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稲守任三郎とダンジョン戦記  作者: 正方形の木箱
第二章 笹山楓と高須芽愛里
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62話 笹山楓と高須芽愛里⑫

~笹山楓side~


開始の合図と共に、笹山はゴブリンに狙いを定め、装着されたドットサイトを覗く。

ゴブリンは笹山が何をしているのかわからず、様子見をしつつ、いつでも駆け出せるように腰を低くして、こん棒を肩に担ぐ。


両者ともに動かず、じっとこちらを見据える笹山に痺れを切らしたゴブリンがじりじりと近づく。


「ギャ?」


近づいても動かない笹山を不思議に思ったゴブリンは振り上げたこん棒を降ろし、こちらを見つめる。

その瞬間、笹山はトリガーを引き、ゴブリンのこん棒を持っている方、右肩に弾丸を打ち込む。


「ンギャ!?」


悲鳴を上げ、衝撃と激痛にこん棒を落としてしまう。


ゴブリンはようやく笹山を敵と判断したのか、弾丸を打ち込まれて動かなくなった右腕ではなく、左手でこん棒を拾おうとして笹谷から目線を外す。


目線が外れた事を見逃さなかった笹山は射撃モードをバーストモードにして、頭部に3点バースト射撃。


ダダダン、ダダダン


計6発の弾丸がゴブリンの頭部に叩き込まれる。


「ギ、ギギャ…」


ゴブリンは頭部に叩き込まれた弾丸によりまるで崩れる様に倒れ、絶命した。


『勝者!笹山楓ーーーーーーー!いいね!君いいよ!かわいいし!さて、2回戦目をすぐにしたいならそのままそこにいてね。もし一度帰るなら後ろを向いて出口に向かいなね』


笹山は声の通りに、その場で次の相手を待つ。


『いいねいいね、さて次の相手はこいつだ!』


次の相手は同じゴブリンに見えるが、今度はこん棒ではなく、短剣にぼこぼこのヘルメット、胴体には錆びた鉄製の防具を身に着けていた。


『ハイゴブリン!冒険者から奪った武器と防具を身にまとったゴブリンの上位個体!スキルも一応使える新人冒険者から初見殺しと言われる厄介な相手だ!果たして楓ちゃんは勝てるのか!?第二回戦、人魔ファイト!レディーーー!ゴーーーーーー!』


カーンと音がなると同時にゴブリンは短剣を抜き、何かを呟く。


『ワレラガゴブリンのチチヨ、ハハヨ、オデニ・・』


言い終わる前に笹山はトリガーを引き、無防備は顔面にバースト射撃をする。


ダダダン。


ハイゴブリンは銃声に反応し、危険を感じたのか頭を左に傾ける。

しかし頭部の大きいゴブリンの左耳に弾丸が命中、光の粒子がキラキラと漏れだす。


『トビドウグ!』


ハイゴブリンは走り出す。

高速で飛来する何かを警戒してなのか、狙いを定められないようにする為なのかジグザグに笹山へと近づく。


しかしその程度の動きを当てられない笹山ではない。

冷静に動きを見つつ、笹山はトリガーを引く。


ダダダン、ダダダン。


頭や胸部といった急所を防ごうとした腕を上げるも、分かっていたかのように脚へと照準を変更、膝を、腿を撃ち抜く。


脚を撃ち抜かれたせいか動きが鈍くなった所に止めのフルオート射撃をする笹山。

残りの弾を全てハイゴブリンの頭部へ叩き込む。


ダダダダダダダダ。


『グッ、グワ、グフッ』


避けられず弾丸の雨を浴びたハイゴブリンは、笹山に近づく事すらできずに絶命した。


『勝者!笹山楓ーーーーーーーー!フォーーーーーーー!すごいね!本当にいいよ!ちなみに上手い人が弓矢を使ってもそこそこかかるから、同じぐらいかな?さて、本当は君を帰したいんだけど、戦いたいってうるさい奴がいるから強制的に戦ってもらうね』


「マジ?そんあことあるんだ…」


ガシャンと大きな音が立つと共に、笹山の背後の出口が鉄格子によって塞がれてしまう。


『さて、3回戦目の相手は』


ハイゴブリンの死体が消えるのと同時に出てきたのはなんと豚の頭部に大きな体躯が特徴の、動画で何度も何度もみたあのオークだった。


入ってきたオークは笹山を睨みつける。


「ブフゥ…」


「ラッキーじゃんね」


何度も、何度も何度も何度も戦う事を夢にまで見た相手だ。


どうやって倒すか、映像にあった加賀の様にグレネードは無い。

あるのは訓練生用の銃とマガジン三つだけ。


「何だかよくわからないけどさ、オークと戦いたいのに戦えなくてキレそうだったんだ。寧ろ感謝かも」


少女の顔ではなく、そこには戦士としての断固とした決意のある顔をした笹山がいた。


『その表情くるね…。それじゃ始めていいらしいから始めるよ!人魔ファイトエキシビションマッチ!レディー―――!ゴーーーーー!』


開始の瞬間、笹山は腕部限定身体強化を行使しトリガーを引く。

オークは連続で鳴る発射音に警戒して両手をクロスさせ、衝撃に備えた。


フルオート全弾発射に必要な時間は僅かに4秒弱。

それを腕部限定身体強化によって完全に制御された状態での精密射撃を笹山は2秒程続けた。


『ブヒャアアア!?』


何が起こったのかわからないオーク。

僅か数秒で両腕が破壊された上に、足や胴体にも被弾している。

魔法でも弓矢でもこんな事は起きない上に、数秒で腕が使い物にならなくなったオークは両手を下げてしまう。


(今!)


弾倉の残り、20発程を胴体ではなく脚に向けて射撃する。


オークは頭を狙われると思い、胴体を捻り回避しようとしたが、衝撃が走ったのは右ひざだ。痛みに耐えかね無事な方の膝を地面について、笹山を睨むが、そこにはすでに弾倉を交換し終え、射撃準備が終わった笹山がトリガーを引いていた姿があった。


ダダダダダダダダ。


頭部、胸部に銃弾の雨を浴びたオークは恐怖の中意識を手放し、前のめりに倒れ込み光の粒子となって霧散した。


『勝者!楓ーーーーーーーーーーーー!君すごいね!そしてかわいい!強い!今度お茶しよ?お茶するには最後まで来ないといけないけどね?じゃ、疲れてるだろうし今回は戻るといいよ』


「わかった。次の相手はうちの友達なの。けど手加減なんてしないでよね。失礼だよそれ」


そう言い残し、鉄格子の無くなった出口に入る笹山。

通路を歩いている途中に魔法が自動的に解除されると同時に、訓練で散々味わった疲労感と倦怠感に襲われるが、なんとか歩き、観客席へと移動する。


観客席に上がると、心配して待っていた高須が抱き着いてきた。


「楓!大丈夫!?」


「問題無いし、それと、無事、2回戦突破、それとエキシビション?突破完了しました!」


最後の力を振り絞り、敬礼する笹山楓。


「想定外の事はあったが、問題無しに合格だ。直ぐに休むと良い。次は高須芽亜里訓練生だが、試験の内容を少し変更する。1回戦目でオークが出た場合、倒せばそれで合格とする。以上!」


続いて高須が順番となった。


~高須芽愛里side~


先ほどの笹山と同様に選手用ゲートから戦闘エリアへと入っていく。

同じ様な事があっても良いように頬を叩き気合を入れる。


『さて!次の挑戦者は!?楓ちゃんのお友達なんだっけ?八重歯がチャーミングだね!で、お名前は?』


「えっと、高須、芽愛里です」


『メアリ…?メアリ―…スー?』


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