇ! 土ッぽい味で全然美味しくないな……。


でも、こいつになら負ける気がしないし、

強くなる為には仕方ないか。


あそこのアリは……噛まれたら痛そうだから後回しにしよう。」


──。


それから2回目、3回目の脱皮を終え、

体もだいぶ大きくなった。


→ 25mm


ブーーーンッ

 ブーーーンッ


おれ:

「今なら、この気になってたコバエもいけるはず!」


(飛んでるのをキャッチするのは至難の業……。

パターンを読んで……先の先を……)


ブーーーンッ


ぴとっ


コバエ:

(ふぅー 休憩きゅッ…)


おれ:

(先・読・断!)


シュバッ


おれ:

「フフッ……

飛ぶものは必ずいつか着地する。

そこを狙えば容易いものよ。」


チューチュー……


「……ってまずっ!

何か生臭いというかクセが強い。

栄養もさほどなさそうやし、アブラムシでえーわ。


ふぅー……。」


──そこから順調に狩りをこなし、

6回目の脱皮を終えた。


おれ:

「パパパパッ、パワァァァァァーーーーッ!」


生まれたて → 現在

全長:8.0mm → 50.0mm

スピード:2.0 → 12.0

パワー:1.0 → 10.0

耐久:1.0 → 6.5

反射神経:4.0 → 15.0

武器:1.5 → 11.0


「うぉぉ……チカラがみなぎる!

誰であろうと……負ける気がしない!」


(カマキリは“脱皮7回目”が真の最終形。

今の俺はまだ“準最終”……いわば第二覚醒ってところか。)


「おっ、あそこに仲間が……


って、デカっ!

ほんで強ッー!


負ける気しか……しない。」


『フッフッ……♪』


妙にリズムに乗った影が、葉の向こうを跳ねていく。

姿はよく見えないけど、絶対ただ者じゃない。


シュバッ

 シュパパパッ

   シャッ シャッ

チューチュー♡



━━続く━━

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