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稲守任三郎とダンジョン戦記  作者: 正方形の木箱
第一章 稲守任三郎とダンジョン
9/29

9話 稲守任三郎と2回目のダンジョン③

オークの死体を見つつ、討伐証明部位をどうするか考えていると、何かが動く音が聞こえてきた。


ゴゴゴゴゴ


(なんだ?)


銃を構え警戒するが、音以外には何も起きない。


エリアを確認すると、来た道と先へ進む道の他に、別の道に進む入口があるのを発見した稲守は、その先へ進みたい欲に駆られるが、オークの検証をしていないことを思い出し踏みとどまった。


(せめてオークの再出現条件や時間は知りたい)


目線をオークへと戻すとゴブリンと同様に地面へと吸い込まれ、瞬く間に消えてしまった。


(しまったな・・・って動画すらも取ってないじゃないか)


再出現時間だけでも、と思い携帯端末を準備していると、再び何処からか何かが動く音がして周囲を見渡す。


(またか)


先ほど出現した道とは別の道、方角でいうと西の次は東側に先へ進む道が作られていた。


(とりあえずはオークだ。うん、俺はここから動かんぞ)


端末を操作し、録画を始める。


(食料的にも後2日はいけるか)


固形食糧もある程度はあるし、いざとなったらサハギンを倒してイワシに似た魚を食べる事を覚悟し、座り込んで銃を支えに何かが起こるを待つ。

そして、2時間、4時間、12時間が経過する。


(なんだか眠くなってきたな・・・)


はたから見れば一方的ではあったが、オークの殺気、一発でも外していたらこちらがやられるかもしれない状況で、ずっと集中していたからか急に疲労感と眠気に襲われる。


(やばい、とりあえず通路だ。あそこなら安全なのはわかっている)


携帯端末を録画状態にしたまま、通路へとよたよたと歩きつつ進む。

かろうじて倒れ込むようにして通路へとたどり着いた稲守は、そのまま眠りについてしまった。


~???side~


「ほう、オークを倒すか」


『この人間はいいね。肉体的にはあれだけど、精神力がハンパじゃないよ』


「オークの殺気で脚がすくみ、動けなくなると思っていたんだがな・・・」


夕暮れ色に染まる何処か、机と椅子しかない空間で白い影と黒い影がしゃべっている。


『ねぇ、この人なら使えるんじゃない?』


「しかし、あの水を飲まなければ使えないぞ?」


『簡単だよ。彼の持っている物を奪えばいい』


「水を奪えば、必然的に飲むか・・・」


『そうだよ』


「では、そうしようか」


黒い影が揺らぎ、姿を消す。


『人間の力をもっともっと引き出すには、何がいいかなぁ』


白い影が揺らぐ。


『ねぇ、何がいいかな』


「ブモォ・・・」


先ほど稲守が倒したオークが暗闇から姿を現す。

弾痕等は無いが、腕や足には包帯のようなものが巻かれていた。


『あの武器は強かった?』


「ブモッ!ブモモッ!」


『結構痛いかー。でも次のゴーレムにはどう?』


「ブモモモ、ブモー?」


『そっかー、きついかー。ならやっぱあれだね。すぐにあの水に細工しなくちゃ!』


白い影は揺らぎ、姿を消す。

一人残されたオークは、人間って怖いなと思いつつ、ため息を吐く。




倒れ込んで眠ってしまってから数時間後、意識を取り戻した稲守は目を覚ましけだるげに体を起こす。

長時間眠っていたせいか喉が渇き水分を補給しようとバッグを漁るが、まだ残っていたはずの水分補給ゼリーがないことに首を傾げる。


(確かに確認したんだがな・・・)


記憶と違うことに疑問を持ちつつ、長時間眠ってしまったことや、録画していた端末、倒したオークのことを思い出す。


(そうだ、オーク)


銃を構えつつオークエリアに戻ると、再出現はしておらずあるのは新たにできた道が二つと、マップにも記載されている次の階層への道だけだった。


(再出現に時間がかかるのだろうか?)


先へ進もうにも今回は残弾も少ない上、水もなぜか消えてしまい、継続不可と判断した稲守は、録画していた端末を回収し、荷物をまとめて通路へと戻る。

入口へ向けて歩くが、のどの渇きが限界に来てしまい、サハギンエリアの水を飲む事を決心する。


(倒れるよりかは絶対マシだ。ろ過装置を使いつつ煮沸でもすれば問題ないだろう)


今回は念のために持ってきていた小型ガスコンロもあるし、準備は万端だ。


岩山エリアを抜け、サハギンエリアに着いた稲守は、空薬莢を池に投げ込みサハギンを釣り出し、銃で撃ち倒す


(サハギンとゴブリンは余裕だな・・・)


腹痛でも起こした時の事を考え、サハギンの剥ぎ取りは行わず荷物を下ろしろ過装置のパッケージを取り出して組立始める。

今回持ってきたのは、チューブを接続すれば直接水源から水を飲むことができるタイプで、日本ではあまり使われていないタイプだが外国では国の認証も得ているらしく信頼性は高い。

念のため山の水たまりの泥水で試し他時は、水質検査も行い性能に問題が無い事も確認済みだ。

流れのある滝へと向かい、ろ過装置につけた漏斗を滝に向け、水をろ過装置へと通し、チタン合金のカップへと水を貯める。


(見るだけじゃわからないな・・・)


溜まった水を目視で見るが浮遊物等は無くとても綺麗だ。

本来ならここから煮沸して蒸留までした方が安全に飲めるのだが、見ているうちに我慢しきれず飲んでしまう。


ゴクゴクゴク。


「プハァ!」


味は山の湧き水と似ており、水温は水道水と同程度で飲みやすくするすると喉を通る。


(生き返るとはこのことだな)


カップ一杯の水を飲み星、荷物をまとめ、出口へと急ぐ。


(腹を壊すにしても、せめてダンジョンを出てからにしたい)


毎度のごとく閉まっている扉の前で、携帯端末を開き加賀へと連絡する。


「稲守です。今戻りました。扉を開けてください」


『承知しました。少々お待ちください』


加賀も慣れたのか、通常の会話の時と同じような声色で返事をする。

少しすると扉が開き、稲守を出迎えたのは加賀といつもの軍服の男女、そして一度帰還した時に魚を回収した白衣を着た男性2名だ。


「お疲れ様です。今後の事を考え、このように彼らにダンジョンで収集したものをお預けて頂く形となりました。カートへ収集物がありましたらお載せ下さい。」


「わかりました」


今回は収集物はゴブリンの耳数個とサハギンエリアの水だけなので、カートが三つばかし無駄になってしまった。

その後は、最初と同じようにホテルへと連れてかれる間の車内で、加賀が話しかけてくる。

以前問合せ内容の事だろうか。


「稲守様、先日提案しました銃火器の件ですが、お貸しできる銃の一覧がありますので、後ほど端末へ送らせていただきますので、欲しい物がありましたら遠慮なく申請してください」


「そうですか! よかったー・・・」


正直なところ、スラッグ弾を使うにしろ、ハーフライフルではマガジン交換式とはいえ弾数が少なく、オーク以上の相手だと外したら致命的だと考えていた稲守にとって、新たな銃は渡りに船だ。


「何かあったのですか?」


「実は、えっと報告書に詳細は書きますが、ゲームでいうオーク? みたいな、二足歩行の豚がいまして」


「オーク・・・?豚?」


「武器の発射音を聞いてから防御するほどの反応速度があって、正直焦りましたよ、ハハハ・・・ハ?」


走行音がやけに大きく聞こえるほどに社内では沈黙が流れる。

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