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全滅まであと何日  作者: taki
第5章〜アイスノウ大陸編〜
81/90

81.凍てつく時計台

挿絵(By みてみん)


 スカイとロイ、オリバーの三人は、コートを羽織ってジャッキーに乗り、海の上を飛んでいた。アイスノウ大陸に近づくにつれ、気温はぐんぐん下がっていった。


「大陸についたらジャッキーを『ドワーフの休日』で小さくしてやれ。ふぶいていたら鳥は飛べない」

 最後尾に乗るオリバーが大声で言うと、すぐ前のロイが大きく頷く。

「それで、どうやって青い菜の花を見つけるの」

 先頭に乗るスカイが大声で言い、オリバーを振りかえる。

「『アイスノウ大陸冒険記』を読んだが、原生地に関する情報はない。だが、きっと、何か目印がある。エベスタンのラピスラズリにも、ウピウピの滝の石碑にも、ルビテナの日時計や祭壇にあったのと同じ花が彫られてた。たぶん、ウェルゲン帝国時代につくられたものなんだ。世界中に、その形跡が残ってると思う」

 オリバーも大声で返す。

「ベロニカもグリフィダ語をしゃべってたしな」

 ロイがぼそりと言うと、スカイは途端に胸が苦しくなった。シャベルータンのベロニカ親子のことは、今だに心のしこりになっている。


 スカイが明らかに凹んでいるので、ロイは後ろを振りむき、話題を変えることにした。

「それでさあ、オリバー。ゾエには何て言ってきたの」

 ロイがくすくす笑うのに、オリバーは無表情だ。

「別に」

「別にって何だよ。もっとあるだろ」

「別に」

「愛してるよとか、心はいつも君と一緒だとか」

「別に」

「ゾエの婿のくせに、プロポーズはしたんだろ」

 ロイはここで手を叩いて笑う。こんなにシャイで口下手な頭でっかちが、ドミニクに婿候補にされている。おかしいことこの上ない。が、オリバーは無表情をキープする。


「それはまだ」

「ま、だ?」ロイは目をむく。「……でも、ゾエはグリフィダに嫁ぐんじゃ大変だな」

「ゾエはグリフィダには呼ばない」

「ど、どうすんの」

「この旅が終わったら、俺がベカラグアに移住する」

「えー……」

 ロイは、開いた口が塞がらなかった。


 やがて、眼下に陸地が見えてきた。

「あれだ。アイスノウ大陸の、フィルエー共和国だ」

 オリバーが声を張りあげた。スカイとロイは興奮して見おろす。

「なんだ。一面真っ白かと思ったのに。意外と普通な町だ」

 ロイがくしゃみすると、オリバーが町を指をさす。

「まだ九月だからな。とりあえず、降りて宿を探そう」

 ジャッキーは高度を下げ、町はずれの空き地に着地した。


 寒帯に属するフィルエー共和国、キリトナの町は枯れ野と山々に囲まれ、中心部には時計台が立ち、木造の商家や民家が立ちならんでいた。住民達の大半は鉄鉱山の採掘労働者とその家族で、男は上着とズボン、女はワンピースを着ていて、いずれも濃紺の生地に赤い刺繍の入った服を着ている。男達の顔は鉄粉にまみれ、黒ずんでいた。スカイ達は投宿しようとしたが、どの宿にも宿泊を断られた。ロイが頑張って通訳するのに、顔を見ただけで放り出される始末だった。

「何でダメなんだろう」

 スカイは歯をがちがち言わせ、小型化させたジャッキーを抱きしめる。

「俺達はよそ者だ。顔を黒塗りすれば泊めてもらえるかもな」

 オリバーは捨て鉢になって両肩をさする。

「それにしたって酷いよ。僕達が何したっていうんだ」

 ロイはそう言った途端、派手にくしゃみする。

「わからん。あの宿はどうだろう」

 オリバーが指さしたのは、今にも崩れ落ちそうな木造のあばら屋だ。

「まあ…屋根があるだけいいじゃん」

 スカイがつぶやくと、ロイは力なく頷いた。


 その夜だった。突然の怒号に、三人は目を覚ました。

「何?」

「強盗?」

「行ってみよう」

 スカイが弓を持って表に出た。ロイとオリバーも追って出ると、その様子に唖然とした。住民達が輪になってスカイ達を取りかこんでいる。

「何の用だよ」

 スカイがグリフィダ語で怒鳴りつけると、住民達がフィルエー語で何かを叫び、若い男はロイの頭を叩き、ハゲた男はスカイを蹴りつけた。

「この野郎」

 スカイは頭に血がのぼり、ハゲ男を突き飛ばした。男が向かいの建物にぶつかったのを見て、すぐさま距離をとり、弓を構えた。

「ラコロシュテ・プレレクテ・ピカ。ランダギア」

 スカイが弓を引くと、三十本の矢がハゲ男の輪郭を描くように、背面の壁に突き刺さった。ハゲ男は身動きがとれず、蒼白な顔で口をパクパクさせる。

「俺達に構うな」

 スカイが怒鳴りつけると、住民達は散り散りになって逃げた。するとハゲ男が震えながら歯ぎしりして、何ごとかつぶやく。ロイがハゲ男の肩に触れた。

「なんだよ。お前ら外国人は盗人のくせに。時計台も直してくれないじゃねえか。余計なゴミ、置いていきやがって」

 ロイはその言葉を聞き取り、あたりを見回した。そばには背の高い、立派な時計台が立っている。だが、よくよく見ると、文字盤の針は完全に止まっていた。

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