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友達が不登校になった話

作者: 七草粥子

友人が不登校になったらしい。らしいというのは連絡をあまりとっていないからだ。中学までは毎日美術室で顔を合わせていたものの、それが無くなった今、私と彼女の繋がりは緑色のメッセージアプリだけである。家庭の教育方針でSNSをやっていない私は、友人の動向もわからない。ストーリーも見たことがないから、どこへいって、何を食べたか、誰と遊んだかもわからない。でもどこかで、心の中で繋がっているなんてことを信じていた。合唱の課題曲みたいな話だけれど、そう思っていたのだ。

春休みに、友人ともう1人のSとカラオケに行った。私はアイドルの曲やらアニソンやらを歌い、Sはバンドの曲を歌っていた。友人は見たことも聞いたこともない、ジャンルの組み分けが難しいおどろおどろしい曲を歌っていたけれど、友人らしい選曲だと思った。

友人は、我が道を往く女である。ひっそり、じっくり生きて、趣味の絵を描くことと、オタ活ができればそれでいいというような人物だ。悪く言えば、向上心がなく、自らアクションを起こさない人間である。であるから、いじめられるような人間でもなければ、言われたことはちゃんと熟すし、多少わがままを言っても受け入れてくれる優しい人物なのだ。何か起こっても、我関せずといった態度で平気な顔をして絵を書いていたから、てっきりメンタルが強いものと思っていた。

そう、友人のことを懐古しながら書いていたら、友人の好きなものを少ししか知らないことに気がついた。推しは知っている限り3人、でも好きな色も、好きな食べ物も、好きな芸能人も知らない。好きなゲームや、好きなボカロPがいるが何年も更新されていないこと、これは会話の中に出てきたので知っている。テレビを見ないので、今流行りの芸能人がわからない。藤原竜也だけは知っている。あれ?意外と知っているかもしれない。

二ヶ月くらい前から不登校なんだよねと、Sにつげられたのはほんの数日前のことだ。何かあったなら、相談してくれたらよかったのに、なんて思っても、意味のないことなんだと思う。ゴールデンウイークにでも遊ぼうと言われたのに、部活が忙しくて連絡、提案しなかったのは私である。それに今は、高校生の連絡ツールはDMが主なので、普段からこまめに連絡をとっていない、SNSもやっていないわたしは、相談候補にすらあがらなかったであろう。心の距離は勝手に近いつもりでいたけれど、存外離れているのかもしれなかった。

高校生になって、勉強も難しくなって、毎日を終えるのに精一杯で、いつのまにか3年生の夏休みになっていた。全員推薦やらで共通テストを受けないので、この夏はたくさん遊ぶぞと思っていたらこの様である。

友人のそばにはいつも人がいた。学校に行けば誰かしらが友人の机にくっついて、昨日あったことなんかを話していた。小学校から仲のいい子が背後霊の如くずうっとくっついていて。でも、その子は中3で来なくなって。その時は背後霊の方が私と仲が良かったので、なんだか寂しかった。成績表を見るのが嫌だったらしい。背後霊とはそれ以来会っていない。それからは私達が代わりにくっついていたが、高校は志望校が被っていなかったので、離れてしまった。ずっとくっついてくる人間の壁、鎧のない高校生活は、存外骨の折れるものだったのかもしれない。


自分本位な願いではあるが、もう一度、お互いの顔を見て話したいと思うのはわがままだろうか。Sには今充電期間だから少し待ってやれと言われた。

急かすようかもしれないが、夏休み中には会いたい。いや、会えることを願っている。


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