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稲守任三郎とダンジョン戦記  作者: 正方形の木箱
第一章 稲守任三郎とダンジョン
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8話 稲守任三郎と2回目のダンジョン②

通路は何も出ないとわかってから、だらだらと通路で休憩していると、ふと捕獲したイワシそっくりな魚の存在を思い出した稲守は、鞄にぶら下げていたバケツを下ろし、観察することにした。


バケツの中では4匹のイワシが軽快に動けないのか、少し窮屈そうだ。


「生物はさすがに渡さないとダメか」


このまま死なせてはいけないと思い、荷物を纏めて、入口へと戻る。


サハギンの死体はまだ残っているため、ヒレ付きの手、歯数本と舌を切り取り、入口を目指す。

ゴブリンエリアは何回も検証したからか精神的にも余裕があり、冷静に銃で殺し、耳を切り取ってから振ってくる二匹目を倒し、通路へと戻る。


相変わらず閉まっている扉の前で溜息を吐きつつ、端末を操作して加賀を呼び出す。


『加賀です。稲守様、どうかされましたか?』


前回より早い呼び出しだからか、今回は冷静な声だ。


「すみません、詳細は報告書に書きますが、魚を捕獲したのですが生きていますし、手持ちも結構一杯なのでモンスターの部位と併せて一度お渡ししようかと」


『魚!? ダンジョンに!? わ、わかりました! 回収班が待機していますので、少々お待ちください!』


1分ほどで扉が開き始めると、銃を構えた男女に護衛された白衣を着た男性が現れた。


「ダンジョン庁研究所所長の刈谷だ。その魚というのは・・・」


「こちらです。一応、魚を捕獲した池の水も入っています」


イワシ入りのバケツの蓋を開け、二人に見せる。


「このカートに乗せてくれ。捕獲方法とかは?餌か?疑似餌か?」


「市販の練エサですね。宿泊施設の売店にあった格安の奴です」


「それも一緒に頼む」


イワシ入りのバケツとバックの中にある練エサをカートに乗せる。

バッグを見ると鉱石やモンスターの一部等もあるので、一緒に渡す事にした。


「わかりました。それと、鉱石らしきものの一部と、近くの岩肌の欠片、モンスターの一部も良いですか?」


「鉱石・・・?わかった。それはこっちのカートに、モンスターの一部はこのカートの下に入れてくれ」


全て乗せ終わると、稲守は再びダンジョンへと戻った。


稲守から受け取った荷物を専用のトラックを乗せて、助手が運転席へ座り、刈谷は助手席へと乗り込み、出発する。


「まだ入って数時間だろうに、あの成果とは・・・」


刈谷がぼやくと、運転している助手が怯えた様子で話しだす。


「ど、どういう精神力をしているのでしょうか・・・。だって初めてどころか、人類未踏と言ってもいい所ですよ? 僕だったら、いつどこから何が出てくるか不安で一歩も歩けないですよ・・・」


自衛隊の報告によると、他のダンジョンでは、明るい場所が多く、コロッセオ型の闘技場タイプと呼ばれる場所ではそもそも空が地上である為、洞窟と違い環境によるストレスや恐怖は余りないようだ。

一方洞窟型の情報は悲惨だ。


「そうだな・・・。報告によれば飯岡ダンジョンは洞窟型。通路は道幅と高さ共に3mほどで、天井も同じくらいだそうだ。しかも暗闇の中をライトだけで進む。安全かどうかも不明だそうだ・・・。さて雑談してる場合じゃないな。俺たちの仕事はあれの研究だ。水ももっと欲しかったところだし、気合を入れるぞ」


「は、はい!」


刈谷たちは特区研究所に戻り、職員達に土と水を専門の調査機関に分析するように伝え、刈谷達は稲守が持ち帰った魚やモンスターの素材を調べることにした。


イワシに似たその魚は、合計4匹。外見的にはどれも同じだ。

餌は何か、何を食べていたのか、有毒なのか、雌雄はあるのかを確認するが、外見的に雌雄を判別することはできなさそうだ。

有毒化同化は身体に棘の様な部分も無く、後は解剖しないとわからない。

レントゲンも撮ってみると、イワシとほぼ同じだが、唯一胃袋に相当する内臓が存在しないことが分かった。


「何かを食べている痕跡がない、歯がない、胃袋もない。そしてモンスターと違い溶けて消えることはない、と」


「これは大きな発見ですよ。身や骨はほぼ普通のイワシと同じなので、もし食べられればかなりの収穫ですよ」


「まだそこは早いが、俺も同じ気持ちだよ。しかし、この魚の体内から出た液体はなんだ?」


イワシから採取した体液を検査したのだが、血液とは違うものだということがわかった。いや、それしかわからないのだ。


「そうですねぇ・・・。個人的にですよ? もしこれが、魔力なのだとしたらロマンがありますね」


「魔力ねぇ・・・。そうだ」


刈谷は、一つ、とある実験を思いついた。


「なんです?」


「アニサキスとかは寄生するか見てみるか」


「ほかに検証に使える生物が居ないか見てきます」


アニサキスは水に入れた瞬間に絶命したり、吸血をする小型動物を与えるなどしてみたが、摂取すらせず、血液事態も対応していた機器すべて反応でを示さないため、困り果ててしまう。


一方荷物が軽くなった稲守は、岩山エリアの先、マップ上では2階層目に続く階段の手前になるエリアに行くことにした。

ゴブリンとサハギンを撃ち倒し、岩山エリアを素通りして次のエリアへと進む。


マップ上では、2階層目に続く手前の分岐路の先がこの岩山エリアの次に当たるようだ。

自衛隊が探索した方のエリアメモには「ゴブリン3」と書かれているため、階層手前のエリアはこれまでとは違い複数の敵が出ると予想した稲守は、警戒を強め、いつでも撃てるようにアキュートリガーを押し込みながら、ゆっくりとエリアに侵入する。


右足の先端がエリアと通路の境界線に入った瞬間、エリアの奥から熊や狼などの肉を食らう動物が放つ殺気に近いものを感じると同時に、大きな声がエリアに鳴り響く。


「ブモオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


見えるのは2足歩行の豚だ。身長は2mを超えるだろう。


(オークって所か・・・)


ゲームでいうところのオーク。

肌色を少し暗くしたような色の皮膚に、脂肪と筋肉による天然の鎧。

そして耳がいいのか、エリアの仕様なのか、入った瞬間こちらに気付いたオークはこちらをじっと見つめる。

しかしオークはこちらを見ながら様子を見ているのか近づいてはこない。


(警戒しているのか?)


何もせずこちらの様子をうかがうだけならば銃で一方的に倒せると考え、オークの頭部を狙い引き金を引く。


ドンッ


「ブモッ!?」


ガチャチャッ


次弾を装填し、オークの様子を見ると、音で反応したのか、オークは両腕を曲げ盾のようにして急所である胸部と頭部を守っていた。


「ブモォ・・・」


オークは左腕を上げ続ける事ができず、だらんとぶら下げる。

頭部を守っていた左腕に命中したのだろう。

スラッグ弾だと言うのに破壊しきれず、頭部は無事なようだ。


(近づく前にまずは脚を奪う)


頭部ではなく脚、膝関節部分を狙い2連射。


ドンッ


ガチャチャッ


ドンッ


ガチャチャッ


「ブヒャアアア!?」


オークはまずいと思い、姿勢を低くし1発目は回避するが、稲守は姿勢を変えるオークの動きを追い、2発目は守っていた胸部と頭部ではなく、左脚へ向けて狙い撃っていた。


避けたと思ったオークは膝を破壊された痛みからか自重を支えられなくなり、膝をついてしまう。

着いた膝は破壊された膝な為に、潰れていない左腕で前屈みになり隙を晒してしまう。


「ブ、ブモ・・・」


まだ攻撃する意思はあるのか、右足で何とか立ち上がろうとするオーク。


(俺だって死にたくないんだよ)


オークは動く片腕で頭部を守りながら立ち上がるが、容赦なく無防備な右足を撃ち抜く。


ドンッ


ガチャチャッ


弾丸が命中し、両足が使えなくなるオークは、なんとか頭部だけはと生きている右腕で頭部は守る。


(痛めつけてるようで嫌な気持ちになるな)


片腕、両足が使えなくなったオークは諦めたのか、頭部を守っていた腕を動かし、頭を差し出す。


(あっぱれって言うのかね)


ドンッ


頭部を撃ち抜き、オークが絶命したのを確認するため、弾倉を交換しつつ近づく。


(ダメ押しの一発でも見舞いたいが、帰りを考えると無駄に撃ちたくはない)


数分経っても反応がないことを確認した稲守は息を吐き切り、緊張を解く。


(ふー・・・、これなら交換用の弾倉と弾がもっと必要かね)


2階層目以降は今後どうなるのか不安に思いつつ、オークが絶命した事を確認した。

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