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稲守任三郎とダンジョン戦記  作者: 正方形の木箱
第二章 笹山楓と高須芽愛里
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60話 笹山楓と高須芽愛里⑩

曾山は渡された模擬銃を受け取る。

重さはアタッチメント、弾倉を付けた時の重さを想定しており、4.3kg程になっている。

両手で抱える程度なら問題無い。


「意外と持てますね」


「えぇ、ただこれをあの動く的に向けて操作します。弾倉の交換には一時的に片手で持たなければならないので、思いのほか大変ですよ」


曾山は2人を真似て模擬銃を持ってみるが、直ぐに銃を降ろしてしまう。


「確かに、少しだけならできそうですが、これをずっととなると大変そうです」


「重さに加え、銃の反動を制御しなければなりませんから、皆さんの想像以上に射撃訓練は筋力と体力、集中力が必要になります」


訓練が終わったのか、銃声が止み、2人は銃を管理場所へ預け、訓練場を出る。

曾山一行も一緒に射撃訓練場を出て、別の場所へと向かった。


映像も暗転、次は食堂が映し出される。


「ここは皆さんが食事をする食堂になります。あちらの券売機で好きな物を注文し、好きな席で食事をします」


曾山による食レポや、食事をしている現役隊員へのインタビューが流れ、その後は他の隊員達の訓練等を映し番組は終了した。


放送を見た他県の訓練校は2人の射撃訓練の凄さに驚きを隠せなかった。

現役の自衛隊隊員と同等の練度で射撃する姿は、贔屓しているという意見を封殺するには充分だった。


その影響もあってか各校の訓練生は負けじと訓練に熱が入る。

先の正直バラエティによって、訓練生を退学させまいと学校側は今までよりも慎重に育てていく。


そして2061年12月、卒業まで後3ヶ月になった年末、卒業試験の内容が公開された。


内容は射撃訓練と実戦模擬訓練、そして闘技場タイプのダンジョン実戦だ。


一部の学校ではすでに条件を達成しており、試験の免除はどうかという意見も上がったが、足並みを揃えるという無駄な意見が多数を占めた為、とうの昔に達成している笹山と高須を筆頭に、計三校が難色を示すかと思いきや、特に意見も無く、了承した。


何故かと言えば、例え試験をしても合格する実力は身に付けている為、波風立てて難癖つけられるよりマシと考えたのだ。


試験までをこれまで通り自衛隊の訓練に参加する日々を過ごした訓練生達は、年末年始も訓練に費やし、あっという間に試験の日を迎えた。


卒業試験は、調査員訓練校の統括管理、そして調査員訓練校委員会に所属している元自衛隊の隊員3名が、各持ち点10点で評価、減点方式で13点を下回れば留年、又は自主退学となる。


場所は各地方で会場を設けての複数校同時の開催のため、笹山と高須は、加賀と一緒に会場である埼玉県入間郡越生町にある、越生ダンジョン近くの自衛隊訓練施設へと移動する。


越生ダンジョンは世界的にも珍しく、空に浮いた島にある闘技場型のダンジョンだ。

2056年に起きたダンジョン発生時に転変地位と同時にどこからか現れた島で、一定時間毎に入間郡を周回するように移動し、必ず越生町上空で2日程停滞する。

移動には航空機でしか行けず、現在は自衛隊の航空自衛隊の管理下にあるのだ。


「わー、本当に浮いてる」


「飛行機も乗ったことないのにヘリとか怖くない?」


「興奮するのはわかるけど、これから今日明日のスケジュールを伝えるから集中するように」


予定としては今日は前乗りという形と、事前に輸送した武具の受け取りと点検、会場の下見が目的だ。

それが終わったら宿泊所に移動して、明日に備える。


「明日は宿泊所の前にあるタクシー乗り場に8時に集合、移動して9時に準備、10時から試験開始の予定だから、もし何かあったら端末にある予定表を確認してね。何か質問はある?…無さそうね。じゃ移動するわよ」


「「了解!!」」


訓練場は廃業したゴルフ場を再利用する形で建てられ、広さは18ホール分の100万㎡を超える程広大だ。

訓練場を管理している航空自衛隊の隊員、井戸空曹に案内され、武器が保管されている保管所に移動した2人は、端末を提示して、輸送した愛銃を受け取り、輸送時に何か異常が起きていないかを確認する。

この1年強で使っている銃の整備を自分達で何回もやってきた為か分解もスムーズだ。

部品一つ一つ丁寧に確認をしていると、笹山が何か見つけたのか手を上げた。


「あれ?あの教官!」


「どうしたの?」


「トリガーがなんかおかしい。預ける前はなにもなかったのに」


輸送のタイミングは加賀達がくる15分程前。

本来ならば同時に到着している筈が、向かっている間に信号によって分断されてしまったのだ。

荷降ろしをするにも時間がかかるため、分解して工作時間はとても少ない。

もしかすると犯人がまだ近くにいる可能性を考えた加賀は、警棒を伸ばし大きな声を出す。


「全員この場で静止!両手を上げろ!」


現場にいるのは整備課の2名と加賀、笹山、高須、そして案内してきた航空自衛隊1名の計6名の筈だ。

辺りを見渡すと、整備用資材が詰まれている箱の隙間に、何かが動くのを発見した。


「そこの者止まれ!」


「…っ、!」


出てきたのは隊服を着た男性で、背中を向けながら静止させ、近づいて状況を確認する為に声をかける。


「所属と階級、名前は」


「り、陸上自衛隊、土浦駐屯地所属、茨城調査員訓練校、教官補助員、日野義明准尉であります!」


「茨城調査員訓練校の到着はまだの筈、何故ここにいる」


「…っ、そ、それは…」


「井戸空曹、侵入者有り、通報を頼みます」


その瞬間、日野准尉は逃げられないと思ったのか、加賀をどうにかしようと襲いかかる。


「このぉ!」


しかし、伸ばした手を加賀につかまれ、そのまま引っ張られ体制を崩し倒れ込んでしまい、押さえつけられる。


「動くな!」


「くっ…そぉ…」


井戸空曹の通報により、見回りしていた隊員達が駆けつけて射撃場に入って来る。


「陸上自衛隊、千葉調査員訓練校の加賀一等陸尉です。侵入者を拘束しました。武器の破壊工作の疑い有り、身体検査及び拘束、事情聴取をお願いします」


日野准尉は応援に来た隊員達に拘束され、連れてかれた。


その後彼のポケットには工具一式の様なものが入っており動かぬ証拠となった。

事情聴取の結果、茨城調査員訓練校の副校長からの命令で侵入、破壊工作をしたと薄情した。さらには笹山の銃だけではなく、他の前乗りしている訓練校の訓練生が使っている銃も一部壊されたり、部品が無くなっていた事から、三日以上前から潜伏していた事が判明する。


「命令を拒否しようとしましたが、命令不服従で降格にすると言われて、仕方なかったんです」


日野准尉、侵入ほう助した2等空曹、命令を下した茨城調査員訓練校副校長の1等陸佐は揃って懲戒処分となった。


動機は簡単で、成績の良い千葉調査員訓練校を妬んでの行動だそうだ。


その後は犯人も移送され、笹山の銃もスペアパーツを使って復旧、無事動作確認が終了した。


尚妨害された本人はスペアパーツも一式持ち込んでいるため問題無いと思っていたが、後程現場検証やらで時間をとられた事について頭にきていた。


「なんでうちが検証に手伝わないといけないのか本当にわかんない!」


宿泊所の食堂で食事をとっていたら、思い出したのかぷりぷりと怒りだす笹山。


「あれかな整備までしてると思ってなかったのかな」


「自分の銃手入れしないとかヤバくね?」


「それが本当に行っていない場所があるみたいなの」


トレーを持った加賀が丁度話しをしている所に来たのか、会話に混ざる。


「ちょっと調べたんだけどね。今日参加する訓練生で自分で整備できるのがうちだけみたいなの」


「え?でも訓練プログラムにありましたよね?」


そうなのだ。

日野准尉曰く、自分の所の様に他の訓練校も生徒自身が整備していないと思っての犯行だったそうだ。


「そうなのよ。整備ぐらいできないとどうしようもないのに」


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